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相続した不動産の売却で税金はいくらかかる?計算方法や税負担が軽くなる特例を紹介

2023.05.24 税金対策 相続した不動産の売却で税金はいくらかかる?計算方法や税負担が軽くなる特例を紹介

この記事を監修したのは、

天満 亮

所属 税理士法人ブライト相続 資格 税理士、行政書士

会計事務所勤務(約8年)、相続専門の税理士法人勤務(約7年)、相続専門の税理士法人設立(2019年~)

不動産の売却には税金がかかるので、生活資金等として使えるのは税金を引いた後の金額です。

そのため相続した不動産を売却するときには、税金を考慮して活用できる金額がいくらなのか、あらかじめ確認しておく必要があります。

この記事では、相続した不動産を売却するときにかかる税金の種類や計算方法を解説します。

空き家や相続後3年以内の不動産を売却するときに使える特例制度も紹介するので、ご自身のケースで特例を使って税金を軽減できないか、確認してみてください。

相続不動産の売却でかかる税金の種類

相続した不動産の売却でかかる税金は、所得税・住民税・印紙税・登録免許税の4つです。それぞれどのような税金なのか、まずは不動産売却でかかる税金の概要を確認しておきましょう。

1.所得税

所得税とは、個人の所得に対してかかる税金です。

給料や売上など、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得をもとに税額を計算します。

所得はその性質に応じて10種類に区分され、それぞれの所得について収入や経費の範囲、計算方法が決まっています。不動産の売却による所得は、10種類ある所得区分のうち譲渡所得です。

譲渡所得とは、不動産や株式、書画、骨董など資産の譲渡による所得のことで、相続した土地や建物を売却した際の所得も譲渡所得として、所得税の課税対象になります。

2.住民税

住民税とは、地域の行政サービスを提供・維持するために、その地域に住んでいる住民が納める税金です。

住民税には所得割と均等割があり、所得割は1年間の所得額をもとに税額を計算し、均等割は所得額に関係なく一律の金額で課税されます。

住民税の所得割は、所得税の計算と同じく所得をその性質に応じて10種類に区分して税額を計算します。不動産の売却による所得は10種類ある所得区分のうち譲渡所得に該当し、相続した土地や建物を売る場合も譲渡所得になるため住民税の課税対象です。

3.印紙税

印紙税とは、契約書や領収書などを作成したときに課される税金です。印紙税法で規定された文書を作成すると、印紙税がかかります。

印紙税の課税対象となる文書には、消費貸借契約書や請負契約書などが該当し、不動産を譲渡する際に作成する契約書も印紙税の対象です。契約書に記載された売却価格に応じて印紙税の税額が決まり、税額分の収入印紙を契約書に貼り付けて納付します。

4.登録免許税

登録免許税とは、不動産や航空機、船舶などについて登記や登録などをする際に課税される税金です。

土地や建物を相続して、名義を被相続人から相続人に変更する相続登記をする際も登録免許税がかかり、相続後に売却して名義を売主から買主に変更する際にも登記が必要となり、登録免許税がかかります。

所得税・住民税の計算方法

所得税や住民税を計算する場合、給料や売上などの所得は他の所得と合算して計算しますが、相続した不動産の売却にかかる所得税・住民税は他の所得と分けて計算します。土地や建物の譲渡による所得だけで税金を計算する、分離課税方式です。

税額は以下の式で計算します。

  • 譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
  • 所得税・住民税=譲渡所得×税率

税率は、不動産の所有期間が5年を超えるかどうかで変わります。不動産の譲渡所得の税率は、所得税・住民税でそれぞれ以下のとおりです。

 

5年超(長期譲渡所得)

5年以下(短期譲渡所得)

所得税

15%

30%

住民税

5%

9%

※所得税には、2037年まで復興特別所得税もかかります。

不動産の所有期間は、譲渡した年の1月1日時点での所有期間で判断します。1月1日時点で5年超であれば長期譲渡所得、5年以内であれば短期譲渡所得です。

また、相続で不動産を取得するケースでは、被相続人が不動産を取得した時期が相続人に引き継がれます。そのため、被相続人がその不動産を取得したときから相続人が譲渡した年の1月1日までの所有期間で、長期譲渡所得か短期譲渡所得か判定します。

印紙税の計算方法

印紙税の税額は、契約書に記載された売却価格に応じて決まります。

具体的な金額は、以下のとおりです。2024年3月31日までに作成される不動産の譲渡契約書に関しては、契約金額が10万円を超えると印紙税の軽減措置が適用されるため税負担が軽くなります。

契約金額(売却価格)

印紙税額

1万円未満

非課税

50万円以下

200円

100万円以下

500円

500万円以下

1,000円

1,000万円以下

5,000円

5,000万円以下

1万円

1億円以下

3万円

5億円以下

6万円

10億円以下

16万円

50億円以下

32万円

50億円超

48万円

登録免許税の計算方法

不動産を相続して売却する場合、被相続人から相続人に名義変更するときと、売却に伴って売主から買主に名義変更するときに登録免許税がかかります。このうち売主から買主への所有権移転登記では、買主が費用を負担することが一般的なので、相続人が負担するのは相続登記の費用です。

登録免許税は、以下の式で計算します。

  • 登録免許税=不動産価格(課税標準額)×税率

登録免許税の税率は登記をする理由によって変わり、相続登記の場合は0.4%です。売買や贈与などで登記をする場合より、登録免許税の税率は低くなっています。

また、登録免許税の計算で使う不動産価格(課税標準額)は、不動産の価格の1,000円未満を切り捨てた金額です。税率をかけた後の金額に100円未満の端数がある場合は切り捨てます。

相続不動産の売却でかかる税金が安くなる特例制度とは

相続した不動産を売却する場合、税金の計算で特例を適用できると税負担が軽くなる場合があります。

特例の条件を満たしているのに適用し忘れると税金が高くなって実質的に損をするので、相続不動産の売却で使える特例制度についてしっかりと理解しておきたいところです。

以下では、相続不動産を3年以内に売却する場合と、空き家を売却する場合に使える特例制度を紹介します。

3年以内の売却で使える取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、一定の条件を満たす不動産を売却する場合に、税金の計算で使う取得費が大きくなって税負担を軽減できる特例制度です。

以下の条件を満たす場合に特例を適用できます。

  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  • その財産を、相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡したこと

取得費に加算する金額の計算式は複雑なので、実際に税金を計算する場合は税理士に依頼するほうが良いでしょう。

計算式は国税庁サイトに掲載されているので、気になる方は確認してみてください。

相続した空き家を売却するときに使える特例

一定の条件を満たす空き家を売却した場合、税金を計算する際の譲渡所得の金額から最高3,000万円を差し引けます。

この特例制度を使うための主な条件は、以下のとおりです。

  • 1981年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記がされた建物(マンションやアパートなど)でないこと
  • 相続開始直前に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
  • 相続開始日から3年経過する日の属する年の12月31日までに売却したこと
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 親子や夫婦など特別な関係にある人への売却ではないこと

売却価格が3,000万円以下の場合、当特例を使えれば所得税や住民税はかかりません。なお、前述の取得費加算の特例とは併用できないので、両方の特例の要件を満たす場合はいずれか一方を選択することになります。

税金はいくらかかる?具体例を使って税額をシミュレーション

ここでは以下のケースについて、相続した不動産を売却すると税金がいくらかかるのか、シミュレーションを行います。

【事例】

・不動産の売却価格:3,000万円

・不動産の取得費:2,400万円

・譲渡時にかかった費用:200万円

・不動産の所有期間:10年(長期譲渡所得)

・特例の適用:なし

・不動産の固定資産税評価額:2,500万円

まず所得税・住民税は、以下のように計算できます。

  • 譲渡所得=3,000万円-(2,400万円+200万円)=400万円
  • 所得税=400万円×15%=60万円
  • 住民税=400万円×5%=20万円

所得税と住民税の合計で税額は80万円です(実際には復興特別所得税もかかります)。

仮に空き家の売却に関する特例の要件を満たしていて、最高3,000万円の控除を適用できる場合は、本事例では譲渡所得額が400万円で控除額以内なので、税金を計算する際の譲渡所得額はゼロになって所得税・住民税はかかりません。

また、本事例では相続登記の際に登録免許税が10万円(2,500万円×0.4%)かかり、売却の際に印紙税が1万円かかります。

相続した不動産を売却するときの注意点

相続した不動産を売却するとき、税金に関して注意すべき点がいくつかあるので、以下では主な注意点を紹介します。

所得税の確定申告が必要になる場合がある

1月1日~12月31日までの間に譲渡所得があって所得税がかかる場合、確定申告が必要です。確定申告は、翌年の2月16日~3月15日までに行います。

申告や納税の義務があるにもかかわらず確定申告期間内に手続きをしないと、延滞税や無申告加算税などの罰金を科されてしまうので、税金がかかる場合には忘れずに確定申告をしてください。

また、相続した不動産を売却する場合に、特例の適用を受けるためには確定申告が必要です。

取得費加算の特例や空き家を3年以内に売却したときの特例によって所得税がかからなくなる場合でも、確定申告をしないと特例がそもそも適用されず税金がかかる場合があるので、不動産を売却した翌年に確定申告をしてください。

換価分割は原則贈与税の対象外だが課税されてしまう場合も

換価分割とは、遺産に含まれる財産を売却して現金化して、その現金を相続人で分ける遺産分割の方法です。

遺産に不動産が含まれる場合に、その不動産を売却して現金にしたうえでその現金を相続人で分けるようなケースが換価分割に該当します。

換価分割を行う場合、相続人の中の1人が売却手続きや買主からの売却金額の受け取りを行った後、そのお金を他の相続人に渡しても原則として贈与にはあたらず贈与税はかかりません。

しかし、場合によっては贈与とみなされ、贈与税がかかる可能性があります。

たとえば、遺産分割協議書を作成した後すぐに売却せず、何年も経ってから売却して売却で得たお金を他の相続人に渡すケースです。この場合、遺産分割に伴うお金のやり取りとはみなされず、贈与とみなされて贈与税が課されるかもしれません。

また、遺産分割協議書の記載が曖昧で、換価分割を行ったことが読み取れないと、不動産の売却で得た資金を相続人間でやり取りしたことが換価分割に伴うやり取りだとみなされず、単なる贈与とみなされて贈与税がかかる可能性もあります。

不動産の相続や売却では、遺産分割協議書の作成や税金など専門的な知識が必要です。相続人同士でのトラブルや税金が高くなって納税資金の確保で困ったりしないよう、不動産の相続は専門家に相談することも検討してみてください。

相続不動産の取得費が分からないと税金が高くなる場合がある

相続した不動産を売却する場合、所得税・住民税の計算では売却価格から取得費を引きますが、亡くなった方がいくらで不動産を取得したのか資料が残っておらず、取得費が分からないケースも少なくありません。

取得費が分からない場合の税金の計算方法ですが、売却価格の5%を取得費とすることが認められています。逆に言えば、売却価格の5%という少額しか取得費として計上できません。

前述の税額シミュレーションでは、売却価格3,000万円・取得費2,400万円のケースを扱いましたが、もしも被相続人が不動産を購入したときの資料が残っておらず取得費が分からなかった場合、3,000万円の5%で取得費150万円として計算します。

取得費を2,400万円として計算する場合に比べて税金が高くなるので、遺品整理をして故人の部屋の整理をする際、相続不動産の取得費が分かる資料を探して取得費を確認するようにしましょう。

まとめ

相続した不動産を売却すると、所得税や住民税などの税金がかかります。売却後に手元に残る金額は、売却価格から税金を引いた金額です。税金がいくらかかって納税後にいくら手元に残るのか、シミュレーションして確認しておきましょう。

空き家を売却する場合や相続して3年以内の不動産を売却する場合、特例を使えれば税金が安くなる場合があります。今回ご紹介した特例制度を適用するためには確定申告が必要なので、相続した土地や建物を売却して特例を適用する場合は忘れずに確定申告をしてください。

不動産の相続や売却では、税金や登記など専門的な知識が必要になります。一般の方が自分で税金の計算や手続きをしようとしても難しい場合が多いので、相続でお困りの方は弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談するようにしてください。

司法書士法人みどり法務事務所では、定額の相続登記代行サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする相続に関する各種サポートを行っています。相続でお困りの方は当事務所にお気軽にご相談ください。

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