相続登記で利用する印鑑証明書の期限はいつまで?
2022.12.22 相続登記(名義変更)遺産分割協議による相続登記を申請する際には、申請人(協議の結果、不動産の所有権を取得する方)以外の相続人全員の印鑑証明書が必要になります。
そんな印鑑証明書ですが、相続登記に使える期限はあるのでしょうか。また、故人様がお亡くなりになる前に発行された印鑑証明書も利用することはできるのでしょうか?
この記事では、「そもそも印鑑証明書とは何か」「相続登記で使う印鑑証明書の期限」「印鑑証明書が必要になる人」「印鑑証明書の取得方法」について説明します。
目次
印鑑証明書とは?
印鑑証明書とは、契約書類に押印した印鑑が実印であることを証明するものです。一般的に印鑑証明書と呼ばれることが多いですが、正式名称は「印鑑登録証明書」といいます。
不動産の契約や融資の契約、相続手続きなどの場面で実印の押印が求められます。このような取引を行う際は、きちんと実印が押印されているかを確認するために印鑑証明書も一緒に提出します。
印鑑証明書の期限
印鑑証明書自体に有効期限はありません。
ただし、提出先の機関や手続きの内容によっては、発行から所定の期間内の印鑑証明書の提出を求められることがあります。
例えば、登記申請の添付書類として同じ法務局に提出する場合であっても、不動産売買の際には3か月以内に取得した印鑑証明書の提出が求められますが、相続登記の場合はいつ取得した印鑑証明書であっても利用できます。もちろん、故人様がお亡くなりになる前に取得されていた印鑑証明書であっても問題はありません。
ちなみに、同じ相続手続きであっても銀行などの金融機関に提出する印鑑証明書については6か月以内に取得したものの提出を求められることが多いです。
相続登記で印鑑証明書が必要になる人
相続登記は、遺産分割協議による場合と遺言書で行う場合があります。
➀遺産分割協議による場合
遺産分割協議に従った相続登記を申請する場合、申請書に添付する遺産分割協議書には、不動産の所有権を取得した方(以下「申請人」といいます。)以外の相続人全員の実印を押印することが求められます。
つまり、登記をする法務局としては遺産分割協議書に申請人の実印が押印されていることまでは要件としていないのです。
しかし実務上は、作成した遺産分割協議書を銀行預貯金の名義変更や解約・証券口座の名義変更や解約・相続税申告等にも利用することが多く、それらの手続き先である法務局以外の機関は相続人全員の実印が遺産分割協議書に押印されていることを求める傾向にあります。
よって、法務局に対する相続登記の申請をする際にも、申請人を含む相続人全員の実印が押印された遺産分割協議書に相続人全員の印鑑証明書を添付して申請するのが一般的です。なお、相続人が一人だけで遺産分割協議の必要がない場合、当然遺産分割協議書の添付も必要ありませんので、相続登記申請の際に申請人の印鑑証明書の添付も不要です。つまり、登記申請書に押印するのは申請人の認印で足りるということです。
➁遺言書による場合
遺言書による相続登記を申請する場合、遺言書で指定された方が不動産を取得することになるため、別途遺産分割協議等により不動産を取得する方を決める必要はありません。そのため、相続人が一人だけの場合と同様、登記申請書には申請人の認印が押印されていれば足り、印鑑証明書の添付も不要です。
なお、遺言書で遺言執行者(遺言書の内容を実現するために相続登記などの手続きをする人)が定められていた場合に関しても考え方は同じです。相続登記の申請をするのは遺言執行者となりますが(※)、遺言執行者が申請書に押印するのは認印で足り、印鑑証明書の添付は必要ありません。
※令和元年6月30日以前に作成された遺言書で指定された遺言執行者については相続登記を申請する権限がありません。
ただし、遺言書を用いて銀行での預貯金解約手続き等をされる際には印鑑証明書が必要となることもありますのでご注意ください。
印鑑証明書の取得方法
印鑑証明書は、市区町村役場とコンビニ等で取得できます。
➀市区町村役場の場合
印鑑証明書を取得したい場合、住民票がある市区町村役場で手続きを行うのが一般的です。取得する際には、印鑑登録の際に発行された「印鑑登録カード(印鑑登録証)」を持参します。なお、印鑑証明書の取得は、基本的に本人に限られますが代理人が行うことも可能です。
➁コンビニ等の場合
印鑑証明書は役場に加えて、コンビニや一部ドラッグストアなどに設置してあるマルチコピー機で発行することもできます(※)。役場での発行手続きとは異なり印鑑登録カードを利用することはできず、代わりにマイナンバーカードまたは住民基本台帳カードが必要となりますが、役場へ出向くより手軽に取得することが可能です。なお、コンビニ等で印鑑証明書を取得できる時間は、土日祝日を含む6:30~23:00(ただし年末年始は除く。)となりますのでご注意ください。
※ただし、コンビニ等交付に対応していない自治体もございますので、ご自身の自治体が対応しているかはあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
印鑑登録をしていないケース
相続発生時に、印鑑登録をしていないことに気が付くケースもあるでしょう。このような場合は、印鑑登録を行った後に印鑑証明書を取得します。
印鑑登録は、住民票がある市区役所で手続きを行います。必要になる持ち物は下記のとおりです。
本人が手続きを行う場合
- 登録しようとする印鑑
- 本人確認資料
代理人が手続きを行う場合
- 登録しようとする印鑑
- 委任状
- 照会・回答書
- 代理人の認印
- 本人確認資料(印鑑登録者・代理人)
ただし、代理人による印鑑登録手続きには日数を要します。即日登録を希望される場合はご本人が手続きをすることをお勧めします。
印鑑登録をする時の注意点として、シャチハタは登録できません。また、既製品の判子は他人が所有している判子でもあるため、悪用されてしまうリスクが高くなります。そのため、実印用の判子を作成するのがおすすめです。
印鑑登録をするための手数料は、自治体によって異なりますが300円程度です。
まとめ
印鑑証明書は、有効期限がない書類です。
不動産売買による登記や預貯金の払い戻しなどの手続きをする場合には、作成後3カ月~6カ月以内のものを求められることもありますが、相続登記で利用する印鑑証明書にはそういった制限はありません。
そして相続登記のうち、印鑑証明書を使用するのは遺産分割協議による相続登記申請の場合です。遺産分割協議による相続登記を申請する際には、申請人(協議の結果、不動産の所有権を取得する方)以外の相続人全員の印鑑証明書が必要になります。ただし、実務上は申請人も含めた相続人全員の印鑑証明書を添付するのが一般的です。
印鑑証明書は、住民票がある市区町村役場やコンビニで取得可能です。
なお、相続発生時に実印登録をしていない場合には、一度印鑑登録を行った上で印鑑証明書を取得する必要があるので注意しましょう。
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