不動産相続の流れは?必要な書類や費用について紹介
2022.12.12 相続登記(名義変更)被相続人が不動産を保有していた場合、不動産の相続が発生します。不動産の相続にあたり、何から始めれば良いか、相続登記が必要なのか不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、不動産相続登記が必要になるケース、不動産相続の流れ、必要資料や費用について説明します。
目次
不動産相続登記は必要なの?
不動産を相続する場合
被相続人が不動産を所有している状態で亡くなった場合、原則としては相続人が不動産を相続します。不動産を相続する人は、いざという時に自分の所有権を証明できるように不動産相続登記をしておきましょう。
相続で不動産を引き継ぐ場合、大きく分けて4つの相続方法があります。
①現物分割
1つ目は現物分割です。被相続人が不動産を複数持つ場合、不動産をそれぞれの法定相続人に引き継ぐケースです。
例えば、不動産が3つあり、相続人が子供3人のケース。この場合、不動産を一つずつ引き継ぎ、それぞれの相続人が相続登記を行います。
②代償分割
2つ目は代償分割です。一つしか残されていない不動産を取得した相続人が、相続財産を引き継ぐことができなかった他の相続人に対して代償財産を支払う方法です。
例えば、相続人が子供2人で、不動産評価額が3,000万円の不動産しか残されていなかったケースで考えます。この場合、子供1人が不動産を現物で引き継ぐ代わりに、他の子供に対して1,500万円を現金で支払う形です。このケースは不動産を引き継ぐ子供の名前で不動産相続登記を行います。ただし、代償分割は不動産を相続した人が、他の相続人に対して交付できる代償財産を保有している場合にしか使えない方法です。
③換価分割
3つ目は、相続財産の不動産を売却して売却代金を分ける方法です。
例えば、配偶者と子供2人が法定相続人で、3,000万円の評価額の不動産が相続財産として残されていたとします。代償分割ができない場合には不動産を売却して現金化して分けます。法定相続割合で分ける場合は配偶者1,500万円、子供がそれぞれ750万円ずつです。この場合、すぐに売却するとしても一旦は相続人名義での相続登記をしなければなりません。
④法定相続人同士での共有
4つ目は法定相続人同士での共有です。遺産分割協議などにより不動産を共有にすると決めた場合、各相続人が共有する割合を持分割合として不動産相続登記をします。
今までは相続登記は任意だったので、上記③のように不動産売却にあたって事実上相続登記が必須となる場合を除いて、上記①②④の場合などは相続登記をしないまま放置している方が数多くいらっしゃいました。しかし、そのような状況下で所有者不明土地の増加が各地で問題となり、ようやく国が法改正に乗り出したのです。
不動産相続登記は義務化
2021年4月21日の国会で不動産相続登記を義務化する法が成立し、2024年(令和6年)4月1日より不動産相続登記は義務化します。現在、不動産相続登記は義務ではないので登記申請しなかったことによる罰則はありません。しかし、義務化になったら、原則として相続人が不動産を取得した日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。万が一、理由なく申請を怠ると10万円以下の過料が課せられることになるので注意しましょう。
不動産を売却する場合にも登記は必要
被相続人が保有していた不動産を、すぐに売却したいと考えるケースもあるでしょう。例えば、相続税の支払いのために不要な不動産を整理したり、遠方で管理が大変な不動産を処分したりすることが考えられます。このような場合にも、一旦は相続人名義で不動産相続の登記が必要で、相続人が登記した後に不動産を売却した人に名義変更を行います。不動産はすぐに売却できない可能性もあるので、売却すると決まっているのであれば、早めの手続きがおすすめです。
例えば、相続税の納付期限は被相続人が亡くなったと知った日の翌日から10カ月以内ですが、不動産の売却ができずに相続税の支払いに遅れるという事態は避けましょう。
不動産相続までの流れ
ここでは、相続発生から不動産相続までの流れについて説明します。
死亡届の提出
被相続人が亡くなったら、死亡の事実を知ってから7日以内に死亡届の提出が必要です。亡くなった際には、医師による診断が必要なのですが、死亡診断書と死亡届は一枚になっています。死亡届は、死亡した場所、届出人の住所地、死亡者の本籍地の、いずれかの役所に提出します。
遺言書の有無を確認
次に、遺言書の有無を確認します。
万が一、遺言書がない前提で遺産相続の話し合いを行い、後から遺言書が発見されれば、話し合いが水の泡になるので必ず遺言書を隅々まで探すようにしましょう。遺言者が法務局の遺言書保管制度を利用していた場合は、法務局で遺言書保管事実証明書の交付請求をする事により探すことができます。また、遺言者が公証役場での公正証書遺言を作成していた場合は、公証役場の遺言検索システムで探すことができます。
相続財産目録の作成
次に、被相続人の財産内容を確認して相続財産目録を作成すべきでしょう。財産内容が把握できていないと何を相続できるのか、または何を相続しなければならないのかが分からないからです。財産目録にはプラスの財産だけではなくマイナスの財産(借金、未払金など)も記載します。不動産を把握できない場合は、不動産の権利書や登記識別情報、名寄せ帳、固定資産税明細書などから特定することができます。
戸籍謄本の取得
不動産相続登記や銀行口座の名義変更などの手続きでは、被相続人の出生から死亡時までの全ての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本と相続人の戸籍謄本が必要です。被相続人・相続人の謄本を合わせると膨大な量になります。
被相続人の戸籍謄本を収集する理由は、法定相続人の確定をするためです。昔の戸籍謄本は手書きなので読みにくさを感じるでしょう。しかし、法定相続人の存在を見逃して相続手続きを進め、後から法定相続人の存在が明らかになれば遺産分割協議をやり直す必要が出てきます。このようなミスで、相続税の納付期限に間に合わなければ延滞税がかかるので確認をしましょう。
不動産相続登記や銀行の名義変更の手続きでは、全ての戸籍謄本を持ち込む必要があります。しかし、全ての戸籍謄本を毎回の手続きで持ち込むのが手間だと感じる場合には、「法定相続情報一覧図の写し」を取得するのがおすすめです。
遺産分割協議書の作成
相続内容を相続人同士で話し合って決めることを、遺産分割協議といいます。遺言書が無い場合は遺産分割協議が必要になります。遺産分割協議で相続内容が決まったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書がないと、不動産の相続登記や銀行口座の名義変更はできないからです。
遺産分割協議書には、各相続財産を誰が引き継ぐのかを記載し、各法定相続人が実印を押印します。遺産分割協議書の作成が不安な場合には、専門家に作成を依頼するのがおすすめです。
相続登記
誰がどのように相続するかが決まったら、不動産の相続登記の手続きを行います。相続登記は、必要書類を作成して法務局に書類を提出します。
提出方法は、法務局の窓口へ出向く、郵送、オンラインから選べます。登記の申請から登記完了までの期間は1週間程度です。登記が完了すると登記識別情報通知が発行される流れです。
不動産相続登記で必要になる書類
不動産の相続登記で必要になる書類は、法定相続による相続登記、遺産分割協議による相続登記、遺言書による相続登記によって異なります。また、不動産の数や法定相続人の人数によっても異なるので、心配な場合には専門家に手続きを依頼するのがおすすめです。間違った書類で提出すれば、書類を取得し直したり、作成し直したりする必要があり手間になるからです。
不動産相続登記で必要な資料については関連記事【相続登記 必要資料】で説明していますのでご確認ください。
不動産相続登記で必要になる費用
不動産相続登記で必要になる費用は、登録免許税・戸籍謄本取得費用などです。
登録免許税は、下記の計算式で求めます。
【固定資産税評価額×0.4%=登録免許税】
※固定資産評価額は1,000円未満切り捨て、登録免許税は100円未満切り捨て
このように、不動産の評価額により登録免許税は変わります。登録免許税の納付は、現金または収入印紙で行います。
また、相続ではさまざまな戸籍謄本を取得する必要があります。被相続人は出生から死亡するまで全ての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本が必要ですし、不動産の数や法定相続人の人数などにより必要になる書類の数は異なります。
謄本などの取得費用は下記の通りです。
- 相続人の戸籍謄本:1通450円
- 被相続人の改製原戸籍:1通750円
- 被相続人の住民票除票:1通300~400円程度(自治体による)
- 相続人の住民票:1通300~400円程度(自治体による)
- 相続人の印鑑証明書:1通200~400円程度(自治体による)
さらに、司法書士へ不動産相続登記を依頼する場合には、司法書士への報酬の支払いも必要です。司法書士へ支払う報酬は、作業範囲や不動産の数、不動産の評価額によって異なりますが、約7~15万円が相場といわれています。
不動産登記で必要な費用については、【不動産登記 費用】で詳しく紹介していますのでご確認ください。
不動産相続登記をするメリット
ここでは、不動産相続登記をするメリットについて説明します。
不動産を売却できる
不動産相続登記をすることにより、不動産を売却できるようになります。
例えば、不動産しか相続財産が残されていない場合にも、相続税の対象となれば相続税の支払いが必要です。不動産を売却することで相続税支払いが無くなるので、不要な不動産であれば売却してしまっても良いでしょう。
また、遠方で管理できない不動産を保有するのは、空き巣を狙った犯罪に狙われるリスクがあります。それだけではなく、固定費やメンテナンス費用もかかるので、誰も住まない不動産であればなるべく早めに処分してしまった方が良いといえます。
このように、不動産を売却する理由はいろいろありますが、相続人名義で一旦登記をしなければ売却できないので、売却を考えるのであれば早めに登記しましょう。
不動産を担保にできる
不動産相続登記をすることにより、引き継いだ不動産を担保に融資が受けられるようになるのもメリットといえます。例えば、子供の教育資金などの資金需要ができた時に、カードローンなどの無担保融資を受けるよりも不動産担保ローンなど不動産を担保に入れた融資の方が低金利で長期間利用できる可能性が高いです。将来的に融資を受ける必要性がある場合には、不動産相続が発生した際に登記までしておいた方が良いでしょう。
所有関係の複雑化を防げる
登記をすることで所有関係の複雑化を防げるのもメリットといえます。相続が発生して不動産登記をしないと、相続人の一人やその債権者に、勝手に法定相続分通りの相続登記をされてしまう可能性があります。例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合で、配偶者が不動産を相続する予定だったのに、配偶者の持ち分が2分の1、子供の持ち分がそれぞれ4分の1という形です勝手に登記されてしまう可能性があるという事です。また、共有してしまうと固定資産税を誰が支払うか、メンテナンスを誰が行うか、売却したい人と所有したい人の意見が分かれるなどトラブルになりやすいのでなるべく避けましょう。そのため、不動産相続がある場合には誰が所有するかをしっかり話し合いなるべく共有は避け、所有者が相続登記をすることで所有関係の複雑化を防ぐのがおすすめです。
次の相続で手間がかからない
不動産の相続登記をしないと、次の相続が発生すると所有関係がさらに複雑になる恐れがあります。例えば、相続人の1人が亡くなったらその相続人の配偶者や子供も相続人となってしまいます。もともとは妻と子供2人だけが相続人だったのに、気づけば相続人が10人以上になってしまったという事もあります。そうなれば、いざ相続登記を行おうと思ったとしても、それぞれの相続人から戸籍謄本などを集めるのは非常に面倒です。親族間で交流が減っていればなおさらです。また今後は、不動産相続登記は義務化になりますが、既に相続された不動産も対象になります。後に残された人の労力を考えて、相続登記はきちんと行いましょう。
不動産相続登記をするデメリット
不動産相続登記をするデメリットは登記するために費用がかかることです。先ほども説明した通り、不動産の相続登記には登録免許税・戸籍謄本取得費用・専門家(司法書士)への報酬が発生します。しかし、費用がかかったとしても後々のトラブルを避けるために不動産相続が発生したら速やかに相続登記を行うことをおすすめします。
また、不動産相続登記は義務化となり、相続登記をしないと罰則も科せられるようになるため、やらないという選択肢はなくなるでしょう。
不動産相続登記は誰に依頼するべき?
不動産相続登記は、相続人が自分で書類を用意して申請することもできます。しかし、用意すべき書類も多く、スムーズに手続きを終わらせたいのであれば専門家に任せてしまった方が良いといえます。ここでは、不動産相続登記を依頼できる専門家について説明します。
弁護士
遺産分割協議で、相続内容について相続人の間で揉めている場合には弁護士に相談するのがおすすめです。法的根拠に基づいて具体的な解決法を提示してくれるでしょう。万が一、家庭裁判所の審判となったとしても弁護士なら代理人になれます。他の士業が代理人になることはできませんので、遺産分割協議が難航していて審判の可能性があるのであれば最初から弁護士に頼るのが安心です。
ただし、弁護士は規定上では相続登記を行えますが、実際には取り扱っていない弁護士がほとんどです。そのため、相続登記が必要な場合に他の専門家につないでくれるネットワークがあるかなどはあらかじめ確認しておきましょう。
司法書士
司法書士は不動産登記の専門家です。不動産の相続に関することなら遺産分割協議の作成、必要書類の収集など幅広い業務を依頼することができます。相続に関する知識も豊富なので、弁護士のように代理人にはなれませんが、過去の事例などから適切なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。相続登記は司法書士に依頼するのがおすすめです。
まとめ
不動産を相続する場合には、不動産相続登記を行います。不動産相続登記を行うメリットは、下記の通りです。
- 売却できるようになること
- 担保にできること
- 所有関係が複雑化しないこと
- 次の相続で手間がかからないこと
一方、不動産相続登記をするデメリットは費用がかかることです。不動産相続登記には、登録免許税・戸籍謄本費用などがかかります。ただし、相続登記は義務化するため、今後相続登記をしなという選択肢はなくなりそうです。義務化になると、理由なく相続登記を期限内に行わなければ罰則が科せられます。
不動産相続登記は自分で行うこともできますが、書類の収集や作成が複雑なので、専門家に任せてしまう方が安心です。不動産相続登記でお困りごとがございましたら、相続案件に強いみどり法務事務所にお気軽にご相談ください。経験豊富なスタッフが対応いたします。
関連記事
人気記事
新着記事