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遺産相続で成年後見制度を使うケースとは?手続きの流れや費用を紹介

2022.10.19 家族信託・後見制度 遺産相続で成年後見制度を使うケースとは?手続きの流れや費用を紹介

この記事を監修したのは、

代表 池村 英士

所属 司法書士法人みどり法務事務所 愛知県司法書士会 会員番号 第2213号 認定番号 第1001075号 資格 司法書士

1.成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害等により判断能力が不十分な方々を後見人の支援により保護する制度です。このような方々は、財産の管理や施設の利用をする必要があっても、自身ではそれらを適切な判断で行うのが難しく、詐欺等の悪質な被害を受ける恐れがあります。

そのため、成年後見制度により後見人を選任し、判断能力が不十分な方々を保護、支援する必要があります。

遺産相続の場面では、相続人が認知症等で判断能力がない場合であれば、その相続人は遺産分割協議に参加できないため、成年後見人を選任したうえで成年後見人が本人に代わって遺産分割協議を行うといったケースが考えられます。

成年後見人の役割

成年後見人の役割は、大きく「療養看護」と「財産管理」に分けられます。

 

・療養看護

本人の収入・財産を把握し、医療費や税金等の必要な支出の見積もりを出したうえで、中長期的な見通しで療養看護の計画と収支の予定を立てます。必要であれば、本人のために介護施設やデイケアセンター等の入退所契約といった法律行為を行います。

なお、実際の看護や介護を行うことは成年後見人としての療養看護に含まれないとされています。

 

・財産管理

成年後見人は、選任されるとまずは本人の財産を調査し、財産目録を作成して家庭裁判所に提出します。その後は、本人の収入と支出について金銭出納帳により記録し、財産の現状維持を基本として本人の生活資産を保全します。 成年後見人が、本人の不動産の売却等大きな財産を処分するには別途家庭裁判所の許可が必要となります。もし、成年後見人が不適切な財産処分行為が行えば、民事・刑事上の責任を追及される可能性もあります。

成年後制度の種類

成年後見制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」に分けられます。

 

・法定後見制度

認知症等により本人の判断能力が不十分となった後に、親族等が家庭裁判所に後見開始の申し立てを行い、家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人・補助人・保佐人)を選任します。

選任された後見人は、法で定められた範囲で本人のために契約の締結・取消等を行うことができます。

 

・任意後見制度

本人が十分な判断能力を有している段階で、あらかじめ任意後見人になる者、その者に将来委任する事務行為の内容を定めておき、本人の判断能力が不十分となった後に、任意後見人が定められた事務行為を行う制度です。

任意後見人は任意後見契約で定められた範囲で本人に代わって事務行為を行うことができます。しかし、法定後見と異なり本人が締結した契約を取り消すことはできません。

2.成年後見人の選任が必要なケースとは?

成年後見制度は、本人の判断能力が不十分となった場合に利用される制度ですが、具体的にはどのような原因・場面で後見制度の利用が必要になるのでしょうか。

後見等開始の原因とその割合

後見等開始原因

割合(%)

認知症

63.7

知的障害

9.6

統合失調症

9.1

高次脳機能障害

4.4

遷延性意識障害

0.8

その他

12.4

※1 数値は裁判所による統計資料を参照
※2 後見「等」には後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件を含む
※3 その他には発達障害、うつ病、双極性障害、アルコール依存症、転換による障害等が含まれている

後見等の申し立ての動機とその件数・割合

申し立ての動機

件数

割合(%)

預貯金の管理・解約

35,744

32.9

身の上保護

26,469

24.4

介護保険契約

14,737

13.6

不動産の処分

12,564

11.6

相続手続

9,041

8.3

保険金受取

5,569

5.1

訴訟手続等

2,086

1.9

その他

2,458

2.3

※1 数値は裁判所による統計資料を参照
※2 後見「等」には後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件を含む

それぞれの生活状況など細かい事情は異なってくると思いますが、上記の原因・割合からすると、やはり認知症の高齢者が財産の管理行為や処分行為を行うことができなくなったという場面で成年後見人が選任されることが最も多いようです。つまり、そのような場面で成年後見人の選任が必要となるケースが多いということになります。

3.成年後見人には誰がなれる?

成年後見人は、本人にどのような支援が必要かなどの事情に応じて、家庭裁判所が選任します。成年後見人となる者は、本人の親族以外に、弁護士・司法書士のような法律の専門家や福祉関係の公益法人等の法人も対象となります。

成年後見人等と本人との関係

本人との関係

件数

親族

7,852

弁護士

8,207

司法書士

11,965

社会福祉士

5,753

市民後見人

320

※1 数値は裁判所による統計資料を参照

特定の親族を成年後見人に指定できるか?

本人の立場からすれば、親族等の身近な人に財産等を管理してもらう方が、安心感があるかもしれません。

この点につき、後見開始の申し立て時に後見人の候補者を指定することはできますが、後見人はあくまで家庭裁判所の審査により選任されるため、希望した候補者が選任されない場合があります。その際、希望者が後見人に選ばれなかったことを理由に裁判所に対して不服申し立てをすることはできません。

さらに、民法では、後見人として認められない事項(欠格事由)が定められており、以下のいずれかに該当する場合は後見人になることはできません。

〇成年後見人の欠格事由

1.未成年者

2.家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人 ※免ぜられた=裁判所から解任されたもの

3.破産者

4.被後見人(本人)に対して訴訟をし又はした者、並びに その配偶者及び直系血族

5.行方の知れない者

4.成年後見人を選任するときの手続きの流れ

成年後見制度の流れ

※申立てから審判が下りるまで2か月以内、長くても4カ月以内が一般的です

 

1.申立ての準備

成年後見の申し立ての準備として、以下の書類が必要です。

・申立書 ※書式は裁判所のHPに公開されています

・手続き費用分の収入印紙・郵便切手

・本人の戸籍謄本

・本人の住民票

・本人が成年後見登記されていないことの証明書 ※取得先は役所です

・申立人の戸籍謄本

・診断書 ※本人が後見開始の要件を満たしていることを証明できるもの

・成年後見人の候補者を指定する場合はその者の住民票

・成年後見人の候補者を指定する場合はその者の陳述書 ※欠格事由のないことを確認するために必要です

以上は最低限必要な書類ですが、家庭裁判所が本人の事情を判断しやすくするために、以下のような書類も用意すると良いでしょう。

・障害者手帳・療育手帳等の本人の健康状態に関する資料

・登記簿や固定資産税評価証明書等の不動産に関する資料

・通帳や株式の報告書等の財産に関する資料

・保険に関する資料

・債務に関する資料

・収入に関する資料

・税金や家賃等の支出に関する資料

 

2.申立て

申立て書類の準備が完了したら、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に面接の予約をします。面接日時の予約は裁判所の状況によりますが、2週間から1カ月先に指定されることが多いようです。

なお、一度後見開始の審判を申立てると、裁判所の許可がない限り申立てを取り下げることはできません。

 

3.審査・調査・鑑定

申立て後、裁判所の職員により申立人や候補者から事情・意見の聞き取りを行い、必要であれば裁判官自身が事情を尋ねる審判が行われます。

この際、診断書だけでは本人の判断能力の判定が困難であれば、鑑定という医師による判定手続きが行われます。

 

4.審判

家庭裁判所が、後見開始の審判をするのと同時に成年後見人を選任され、2週間の不服申立期間が経過すれば審判は確定し、後見が開始されます。

この際、裁判所が法務局に、本人について後見登記を嘱託(業務依頼)します。

 

5.財産目録の作成

選任された成年後見人は、審判が確定してから1カ月以内に本人の財産目録を作成し、裁判所に提出します。

任意後見制度の流れ

 

1.任意後見人の選定

将来、本人の任意後見人になる人(委任後見受任者)を選定します。

任意後見受任者は、弁護士や司法書士などの資格者である必要はありませんが、財産管理などの重要な事項を委任することになるため、十分に信頼できる人を選定してください。

 

2.支援内容の決定

任意後見契約を締結する前提として将来支援してもらう内容を決めます。支援事項は、どの財産を管理するか、老人ホームの入所手続き、任意後見人の代理権の範囲等、具体的に決めましょう。

 

3.任意後見契約の締結・公正証書の作成

公証人が作成する公正証書により任意後見契約を締結します。公正証書が必要なのは、本人の意思をしっかりと確認し、契約の内容が法律に従った内容にしなければならないためです。

なお、公正証書作成後、公証人の嘱託により任意後見契約は登記されます。

〇公正証書作成のための必要書類等

・委任事項をまとめた原案

・本人の印鑑証明書

・本人の戸籍謄本

・本人の住民票

・委任後見受任者の印鑑証明書

・委任後見受任者の住民票

※印鑑証明書・戸籍謄本・住民票は発行から3カ月以内のものが必要です

〇公正証書作成の流れ

・公証役場に必要書類を提出

・公正証書の作成日時を決める

・公証役場にて、本人と任意後見受任者が公証人の面前で契約内容を確認の上、契約書に署名捺印し、任意後見契約を締結する

 

4 任意後見監督人選任の審判の申立て

本人の判断能力が低下してしまい、任意後見人の支援が必要な状況になったら、家庭裁判所に任意後見監督人選任の審判を申し立てます。

任意後見監督人は、任意後見人が契約通り適切な財産管理等を行っているか監督する立場にあり、任意後見制度では必須となっています。

なお、申立て後は裁判所の許可がなければ取り下げをすることはできません。

〇任意後見監督人選任の審判の申立ての必要書類

・申立書

・申立事情説明書

・親族関係図

・任意後見受任者事情説明書

・財産目録

・相続財産目録

・収支予定表

さらに、添付書類として以下も必要です。

・本人情報シート

・本人の戸籍謄本

・本人の住民票または戸籍の附票

・登記事項証明書(任意後見契約が登記されていることの証明として)

・登記されていないことの証明書

・任意後見契約公正証書の写し

・任意後見受任者の戸籍謄本

・任意後見受任者の住民票または戸籍の附票

 

5.調査

申立て後は、家庭裁判所により申立人、任意後見受任者及び本人の調査が行われ、必要であれば本人の精神鑑定も行われます。

 

6.審判

審判が下りて任意後見監督人が選任されると、その旨の審判所が本人、任意後見受任者及び任意後見監督人に郵送されます。

この際、裁判所の嘱託により登記が行われます。

 

7.初回報告書類の作成

任意後見人は、任意後見監督人から指示された期限までに、本人の財産目録や収支予定表などをまとめた初回報告書類を提出する必要があります。

5.成年後見制度で費用はいくらかかる?

成年後見

《成年後見人の選任時に必ずかかる費用》

項目

費用

備考

申立料

800円

 

登記手数料

2600円

 

郵便切手

4000円前後

 

診断書

数千円~数万円

病院ごとに異なる

住民票

300~400円

1通当たり

戸籍謄本

450円

1通当たり

登記されていないことの証明書

300円

 

 

《成年後見人の選任時、場合によりかかる費用》

項目

費用

備考

鑑定費用

10万円以下

 

専門家への報酬

10万~20万円

 

登記事項証明書

600円

財産に不動産がある場合

 

《成年後見人の選任後にかかる費用》

項目

費用

備考

成年後見人の基本報酬

月額2万~6万円

基本は2万円で、管理する財産の額により3万~6万円となる

成年後見人の付加報酬

基本報酬の5割

付加報酬は、後見事務において身の上看護等に特別困難な事情があった場合に付加される

成年後見監督人の報酬

1万~3万円

基本は1~2万円で、管理する財産の額により2万5000~3万円となる

任意後見

《任意後見契約締結時にかかる費用》

項目

費用

備考

公証役場手数料

1万1000円

証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算される

収入印紙代金

2600円

 

登記嘱託料

1400円

 

書留郵便料

約540円

病院ごとに異なる

正本謄本の作成手数料

1枚につき250円

1通当たり

専門家への報酬

10万~20万円

任意後見受任者を専門家に依頼した場合に必要

 

《任意後見監督人選任の審判の申し立て時にかかる費用》

項目

費用

備考

申立料

800円

 

登記手数料

1400円

 

郵便切手

4000円前後

 

診断書

数千円

病院ごとに異なる

住民票

300~400円

1通当たり

戸籍謄本

450円

1通当たり

登記事項証明書

550円

 

登記されていないことの証明書

300円

 

 

《任意後見監督人選任が選任された後にかかる費用》

項目

費用

備考

任意後見人の報酬

契約内容による

 

任意後見監督人の報酬

1万~2万円

額は裁判所により決定される

6.成年後見制度の4つのメリット

成年後見制度は判断能力が低下した本人を保護するための制度ですが、具体的には4つのメリットがあります。

①銀行預金等の本人の財産を動かせるようになる

銀行は、名義人が認知症であることが判明すると、詐欺等のトラブルから名義人を保護するために口座を凍結します。

しかし、成年後見人が選任されたことを銀行に届け出れば、口座が凍結された後であってもこれが解除され、成年後見人により財産管理の範囲で財産を動かせるようになります。

②財産の管理により使い込みを防止できる

成年後見人が選任されたことが銀行に届け出ると、本人の口座には後見の設定が行われ、通帳の名義は本人と成年後見人の連名となり、口座が成年後見人の管理下にあることが明らかとなります。

これにより、本人の口座からは成年後見人以外は引き出せなくなるため、本人と同居の家族等が預金を引き出して使いこむなどの事態を防止できます。

③施設の入居契約等の本人に必要な手続きを代わりに行ってもらえる

認知症等により判断能力が低下した状態だと、法律上、本人自身のために必要であっても契約を締結することはできません。

しかし、成年後見人であれば、本人のために代わって契約を締結することができます。

④本人が不利益な契約をした場合でもこれを取り消せる

本人が、判断能力の低下により悪質な訪問販売業者等に騙され、不利益な契約を締結してしまった場合でも、成年後見人が選任されていれば、本人に代わって契約を取り消し代金や引き渡した品物の返還を請求することができます。

7.成年後見制度の3つのデメリット

成年後見制度は、上記の通り本人の保護のために有用な制度ですが、残念ながらデメリットも存在します。

①制度の利用のためには手続きに手間と費用がかかる

上記の手続きの流れで説明した通り、成年後見の申立てには多くの必要書類があり収集と準備に手間がかかります。そのため、手続きをスムーズに進めるために、知識がある専門家に依頼することが有効ですが、その場合は10万~20万の報酬が必要となってしまいます。

さらに、成年後見人が選任されれば、親族等の成年後見人が無償で業務を行う場合を除いては、後見が継続する限り月額で報酬がかかるため、最終的に相当な費用負担となってしまいます。

②生前贈与などの相続対策ができなくなる

生前の相続対策として、生前贈与により将来の相続税を抑える方法がありますが、成年後見人が選任されると、本人の居住用不動産の処分には裁判所の許可が必要となり、生前贈与のような本人の財産が減少する行為は基本的にできなくなります。

③原則として後見を途中でやめることができない

成年後見人が選任されれば、本人の意思能力が保護を必要としない程度に回復しない限り、後見開始の審判は取り消されません。

そのため、原則として本人が亡くなるまでは成年後見人の報酬が発生するという点、自由な財産処分ができないという点は受け入れなければなりません。

8.まとめ

以上が、成年後見・任意後見制度の概要です。

後見制度は、本人に判断能力がなくなっても自動的に開始されるわけではなく、裁判所への申立てにより開始されるため、本人の生活状況や財産状況等によりあえて制度を利用しないというケースもあります。

相続人の中に判断能力がない方がいる場合、その方を含めた遺産分割協議を有効に行うことはできませんが、後見制度を利用することのデメリットと比較して、遺産分割協議が不要な法定相続で済ませるという方法も考えられます。

もっとも、家や土地などの不動産を安易に法定相続で済ませてしまうと、複雑な権利関係になり余計に相続をややこしくしてしまう可能性があります。なので、相続人の判断能力が低下してしまう前に、しっかりと家や土地などの相続を済ませておくことが大切です。

当事務所では、皆様になるべくストレス無く相続を済ませていただくために、定額の相続登記代行サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする相続に関する各種サポートを行っています。まずは、お気軽にお問い合わせください。

この記事を監修したのは、

代表 池村 英士

所属 司法書士法人みどり法務事務所 愛知県司法書士会 会員番号 第2213号 認定番号 第1001075号 資格 司法書士

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