被相続人の家を売却する場合には相続登記は必要?手続きの流れは?
2022.09.02 相続登記(名義変更)「相続税が支払えないから相続財産の家を売却したい」「空き家で持っていても固定資産税がかかるし…」相続で譲りうける家を売却したいと考える方もいらっしゃるでしょう。相続で譲り受けた家をすぐに売却する際にも、相続登記が必要になります
この記事では、相続登記の流れや家を売却する際の注意点をご紹介します。
相続における遺産分割方法
相続では、大きく分けて4つの遺産分割方法があります。ここでは、それぞれの方法についてご説明します。
現物分割
現物分割は、複数の相続財産を相続人がそれぞれ引き継ぐ分割方法です。例えば、相続人がA・B・Cの3人いたとします。残された相続財産は、現金・自宅・自宅以外の不動産としましょう。このようなケースでAは現金、Bが自宅、Cが自宅以外の不動産を引き継ぐのが現物分割です。
代償分割
代償分割とは、一人の相続人が相続財産を相続することになった場合にその他の相続人に相続割合を金銭で支払う方法です。例えば、被相続人の子供AとBの2人が法定相続人と仮定します。3,000万円の自宅を子供Aが引き継いだ場合、法定相続割合で分けるのであれば1,500万円を相続人AからBに支払います。
換価分割
換価分割とは、相続財産を第三者へ売却することにより換金してからその代金を相続人で分ける方法です。例えば、相続人が被相続人の子供A・B・Cと仮定します。3,000万円で被相続人の実家を売却できたらそのお金を相続人で1,000万円ずつ分けるといった形です。
共有
相続財産を分割せずに共有するという方法もあります。それぞれの相続割合で登記を行います。ただし、共有にすると次の相続が発生した時に権利関係が複雑になったり、誰がメンテナンスをするかで揉めたりというデメリットがあるので注意しましょう。
相続登記なしで被相続人の家を売却することはできない
相続登記なしで被相続人の家を売却することはできません。遺言書が残されている場合と遺産分割協議をする場合の相続登記までの流れについてご説明します。
相続してから売却が必要
相続財産を売却する際には、必ず相続登記が必要になります。換価分割する場合には、売却後に現金を分けることになりますが、相続税の支払いを売却資金でしようと思っている場合には急いで手続きを行う必要があります。相続税の申請・納付は、被相続人が亡くなったという事実を知った日の翌日から10カ月以内であるためです。
遺言書がある場合はその内容に従う
遺言書が残されている場合には遺言書の内容で相続手続きを行い、遺言書で家を相続する人が決められていれば、その相続人が相続登記を行います。
ただし、兄弟姉妹を除いた法定相続人には法的に相続割合を侵害されない「遺留分」が発生します。遺留分を侵害されているケースについては、遺言書が残されていた場合でもその通りにならない可能性があります。
誰が相続するかは遺産分割協議で話し合う
遺言書が残されていない場合は、法定相続人全員で遺産分割の内容について話し合います。遺産分割は、「法定相続割合」があるので基本的にはそれに従って分割します。ただし、被相続人の介護をしていた相続人がいる、生前贈与を特別多くもらっていた相続人がいるというケースでは、調整が必要になるでしょう。
遺産分割の結果、家を引き継ぐことになった人が相続登記を行います。換価分割をする場合には、代表者を一人決めて相続登記をすることが多いです。
家を売却したほうが良いケース
ここでは、家を売却したほうが良いケースについてご説明します。
家を売らなければ財産を分けるのが難しいケース
家を売らなければ財産を分けるのが難しいケースでは、売却してしまったほうが無難です。
例えば、相続財産が家しか残されていないケースで、一人の相続人が引き継ぎ、代償分割できれば問題ありませんが、家の評価が高いと代償で支払うお金も高くなってしまいます。つまり、代償として支払える手元資金が十分にないと、代償分割はできないのです。このようなケースでは、売却して現金で分けたほうがスムーズといえるでしょう。
相続しても空き家になるケース
現住所と離れており、相続しても空き家になってしまうケースも売却してしまったほうが良いでしょう。空き家として保有するだけでも、固定資産税やメンテナンス費用がかかるためです。また、空き家は犯罪などのトラブルに巻き込まれやすいです。離れた場所を管理するのは難しいので、売却してしまったほうが良いといえるでしょう。
家を売却する流れ
ここでは、相続した家を売却するまでの流れをご説明します。
相続登記
相続で引き継いだ家は相続登記を行います。相続登記は相続登記にかかる書類を法務局に持ち込むことで、手続き可能です。自分で手続きをすることもできますが、「相続税の支払いに不動産の売却代金を充てたい」と急いでいる場合や確実に手続きを済ませたい場合には登記の専門家である司法書士に依頼するのが安心です。
相続登記の具体的な方法は、関連記事「相続登記が2024年(令和6年)4月1日から義務化!手続きを専門家に依頼すべき理由は?」を参考にしてください。
不動産屋へ売却の依頼
相続登記が完了したら、不動産屋へ売却の依頼をします。売却する不動産価格は各社異なりますので、複数社から見積もりを取得するのがおすすめです。
不動産の売却
不動産をどの不動産屋に売却するかが決まったら、不動産を売却する手続きを行います。不動産を売却する際には、不動産の売買契約を締結し、「売買登記」が必要です。
家を売却する際の注意点
最後に、家を売却する際の注意点についてお伝えします。
相続人同士で十分話し合う
家を売却する際には、相続人同士で十分話し合うようにしましょう。
例えば、相続した人の所有物になるとはいえ、思い出のある実家を相続した人が勝手に売却してしまえばその他の相続人から反感を買うでしょう。相続で揉めて親戚間が疎遠になることは多々あります。大切な親族が疎遠になることがないように、じっくり話し合う必要がありますし、場合によっては第三者に介入してもらうのも良いでしょう。
複数の不動産屋に査定してもらう
不動産屋によって売却する不動産価格は異なります。特に、相続人にとって土地勘がない場所の物件だと、安く買いたたかれてしまう可能性があるからです。そのため、複数社に見積もりを取ると良いでしょう。
相続登記を専門家へ依頼すべき理由
相続登記は相続人自身が行うこともできますが、専門家である司法書士に依頼するのがおすすめです。ここでは、なぜ司法書士に依頼したほうが良いのかについてご説明します。
必要書類を無駄なく取得してもらえる
相続登記は、相続の方法によって必要書類の種類や枚数が異なります。相続登記に詳しくない人が書類を集める場合、まずどの書類が必要になるのかを調べることが必要です。認識が間違ったまま書類を集めると、法務局に提出したときに間違っていると指摘を受けて再度収集し直す手間になる可能性もあります。
一方、相続登記を熟知している司法書士に依頼すれば、必要になる書類を正確に提示してくれるので、書類を収集し直すような手間はかかりません。相続人自身で必要書類を調べたり、揃えたりする時間が確保できないのであれば、最初から司法書士に頼ってしまったほうが効率的です。
法務局に一度も出向くことなく手続きできる
司法書士に相続登記を依頼すると、書類に収集以外にも登記申請書の準備もしてくれます。法務局での手続きも任せることができるので、相続人が法務局に一度も出向くことなく手続きを進められるのです。法務局の業務取扱日は平日だけなので、仕事が忙しくて休みにくい方にとってはメリットがあるでしょう。
遺産分割協議のアドバイスを受けられる
遺言書が残されていない相続では、相続人全員で遺産分割協議を行い、相続内容や相続割合を話し合います。しかし、相続人それぞれが主張し始めると意見がまとまらずに、最悪の場合にはいわゆる「争続」に陥ってしまいます。そこで過去の経験や判例をよく知る司法書士がアドバイスすることにより、遺産分割協議の決着がつきやすくなる可能性が高いです。遺産分割協議が難航しそうな場合には、司法書士を頼ったほうが良いといえるでしょう。
遺産分割協議書も作成してもらえる
遺産分割協議で相続内容を決める場合、遺産分割協議書の作成を行う必要があります。遺産分割協議書は、相続財産の詳細や誰が相続するかなど記入箇所が多い書類ですが、内容が間違っている場合は作成し直さなければいけません。そして、相続人の全員の実印押印が必要なので、作成し直すのは手間です。
そのため、相続登記を司法書士に依頼するのであれば、遺産分割協議書の作成も併せて依頼するといいでしょう。遺産分割協議書の作成から相続登記まで丸ごと任せることで、相続人の負担を減らすことができます。
まとめ
換価分割をしたり、相続税の支払いに充てたりしたい場合には相続する家を売却するケースがあります。相続する家をすぐに売却する場合にも相続登記が必要で、相続登記が完了した後に売却して第三者に所有権が移ることになります。
相続税の支払い期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10カ月以内なので、売却したお金で相続税を支払いたい場合には急いで相続登記の手続きが必要です。納付期限に遅れないように手続きしましょう。
相続した家を売却する際には、トラブルを避けるために相続人間で十分話し合う必要があります。なるべく良い条件で売却できるように、複数の不動産業者に見積もりを取るのもおすすめです。
また、不動産登記はケースによって必要になる書類の種類や枚数が異なりますので、不動産登記の専門家である司法書士に相談するのがおすすめです。専門家に任せれば、スピーディーかつ正確な手続きに期待できます。
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