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所有者不明土地とは?問題視される理由と、相続した土地を放置するリスクについて

2023.05.19 相続登記(名義変更) 所有者不明土地とは?問題視される理由と、相続した土地を放置するリスクについて

この記事を監修したのは、

代表 寺島 能史

所属 司法書士法人みどり法務事務所 東京司法書士会 会員番号 第6475号 認定番号 第901173号 資格 司法書士

日本では、不動産の所有者が死亡したが相続人が名義変更を行わず放置、不動産の所有者の所在が不明などの理由により所属者不明土地が増えています。

所属者不明土地は、隣接土地への悪影響や土地開発事業の阻害など多くの問題に発展するため、対策として法改正が行われています。

1.所有者不明土地とは?

所有者がわからない土地のこと

所有者不明土地とは、次のような土地を指します。

  • ①相続登記が行われていないため土地の所有者が判明しない土地
  • ②不動産の所有者が転居したため所在が不明な土地

平成29年度の国交省調査では、国土の22%もの割合が所有者不明土地となっており、今後も増えることが懸念されています。

所有者不明土地ができる理由

所有者不明土地が発生する主な理由として、以下が挙げられます。

  • ①土地の所有者が死亡した際に相続登記が行われない
  • ②土地の所有者が転居した際に住所変更の登記をしない

これまで、家・土地の所有者・住所が変わってもそれの変更登記を行うのは義務ではなく、また変更登記をしなくても罰則は設けられていませんでした。

そのため、相続登記が行われないまま放置され、その間に何度も相続が発生して土地の共有者が増えていくことにより、話をまとめることができなくなり、実際の土地所有者の特定や土地の処分が困難になっていきます。

なお、詳細は後述しますが、法改正により相続登記は義務となります。

2.所有者不明土地が問題視される理由

売却や賃貸などの活用ができないから

土地の所有者が不明だと、その土地を売却・賃貸することができません。

土地が共有の場合、売却・賃貸するには共有者全員の同意が必要となりますが、相続登記がされないまま放置された土地は、何度も相続が発生し、多数の共有者が存在している状態となります。放置された期間が長いほど、共有者の調査や話し合いは難航し、所有者の一部が土地を処分したくても、他の共有者全員の同意を取り付けることが困難になっていきます。

また、土地の所有者が不明のため、用地買取交渉ができず公共事業や復興事業の妨げにもなる、土砂崩れなどの被害が生じても対策ができないなどの不都合も生じます。

近隣住民に迷惑をかけるから

所有者不明土地は管理する人がいないため、問題が生じても放置され、近隣住民に迷惑をかけることになります。

建物が建っている土地の場合、建物の老朽化による倒壊の恐れがあります。建物が立っていなくても、雑草が生い茂ることにより虫が湧く、不法投棄物の放置などの問題がありますが、所有者が不明である以上、その土地を管理する様に注意することもできません。

その結果、周辺土地の地価にも悪影響を与えることになります。

3.土地の相続登記をしないとどうなる?

所有者不明土地が発生する一番の原因は、相続登記が行われないことです。相続登記をしないとどのような問題が生じるのでしょうか。

権利関係が複雑になる

相続登記をしないと、さらに相続が発生して権利関係が複雑になることがあります。

例えば、親→長男・次男にと土地が相続されたケースで、相続登記をする前に長男が死亡した場合、次男と長男の相続人が土地の相続人となります。

このように、相続が連続して発生することを数次相続といいます。

数次相続が何度も発生すると、相続人がネズミ算式に増えていくため、土地の相続人を調査するだけでも時間がかかってしまいます。また、権利関係者が多くなる分、土地を誰が所有するか話し合いをしてもまとめるのが困難です。

そのため、土地に相続が発生したら、放置せずに早い段階で相続登記を行う必要があります。

2024年4月1日以降は罰金が科せられる

さらに、令和6(2024)年4月1日以降は、相続登記をしないまま放置すると罰則が科せられる恐れがあります。

所有者不明土地の原因である相続登記の未了は、相続登記をしなくても特に罰則などがなかったことにも原因がありました。そこで、対策として法改正により相続登記が義務となりました。

その内容は、2024年4月1日以降、相続があったことを知った日から3年以内に相続の登記をしなければなりません。これは、2024年4月1日より前に相続があった場合でも、同日より3年以内に相続の登記をする必要があります。

そして、この相続登記の申請義務を、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料に処すこととすると定められました。

※ 正当な理由があると考えられるのは次のようなケースです

  • 数次相続が発生して、相続人調査や必要書類の収集に多くの時間を要する
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている
  • 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある

4.土地を相続したくないときの選択肢

これまで相続登記があまり行われてこなかったのは、使い道・価値のない土地についてお金をかけてまで相続登記をしたくない、というケースも一因ですが、相続登記の義務化により、たとえそのような土地であっても相続登記をする必要があります。

そうであっても、使い道・価値のない土地を所有し続けたくないという方もいるはずなので、最後に、土地を相続したくない場合の対処法を紹介します。

相続放棄する

相続放棄をすれば相続権を失うため、土地を相続する必要はなくなります。

ただし、相続放棄は、相続財産すべての相続権を失うことになるため、土地以外には価値のある財産が存在する場合でも、土地だけ相続放棄をすることはできません。

そのため、相続放棄をする場合は、土地のマイナス価値とほかの財産のプラスの価値を比較して慎重に検討してください。

なお、相続放棄をしても、他の相続人が土地を管理できるようになるまで、その土地を管理する義務は残るため、相続放棄をしたら終わりではなく、ほかの相続人とも相続財産の管理について話し合う必要があります。

特に、相続放棄により相続人がいなくなった場合は、裁判所に相続財産管理人の選任を申立て、相続財産を管理してもらうことになります。その場合、申立て費用に加え、相続財産を管理するために必要な費用、相続財産管理人の報酬を納付することになります。

※相続放棄は、原則として相続があったことを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。

相続後に売却する

相続したあとに土地を売却できれば、土地を管理する負担は免れます。

仲介業者に土地の買主を探してもらう方法(仲介)、不動産会社に土地を直接か買取してもらう方法があります(買取)。

相続後に寄付または譲渡する

自治体に寄付、または個人に譲渡するという方法もあります。

ただし寄付により、自治体は土地からの固定資産税を失うことになるため、寄付を受け付けてもらえる可能性は高くありません。

個人に譲渡する場合は相手先を探す必要がありますが、可能性があるのは、その土地の隣地所有者でしょう。土地を合わせることにより価値が出るケースがあるためです。

相続土地国庫帰属制度を利用する

令和5(2023)年4月27日以降であれば、相続土地国庫帰属制度を利用する方法もあります。

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して、その権利を国に帰属させる制度です。

この制度を利用するためにはいくつかの条件があり、以下の一つにでも当てはまる場合は申請が却下されます。

  • 建物がある
  • 担保権や使用収益権が設定されている
  • 他人の利用が予定されている
  • 特定の有害物質によって土壌汚染されている
  • 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある

なお、この制度の承認を受けた場合、土地の管理費用10年分相当の負担金を納付する必要があります。

5.まとめ

以上が、所有者不明土地に関する問題点や対処法です。

相続放棄を放置すると罰則が科せられることになります。また、土地の管理不足により近隣住人被害が及んだ場合、管理責任を問われ損害賠償を請求させるケースもあります。

土地の相続について、土地を相続したあとの処分についてお悩みの方は、一度司法書士になどの専門家にご相談ください。

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所属 司法書士法人みどり法務事務所 東京司法書士会 会員番号 第6475号 認定番号 第901173号 資格 司法書士

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