相続登記申請書の書き方は?具体的な項目や記載例、綴じ方を紹介!
2024.04.01 相続登記(名義変更)土地や家を相続して相続登記をするとき、登記申請書の書き方や添付書類に間違いがあると、手続きがやり直しになって時間がかかることがあります。相続登記で余計な手間や時間をかけないためには、登記申請書の書き方や綴じ方、必要書類について事前に確認した上で手続きをすることが大切です。
この記事では、不動産を相続して名義変更をする際に登記申請書で記入する項目や記載例を紹介します。登記申請書以外に必要になる書類や法務局に提出するときの綴じ方も解説するので、相続登記をするときの参考にしてください。
目次
相続登記申請書とは
相続登記申請書とは、不動産を相続した時の相続登記の申請で必要な書類です。相続登記申請書は、不動産を相続する相続人が自分で作成するか、不動産登記の専門家である司法書士が作成するかのどちらかです。書類はパソコン・手書きのどちらかで作成します。ただし、手書きの場合、書き間違いなどが発生する可能性があるので、パソコンで作成する方が望ましいです。なお、申請書はA4用紙を準備し、登記申請書の上部5~7センチは法務局が利用するので、空白のスペースを作っておきましょう。
相続登記申請書の用紙は、以下の法務局のサイトからダウンロードできます。
法務局|不動産登記の申請書様式について
相続登記申請書に記載すべき内容
法務局では、相続登記申請書のサンプルを用意しています。
以下の記載例は、遺産分割協議に基づいて相続登記をするケースの申請書の書き方を示したものです。
今回は、このサンプルをもとに相続登記申請書に記載すべき内容について説明します。
出典:法務局「所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」
「登記申請書」という言葉
用紙のはじめには、登記申請書と記載しましょう。
登記の目的
登記の目的は、被相続人が当該不動産をどのように所有していたかによって異なります。
例えば、一つの不動産を一人の相続人が丸ごと所有していた場合、「所有権移転」となります。また、一つの不動産を複数名で共有していた場合には、「(被相続人の氏名)持分全部移転」です。
日付・原因
日付は被相続人が亡くなった日を記入します。原因は登記をする理由に応じて売買や贈与などと記入する欄です。相続による登記の場合は相続と記入しましょう。
被相続人と相続人
被相続人の名前、相続人の名前・住所・電話番号を記載し、相続人の氏名の横に押印します。
例えば、一つの不動産を相続人が共有で相続する場合は、持ち分についても記載しましょう。なお、申請書に押印する印鑑は認印で問題ありません。
添付情報
相続登記申請書に添付して一緒に提出する書類(添付情報)が何か記入します。登記原因証明情報(※1)と住所証明情報(※2)を記入することが一般的です。
(※1)登記原因証明情報とは、登記の原因となる事実とそれに基づき権利変動が生じたことを証明する書類のことです。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、遺言書などが登記原因証明情報に該当します。
(※2)住所証明情報とは、住民票の抄本や戸籍の附票の写しを指します。
なお、申請書には添付情報としての記載は要しませんが、登録免許税(後述)の計算根拠として固定資産税評価証明書等もあわせて添付する必要があります。
返却書類の送付方法について
相続登記完了後、どのように登記関係の書類を返却してほしいかの希望を記載します。郵送を希望する場合には、どの住所に返却してもらうかも記載しましょう。
なお、相続登記が完了すると、申請された登記が完了したことを通知する「登記完了証」と 「登記識別情報通知書」を受領します。登記識別情報は、土地や建物の登記名義人となった人ごとに定められたアラビア数字と英字の組み合わせからなる12桁の符号です。この情報を知る人は、不動産の登記名義人のみなので、誰にも知られないように金庫などに保管するといいでしょう。
また、登記識別情報の通知を希望しない場合にも一言添えましょう。
管轄法務局・申請年月日
相続登記申請書は、不動産を所有するエリアを管轄する法務局に提出する必要があります。どこが管轄の法務局になるのかは、法務局のホームページから確認しましょう。申請年月日は、法務局に相続登記申請書を送付・提出する日を記載します。
課税価格・登録免許税
相続登記をするためには、登録免許税の支払いを行います。
登録免許税とは、課税価格(※)に0.4%を乗じた金額から100円未満(下2桁)を切り捨てた金額のことです。
(※)相続登記の対象となるすべての不動産の固定資産税評価額の合計額から1000円未満(下3桁)を切り捨てた金額のこと
例えば、固定資産税評価額3,000万円の不動産を相続する場合、12万円の登録免許税が必要です。相続登記申請書には、課税価格(固定資産税評価額)と登録免許税を記載します。
相続する不動産の内容
相続する不動産の内容を登記事項証明書から記載します。
登記事項証明書は法務局で取得できる書類です。法務局で発行申請をする場合、土地であれば所在地番、建物であれば家屋番号が必要になるので、所在地番や家屋番号が分からない場合はあらかじめ固定資産評価証明書等を入手しておきましょう。
相続する不動産が土地の場合、下記の内容を記載します。
- 不動産番号
- 所在
- 地番
- 地目
- 地積
相続する不動産が建物の場合、下記を記載します。
- 不動産番号
- 所在
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
相続する不動産がマンションの場合、下記を記載します。
- 不動産番号
- 一棟の建物の表示:マンションの所在・マンションの名称
- 専有部分の建物の表示:家屋番号・種類・構造・床面積
- 敷地権の表示:符号・所在と地番・地目・地積・敷地権の種類・敷地権の割合
出典:法務局 <記載例>
相続登記申請書以外で相続登記(またはその準備)に必要な書類
相続登記では、申請書以外にも用意すべき書類が複数あります。ここでは、申請書以外にどんな書類が必要になるかを説明しましょう。
被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍
遺産分割協議に基づいて相続登記をする場合、被相続人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本(除籍謄本や改正原戸籍)を使用します。
何度か引っ越しや婚姻の関係で転籍を繰り返している場合には、謄本が多くなるので専門家に取得を依頼したほうがスムーズです。遺言書に基づいて相続登記をする場合は、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本を用意します。
法定相続人全員の戸籍謄本
遺産分割協議に基づいて相続登記をする場合、法定相続人全員の戸籍謄本が必要です。相続人であることと、相続人が存命であることを証明するためです。
遺言書に基づいて相続登記をする場合は、不動産を相続する人の戸籍謄本を用意します。
相続関係説明図
相続関係を表す資料として、相続関係説明図の提出も求められます。被相続人と相続人の関係を線で引いて表します。
遺言書・遺産分割協議書
相続は、被相続人が残した遺言書に従い相続をするケースと遺産分割協議を行うケースに分かれます。遺言書による相続なら遺言書、遺産分割協議による相続ならば遺産分割協議の内容を示した遺産分割協議書が必要になります。
相続人の印鑑証明書(遺産分割協議の場合)
遺産分割協議は、相続人同士で遺産分割の内容を話し合います。相続内容が決まったら、相続人全員が納得している証拠として実印を押印します。そのため、遺産分割協議による相続の場合は、実印を確認するために相続人の印鑑証明書を準備しましょう。
被相続人の住民票
登記上の所有権登記名義人と亡くなった方(被相続人)が同一人物であることを証明するために、被相続人の住民票の写し(本籍地の記載あり)が必要です。
財産を引き継ぐ人の住民票
相続人として財産を引き継ぐ人の住民票も、住所確認のために使用します。法定相続分に基づいて相続する場合は、相続人全員がそれぞれの持分に応じて不動産を相続するので全員分の住民票が必要です。
固定資産評価証明書
登録免許税を計算するために、固定資産評価証明書が必要です。固定資産評価証明書に記載されている不動産の評価額は4月1日以降に変わる場合があるので、相続登記申請書を提出する年度の固定資産評価証明書を用意してください。固定資産評価証明書は自治体の窓口で取得できます。
相続税の申告のために固定資産評価証明書を既に取得している場合でも、相続税の申告を3月以前に、相続登記を4月以降に行うケースでは、相続登記のために固定資産評価証明書を改めて取得し直さなければいけません。
委任状(司法書士に依頼する場合のみ必要)
司法書士に相続登記の申請を依頼する場合には、委任状を提出しなければいけません。
また、不動産を相続する人が仕事で忙しいなど何らかの理由で登記申請を自分で行えず、家族にお願いして手続きを代わりにしてもらう場合にも委任状が必要になります。ただし、未成年者が不動産を相続して親権者である親が代わりに手続きする場合には委任状は必要ありません。法定代理人であれば法律上当然に代理権が認められるからです。
委任状には代理人になる人と代理行為を依頼する人、それぞれの住所や氏名を記入し、代理で登記をしてもらう不動産に関する情報も記載します。委任状を作成したら登記の手続きを委任する相続人が押印してください。押印は認印で構いません。
登記簿謄本(申請の際に添付する必要はなし)
相続登記申請書では登記の対象となる不動産(相続する不動産)の不動産番号や所在地などを記入する必要があります。そのため法務局で登記簿謄本を取得します。
なお、登記簿謄本と登記事項証明書は同じもので、紙のものが登記簿謄本、データのものが登記事項証明書です。
その他
上記はあくまで一般的な添付書類(登記簿謄本を除く)です。
事案に応じて、権利証など別途添付が必要になることもありますので、法務局や司法書士にお尋ねください。
相続登記申請書の綴じ方
相続登記申請書を作成して必要書類を用意できたら法務局に提出します。その際の書類の綴じ方ですが、登記申請書を一番上にして以下の順番で並べるのが一般的です。
- 登記申請書、収入印紙貼付台紙
- 委任状(代理で申請する場合)、相続関係説明図
- 原本の返却を希望する書類のコピー
- 原本の返却を希望する書類の原本
申請人が原本の返却を希望する書類については、原本の還付請求をすることで返却を受けられます。原本の還付請求をする場合、返却を希望する書類のコピーを作成して、そのコピーに「原本に相違ありません。」と記載の上、申請書に押印した人がそのコピーに署名押印したものを申請書に添付して原本と一緒に提出します。複数枚にわたるときは各用紙のつづり目ごとに契印を押します。
なお、委任状、登記申請のためだけに作成した書類や印鑑証明書は、原本の還付をすることはできませんのでご注意ください。
相続登記申請書類の提出方法
相続登記申請書類を提出する方法は、3つあります。
窓口
法務局の窓口に直接相続登記申請書類を提出する方法です。近くに管轄法務局がある場合には窓口に持ち込むのが早いです。また、書き方や綴じ方など分からないことがあれば職員に直接確認できるのもメリットといえます。
郵送
相続登記申請書および添付書類を管轄法務局に郵送する方法も一つです。送付にあたっては、届いたかを確実にするために書留かレターパックなどを利用しましょう。普通郵便は追跡できないからです。なお、投函してから到着までに数日かかるので、急いで手続きを進めたい場合には、直接窓口に持ち込むことをおすすめします。
オンライン
オンラインでも相続登記の申請ができるようになりました。登記・供託オンライン申請システムのホームページで申請者情報を登録することで申請ができます。ただし、原本の提出が必要な書類は窓口・郵送での提出になるので注意しましょう。
また、オンライン申請は主に登記の専門家である司法書士が使う申請方法であり、知識がない人がするのは難易度が高いので、自分で申請するのであれば窓口か郵送が無難です。
相続登記申請書を自分で作成するメリット
相続人が自分で相続登記申請書を作成するメリットは、司法書士に支払う報酬を支払わなくてもいいことです。相続登記で司法書士に支払う報酬の平均は7万円~15万円といわれています。
また、複雑な相続内容や、相続不動産の単価が高くなれば報酬額も上がります。そのため、都心部に相続財産を保有している場合、司法書士へ支払う報酬は10万円を超えることもあるでしょう。
この報酬を支払いたくないのであれば、自分で相続登記申請書を作成して申請まで行った方がいいといえます。
相続登記申請書を自分で作成するデメリット
相続登記申請書を自分で作成するデメリットは、手間と時間がかかることです。
ほとんどの人が相続に対する知識がないと思います。しかし、相続登記申請書を作成するためには、相続に関する手続きについて一から調べる必要があります。登記申請書の書き方や綴じ方、添付書類についても調べなければいけません。
知識が曖昧なまま作成すれば、時間がかかりすぎてしまったり、誤った内容で作成してしまったりするでしょう。修正が何度か発生すると、手続き完了までに多くの時間を費やすことになります。そのため、作成に自信がない場合には、相続登記申請書は初めから専門家に依頼したほうがいいでしょう。
相続登記を専門家に任せたほうが良いケース
相続登記を専門家に任せた方がいいケースとしては、相続不動産が多い場合です。複数の不動産を登記すると書類の内容も複雑になるので、専門家に任せてしまった方が確実に手続きを進められておすすめです。
また、相続登記を完了したい期限が決まっている場合も専門家に任せた方がいいでしょう。
2023年4月3日現在、相続登記は任意であり、期日も設定されていません。ただし、2024年4月1日には相続登記申請が義務化され、違反すると相続人ひとりあたり10万円以下の過料に処せられる可能性があります。
また、相続不動産を売却して相続税の支払いに利用したいという方もいます。相続税の支払いは、被相続人が亡くなった日の翌日から10カ月以内なので、相続不動産を売却したお金で相続税を支払いたいのであればなるべく早く手続きを進めるべきといえます。
特に、相続人間で遺産分割協議を行う場合、相続財産が決定するまでに時間がかかることもあるでしょう。そのため、相続内容が決まったときにはほとんど時間が残されていないケースもあります。専門家に任せれば、書類の収集・相続登記申請書の作成・提出を任すことができるので安心です。特に仕事で忙しく、調べる時間を取れない人にとっては、専門家に任せてしまった方が精神的にも楽になるでしょう。
相続登記を専門家に任せるメリット
相続登記では、手続きにあたり集める書類が複数ありますが、専門家に任せれば相続登記申請書の作成から提出までスムーズに終えられるのがメリットです。
例えば、相続登記では被相続人の出生から亡くなるまでの連続した、戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍を集めます。法定相続人が誰かを確定させるために必要になるのですが、素人の場合は法定相続人を見落とす可能性があるでしょう。法定相続人が足りない状態でその他資料を用意すれば、申請時に書類内容が誤っていると修正を依頼されるだけではなく、見落としていた法定相続人を含め、改めて遺産分割協議をやり直す必要があります。不動産相続登記のプロフェッショナルである司法書士に依頼すれば、このような事態を避けることができるでしょう。
また、遺産分割協議で揉めてしまいなかなか相続内容が決まらない場合も、経験豊富な司法書士に聞けばアドバイスをもらえるでしょう。協議の仲裁はできませんが、過去の事例を紹介してくれるなどして相続人間だけで話し合うより前進しやすいです。この点も専門家に任せるメリットといえます。
専門家を選ぶ場合には、不動産登記の実績が豊富か、分かりやすく説明してくれるか、どこまでが依頼できる仕事範囲になるかなどを確認して決めましょう。
まとめ
相続登記申請書は、法務局でもサンプルが用意されており、それに従えば相続人でも作成することができます。法務局のサイトでは相続登記申請書の用紙だけでなく記載例もダウンロードできるので、書き方を確認する際に活用してください。
ただし、相続登記ではたくさんの資料を収集する必要があり、申請書の作成も手間がかかるので、仕事が忙しい方や手続きに不安がある方は相続登記のプロである司法書士に依頼するのをおすすめします。司法書士に依頼すれば、正確かつスピーディーな対応に期待できるでしょう。
司法書士法人みどり法務事務所では相続でお悩みの皆様に、安心でリーズナブルな相続を済ませて頂くために、定額の不動産の名義変更サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする遺産相続に関する各種サービス(ゆうちょ・みずほ・三井住友・三菱UFJ、りそななどの各金融機関の相続に伴う預貯金の解約払戻し、その他相続に関する裁判所提出書類作成サポートなど)を行っています。また、電話や来所での相続相談は無料で承っております。相続に関してお悩みの方はまずはお気軽にお電話ください。
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