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亡くなった方の兄弟が相続人になるのはどんなとき?遺産相続で揉めないためにできることは?

2024.04.01 遺産相続

この記事を監修したのは、

代表 寺島 能史

所属 司法書士法人みどり法務事務所 東京司法書士会 会員番号 第6475号 認定番号 第901173号 資格 司法書士

相続が発生したとき、相続人として思い浮かべるのは「配偶者・子・両親」ではないでしょうか。しかし状況によっては、被相続人(簡単に言うと「亡くなった方」のことです)の兄弟が相続人になるケースもあります。そして、兄弟が相続人になる場合、兄弟間や配偶者との間で揉めることも少なくありません。

どのような状況のときに兄弟が相続人になり、なぜトラブルが起こりやすいのでしょうか。

本記事を読めば、以下のようなことが分かります。

亡くなった方の

● 兄弟が相続人になるケースと注意点
● 兄弟が相続人になるときに知っておきたいこと
● 兄弟が相続人になる相続で揉めやすいケース
● 兄弟が相続人になる相続で争いを回避するためにできること

兄弟の相続人になる可能性がある方は、参考にしてください。

そもそも相続人とは?

「相続人」とは、民法で定められ、被相続人の財産を相続できる人を指します。相続人になれる人は被相続人の配偶者と血族で、次のようにそれぞれ相続順位が決められています。なお、配偶者は常に相続人です。

第一順位:子および代襲相続人

第二順位:両親等の直系尊属

第三順位:兄弟姉妹および代襲相続人

順位を見て分かるように兄弟姉妹の相続順位は、第三位と血族の中では一番低い位置にあります。

被相続人の兄弟が相続人になるケース

被相続人の兄弟が相続人になるケースは、2パターンあります。

➀兄弟姉妹のみが相続人になるケース

兄弟姉妹のみが相続人になるのは、被相続人に配偶者や子がおらず、被相続人の両親・祖父母がすでに他界している場合です。

兄弟間で相続をする際には、どのような分割方法になるのでしょうか。具体例を見てみましょう。

2人兄弟の場合:残りの兄弟 1人がすべての財産を相続する

3人兄弟の場合:残りの兄弟 2人で財産を2分割し、それぞれが相続する

兄弟が2人以上いるときには、財産を兄弟の人数で分割します。

➁配偶者および兄弟姉妹が共同相続人になるケース

配偶者および兄弟姉妹が共同相続人になるケースは、被相続人に配偶者はいるが子はおらず、被相続人の両親・祖父母ともに他界しているときです。配偶者・兄弟の法定相続分を見てみましょう。

配偶者:財産の3/4

兄弟:財産の1/4

被相続人に配偶者がいる場合には兄弟の法定相続分は「財産の1/4」となり、1/4の財産をさらに残された兄弟の人数で分割することになります。残された兄弟が2人ならば、それぞれ「1/8」ずつ財産を相続する計算です。

しかし、このパターンで兄弟が法相続人になる場合は、財産をめぐってトラブルになることも少なくありません。相続のトラブルを回避する方法については、後ほど説明します。

相続人となる兄弟がすでに他界している場合は代襲相続に

ここまでの説明で、何度か「代襲相続」という言葉が出てきました。

代襲相続とは、本来相続人となるはずだった「子」または「兄弟姉妹」がすでに他界している場合、その者の「子」が代わりに財産を相続することです。なお、被相続人の両親が他界している場合には祖父母が相続人になりますが、この場合は代襲相続とは言いません。

例えば、被相続人が独身で子もおらず、両親・祖父母ともに他界している場合の相続人は兄弟です。しかし、残された兄弟もすでに他界している場合には、兄弟の子が代わりに財産を相続することになります。このような相続方法を「代襲相続」と言います。

被相続人の兄弟が相続人になるときに知っておきたいこと

ここまで、亡くなった方の兄弟が相続人になるパターンについて説明してきました。

そして兄弟が相続人となる場合に、必ず知っておきたいのが「兄弟には遺留分がない」ということです。ここでは、遺留分について説明していきます。

遺留分とは?

「遺留分」とは、法定相続人が最低限の遺産を確保できる権利のことです。もし遺言等によってその権利を侵害された場合、「遺留分侵害額請求」を行えば遺留分に相当する金額を取り返すことができます。

遺留分は「法定相続分の1/2(両親または祖父母が相続人の場合は1/3)」です。被相続人に配偶者と子2人がいる場合には、配偶者の遺留分は財産の1/4、子はそれぞれ/1/8ずつになります。

しかし、被相続人の兄弟には遺留分がありません。遺留分が認められていない理由には、以下の2つが挙げられます。

  • 被相続人との関係が遠い
  • 兄弟(姉妹)には代襲相続があるから

兄弟には代襲相続があるため、亡くなった方からみると遠い親戚である甥や姪が財産を相続する可能性も出てきます。その場合、兄弟に遺留分を認めていると甥や姪にまで遺留分が発生することになり、被相続人が作成した遺言の効力が一部否定されてしまう恐れもあります。

「それは遺言を作成した遺言者にとって酷なのではないか?」という理由により、兄弟(姉妹)には遺留分を与えないとされています。遺留分がないと、どのような問題があるのでしょうか。

遺留分侵害額請求をできない

遺留分を侵害されたら、遺留分侵害額請求によって遺留分に相当する金額を取り返せると説明しました。しかし兄弟には遺留分がないので、遺留分侵害額請求をすることはできません。

兄弟が法定相続人となる場合、仮に遺言書に「恋人にすべての財産を遺贈する」と書かれていたとしても成す術がないということです。

被相続人の兄弟が相続人になる遺産相続で揉めやすいケース

兄弟が法続人になる場合には、通常の相続と比べてトラブルが起こりやすいといわれています。では実際に兄弟の相続によってトラブルが発生するのは、どのようなケースがあるのでしょうか。

代表例を2つ見ていきましょう。

➀配偶者との相続協議が進まない

配偶者と被相続人の兄弟姉妹が共同相続人になる場合、話し合いがうまくまとまらないことがあります。配偶者と被相続人の両親が相続人になる場合には、被相続人の両親が自分の子の配偶者と争ってまで財産がほしいというケースはなかなかありません。

一方で被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合には、配偶者との心理的距離感が遠いため「もらえるものはもらいたい」「もらう権利がある」と考える方も多いです。

その場合、配偶者と被相続人の兄弟姉妹間で相続に関する話し合いが難航し、最終的に訴訟になってしまうことも珍しくはありません。

➁把握していない兄弟がいた

被相続人の兄弟が相続人になる場合には、相続人を確定するために被相続人と両親の戸籍謄本からすべての兄弟姉妹を調べます。

この過程で把握してない兄弟姉妹がいることが発覚した場合、トラブルに発展することが多いです。この時点での兄弟姉妹の発覚には「両親に隠し子がいた」「父は前妻との間にも子がいた」「家族に秘密で養子縁組をしていた」などが挙げられます。

このような場合、存在が発覚した兄弟姉妹は全員法定相続人になります。面識のない者同士で話し合いをするだけでなく、想定外の兄弟姉妹がいることによって相続分も減るので争いは避けられないでしょう。

兄弟が相続人になる遺産相続で争いを回避するためにできること

兄弟が法定相続人になる場合、さまざまなトラブルが起こり得ることが分かりました。では、遺産相続で争いを回避するためにできることはあるのでしょうか。

兄弟が法定相続人になる場合のトラブル対策を2つ紹介します。

➀遺言書を書いてもらう

遺言書で遺産分割の方法を指定しておけば、遺言書に書かれている内容が最優先されます。そのため、兄弟間で遺産分割協議を行う必要もなくなるので、トラブルを防ぐ方法として有効と言えるでしょう。

特に兄弟が相続人になる可能性がある場合、前項でも説明したように「把握していない兄弟姉妹の存在」によって相続が円滑に進まない恐れもあります。

相続発生時に揉めないためにも「財産はAとBに半分ずつ相続させる」「不動産はAへ、現金はBへ相続させる」のように、法に沿った方法で遺言書を書いてもらいましょう。

➁専門家に相談する

相続に関して不安な点がある場合には、専門家である弁護士や司法書士などに相談するのも一つの方法です。

兄弟には遺留分がないので、遺言の内容によっては兄弟間または被相続人の配偶者とトラブルに発展する可能性もあります。相続によるトラブルがすでに発生している、揉めることが予想される場合には、専門家に相談して対処を任せた方が良いでしょう。

被相続人の兄弟が相続人になる場合の注意点

亡くなった方の兄弟が相続人になる場合には、以下の3点に注意しましょう。

➀代襲相続は1代(姪・甥)まで

相続人である兄弟が相続発生時にすでに他界している場合、その者の子が財産を相続できることを説明しました。

代襲相続は本来、子、孫へと代襲していくものですが、兄弟が法定相続人である場合に代襲相続を行えるのは、その子1代までとなります。

つまり、兄弟が法定相続人になる場合に財産を代襲相続できるのは、被相続人から見た「姪・甥」までです。

➁相続税額が2割加算される

兄弟が法定相続人になる場合、相続税額が2割加算されます。「相続税の2割加算」とは、配偶者・子・直系尊属以外が法定相続人になる場合は、相続税額が2割増になるという規定です。

兄弟姉妹は2割加算の対象なので、相続税が発生する場合には相続税額が2割増されます。

例えば、相続税額が1,000万円だった場合「1,000万円×1.2=1,200万円」となり、1,200万円の納税が必要です。

しかし、相続税には基礎控除や非課税枠などが設けられており、合法的に相続税を節税する方法も多くあります。相続によって相続税の発生が見込まれる場合には、生前から節税対策について話し合っておくと良いでしょう。

➂戸籍謄本の収集に手間と時間がかかる

兄弟が相続人になる場合、配偶者・子・直系尊属が相続人になるときと比べて、戸籍謄本の収集がとても繁雑になります。

被相続人の兄弟が相続人になる場合には「すべての兄弟姉妹」が相続人になるからです。そのため両親の戸籍謄本まで調べ、認識している兄弟以外にも兄弟姉妹が存在していないか調べる必要があります。

兄弟が相続人になる場合、戸籍謄本の収集に手間と時間がかかることも覚えておきましょう。

まとめ

相続が発生したとき、被相続人に子がおらず、両親と祖父母もすでに亡くなっている場合には、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になります。

ただし、遺言書がある場合には遺言が優先されるため、内容によっては法定相続分を相続できないケースもあります。遺言内容に不満を感じたとしても兄弟姉妹には遺留分が認められていないので、遺留分侵害額請求をすることはできません。

このような理由から、兄弟が相続人になる場合には財産をめぐってトラブルに発展することがあります。兄弟が相続人になる可能性があるときには、当人同士でしっかりと協議することが大切です。話し合いや判断が難しいのであれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

できるだけ兄弟間で揉めず、円滑な遺産相続を行えるように対策を考えましょう。

この記事を監修したのは、

代表 寺島 能史

所属 司法書士法人みどり法務事務所 東京司法書士会 会員番号 第6475号 認定番号 第901173号 資格 司法書士

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