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土地は相続放棄できる?注意点や相続放棄以外の方法を解説!

2023.06.19 遺産相続 土地は相続放棄できる?注意点や相続放棄以外の方法を解説!

この記事を監修したのは、

代表 寺島 能史

所属 司法書士法人みどり法務事務所 東京司法書士会 会員番号 第6475号 認定番号 第901173号 資格 司法書士

土地・家などの不動産を相続した場合、固定資産税の支払いや不動産を管理する義務が生じます。価値のある不動産であればいいのですが、価値のない不動産の場合は所有し続けるだけで負担となってしまいます。

このような負担を避けるために、土地・家などの不動産の相続放棄はできるのか?また、相続したあとに手放すことはできるのか?本記事ではこの点について解説していきます。

1.相続した土地は相続放棄できる?

財産を全て放棄するのなら相続放棄“できる”

土地や家などの不動産を相続したくない場合、相続放棄をすることができるのか。結論から言えば、不動産であっても相続放棄をすることができます。

ただし、相続放棄とは、相続財産すべての権利を放棄することになるため、土地以外の相続財産の権利も失います。

土地のみを相続放棄することは“できない”

前述の通り、相続放棄をすると相続財産すべての権利を放棄することになるため、土地以外の相続財産には価値があるため、土地だけを相続放棄する、ということはできません。

そのため、相続放棄をする際は、プラスの財産とマイナスの財産の価値を比較して慎重に検討する必要があります。

2.そもそも相続にはどんな方法がある?

【3種類の相続方法】

 

単純承認

限定承認

相続放棄

メリット

相続財産をすべて承継できる

相続財産の限度で債務を負担すればいい

価値のない財産・債務を相続する必要がなくなる

デメリット

マイナスの財産も含めてすべて相続することになる

手続きが非常に複雑

プラスの財産の権利も失う

期間

なし

相続から3カ月以内

相続から3カ月以内

必要な相続人

希望する相続人のみ

相続人全員

希望する相続人のみ

必要な手続き

特になし

家庭裁判所への申告

家庭裁判所への申告

相続には、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類があり、相続が開始した場合は、この3つのいずれかを選択することになります。

まず、相続放棄以外の相続方法についてご説明します。

単純承認

単純承認とは、亡くなった方の権利をすべて相続する方法です。すべての権利を相続するので、土地や現金などの財産はもちろん、借金のようなマイナスの財産も相続することになります。

単純承認については限定承認・相続放棄とは異なり、裁判所に申し出るなどの特別な手続きは必要ありません。ただし、相続財産を一部でも使う・処分してしまうと、法的に単純承認をしたと扱われ、限定承認・相続放棄をすることはできなくなる点には注意してください。

限定承認

限定承認とは、相続した財産の限度で亡くなった方の債務を負担する相続方法です。

単純に言えば、相続財産に5000万円の財産と1億円の借金がある場合、限定承認をすれば借金の負担は5000万円の限度で済むということです。

ただ、限定承認をするには、相続人全員が共同して行う必要があり、さらに、裁判所への申告、マイナスの財産を返済するための清算手続き、準確定申告、譲渡取得税の申告などが必要になり、手続きが非常に複雑になるため、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に依頼せざるを得なくなります。

そのため、限定承認は、「債務額が不明」、「債務超過だが不動産は残したい」など限定的な場面で選択するべきでしょう。

3.土地を相続放棄するときの注意点

続いて、3つ目の相続方法である相続放棄についてご説明します。

相続放棄するには3か月以内に手続きが必要

相続放棄をするうえで特に注意すべきは、自身に相続があったことを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があることです。

この3カ月の申述期間を経過してしまうと、単純承認したとみなされ、原則として相続放棄をすることはできなくなります。

例外的に、「相続が発生したこと自体を知らなかった」、「3カ月経過した後に多額の相続債務が見つかった」など、3カ月の間に相続放棄をすることができなかった特別な理由があれば認められる場合はありますが、そのためには、家庭裁判所に十分な説明・資料の提出等をする必要があります。

他の相続人に相続放棄する旨を伝える

相続人が複数いる場合、相続放棄をするのであれば相続人全員にその旨を伝えてください。相続放棄をした相続人は、はじめから相続人にならなかったと扱われるので、他の相続人の相続割合が変わり、遺産分割協議の内容に影響を及ぼします。

また、場合によっては、相続放棄により新しい相続人が発生するケースもあります。

相続人の優先順位は次のようになるのですが、   

  • 子供
  • 親、祖父母などの直系尊属
  • 兄弟姉妹

  ※配偶者は常に相続人となる

相続放棄により先順位の相続人がいなくなれば、相続権は次順位の相続人に移行します。家庭裁判所から次順位の相続人に連絡がいくことはないため、知らぬ間にマイナスの財産を相続していた、という事態にならないために、相続放棄をする場合は必ず伝えましょう。

放棄後も引き継ぎ人が見つかるまでは管理義務が残る

相続放棄をすれば土地などの財産を相続する必要はなくなりますが、それらを管理する義務は残ります。

なお、後述しますが、相続財産管理人が選任されれば、相続財産を管理する必要はなくなります。

4.土地を相続放棄するときに必要な書類

続いて、相続放棄をするうえで必要な書類についてご説明します。

基本的に、必要な書類は以下の通りです。

 

費用

相続放棄申述書

800円(収入印紙)

相続放棄をする人の戸籍謄本

450円

亡くなった方の除籍謄本

750円

亡くなった方の住民票の除票
または戸籍の附票

300円

ただ、相続放棄をする人の相続順位によって必要な戸籍の内容が異なるので、詳しくは以下の裁判所のHPを参照してください。

・裁判所による相続放棄の添付書類一連表

https://www.courts.go.jp/sendai/vc-files/sendai/2020/shosiki/02tenpushorui.pdf

5.土地を相続放棄する手順

続いて、相続放棄をする手順についてです。

期限を確認する

相続放棄の期限は、自身に相続があったことを知った日から3カ月以内です。基本的には被相続人が亡くなった日を基準とするため、そこから3カ月以内に裁判所に申告ができるよう進めていく必要があります。

相続放棄する旨を他の相続人に伝える

繰り返しになりますが、まずはほかの相続人、または相続放棄によって新たに相続人になる人に、自身が相続放棄をすることを伝えてください。

相続放棄の申述書を作成する

相続放棄の申述書に必要事項を記載します。

以下の裁判所のHPに、申述書のひな形と申述書の記載例が載っているので、これを参考に記載してください。

・裁判所による申述書のひな形と申述書の記載例

https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html

家庭裁判所に書類を提出する

申述に必要事項を記載したら、準備した必要書類を合わせて家庭裁判所に提出します。

なお、裁判所は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所から受理通知書を受け取る

相続放棄が認められれば、裁判所から相続放棄の受理通知書が送付され、手続きは完了となります。

なお、場合によっては、裁判所に申述書等の書類を提出した後、裁判所から相続放棄照会書または相続放棄回答書という書類の記載を求められることがあるため、書類の内容に沿って回答を記載し、裁判所に返送してください。

6.相続人全員が土地を相続放棄したらどうなる?

相続放棄が認められれば、はじめから相続人でなかった扱いとなりますが、相続人全員が相続放棄をしたら、土地や家などの不動産の権利はどうなるのでしょうか。

このようなケースに備え、民法の239条2項では「所有権のない不動産は、国庫に帰属する。」と定められています。

ただし、相続放棄により自動的に権利が国庫に帰属するのではなく、裁判所に相続財産管理人の選任を申立てる必要があります。

相続財産管理人が選任されれば相続財産を管理する必要はなくなりますが、申立て費用に加え、相続財産を管理するために必要な費用、相続財産管理人の報酬を納付する必要があります。

7.相続放棄せずに土地を手放す方法

3カ月の期間を経過したなど、事情により相続放棄ができなかった場合でも、土地や家などの不動産であれば、手放す方法はあります。

売却する

土地を手放す方法としては、まずは売却を検討すると良いでしょう。

自身で買主を見つけるのが困難であれば、仲介業者に土地の買主を探してもらう方法(仲介)、不動産会社に土地を直接か買取してもらう方法があります(買取)。

寄付または譲渡する

自治体に寄付、または個人に譲渡するという方法もあります。

ただ、自治体は、寄付により土地からの固定資産税を失うことになるため、寄付を受け付けてもらえる可能性は高くありません。

個人または企業に譲渡する場合は相手先を探す必要があります。土地を合わせることにより価値が上がることもあるため、手放したい土地の隣地所有者に問い合わせるのがいいかもしれません。

相続土地国庫帰属制度を利用する

令和5(2023)年4月27日以降であれば、相続土地国庫帰属制度を利用する方法もあります。

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して、その権利を国に帰属させる制度です。

この制度を利用するためにはいくつかの条件があり、以下の一つにでも当てはまる場合は申請が却下されます。

  • 建物がある
  • 担保権や仕様収益県が設定されている
  • 他人の利用が予定されている
  • 特定の有害物質によって土壌汚染されている
  • 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある

なお、この制度の承認を受けた場合、土地の管理費用10年分相当の負担金を納付する必要があります。

8.まとめ

相続放棄は、マイナスの財産を相続する必要がなくなりますが、プラスの財産の権利も失うことになるため、慎重に検討する必要があります。

しかし、相続があったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申告する必要があるため、ある程度計画的に進めなければなりません。

場合によっては、限定承認のような複雑な制度の利用も検討することになるため、お悩みであれば一度司法書士や弁護士などの専門家に相談してください。

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