土地の名義変更は自分でできる?司法書士に頼む?費用や必要書類を紹介
2022.12.12 不動産登記土地の名義変更を司法書士に頼まずに自分で行えば、報酬の支払いが不要になって費用をかけずに済みますが、慣れない手続きを自分でやるとミスをして手間がかかる場合があります。
余計な手間をかけないためには「登記を自分でできそうか」「司法書士に依頼すべきか」を最初によく確認しておくことが大切です。この記事では、生前贈与や相続で土地の名義変更を行う場合の手続きの流れや必要書類、費用について解説します。
目次
土地の名義変更が必要になるときとは?
土地の所有者に関する情報は、法務局が管理している登記簿(登記記録)に記載されています。登記簿とは、不動産の所有者や所在地、権利関係などが記載されている帳簿です。
土地の所有者が変わった場合、登記簿(登記記録)に登録されている所有者を変更するために名義変更が必要となります。名義変更のための手続きである登記が必要となる主なケースは、売買・生前贈与・相続・財産分与の4つです。
売買
土地の売買契約が成立し、売買代金の支払いがなされると所有者が売主から買主に変わるので、名義変更をして登記簿上の所有者を買主に変更する必要があります。
法律上は売主・買主が共同で登記の申請を行う旨が定められていますが、実際には不動産会社が仲介していることが多く、不動産会社が紹介してくれる司法書士が登記を行うことが多いです。司法書士の指示に従って必要書類を渡せば、代わりに手続きを進めてくれます。
生前贈与
親から子へ土地を贈与する場合のように、生前贈与によって土地の所有者が変わる場合には名義変更が必要です。贈与する人(贈与者)と贈与される人(受贈者)が共同で登記を申請します。
贈与自体は口頭で合意するだけで成立しますが、登記簿上の所有者が贈与者のままだと受贈者は第三者に対して自分が所有者であることを対抗できず、不利益を被る可能性があります。そのため、土地の贈与を受けた場合には、名義を変更して所有者として登記簿に登録しておくことが必要です。
相続
土地の所有者が死亡した場合、所有者が「被相続人」から「相続人」に変わるので、名義変更が必要です。よくあるのが亡くなった親の土地の名義変更が必要となるケースです。遺言がある場合は遺言で指定された人が土地を相続し、遺言がなく相続人が複数人いる場合は、遺産分割協議を行って誰が土地を相続するのか決めることになります。
一般的に登記は新旧の所有者が共同で申請しますが、相続登記の場合は元の所有者は既に死亡していて手続きができません。そのため土地を相続する人が登記の手続きを行います。
財産分与
離婚する際に夫婦間で財産を分ける財産分与でも、土地の名義変更が必要になる場合があります。例えば、夫名義の土地を妻が取得するようなケースです。
協議離婚の場合は、財産分与をする人と財産分与を受ける人が共同で登記の申請をする必要があります。離婚届の提出後に登記申請をする際、相手と連絡が付かず書類の準備で困る場合があるので、離婚の協議をする中で登記申請の準備もしておくほうが良いでしょう。
調停、審判、訴訟など裁判上の離婚の場合は、調書や判決書を法務局に提出することにより、財産分与を受ける人が単独で登記申請できることがあります。
土地の名義変更をするときの手続きの流れ
土地の名義変更をするときには、必要書類の取得や登記申請書の作成などが必要になります。以下では手続きの流れを紹介するので、自分でできそうか確認してみましょう。自分で行うのが難しそうな場合は、司法書士に相談するようにしてください。
必要書類を揃える
法務局で登記をする際、必要になる主な書類は以下のとおりです。登記をする理由が売買・生前贈与・相続・財産分与のいずれかによって必要書類が異なります。
| 必要書類 |
売買 | 【売主】 ・登記済権利証(又は登記識別情報通知) ・印鑑証明書 ・固定資産評価証明書 【買主】 ・住民票 【その他】 ・売買契約書 |
生前贈与 | 【贈与者】 ・登記済権利証(又は登記識別情報通知) ・印鑑証明書 ・固定資産評価証明書 【受贈者】 ・住民票 【その他】 ・贈与契約書 |
相続 | 【遺言に基づいて相続する場合】 ・固定資産評価証明書 ・遺言書 ・被相続人の死亡時の戸籍謄本、住民票の除票 ・不動産を相続する人の戸籍謄本、住民票 【遺産分割協議に基づいて相続する場合】 ・固定資産評価証明書 ・遺産分割協議書 ・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、住民票の除票 ・すべての相続人の戸籍謄本、印鑑証明書 ・不動産を相続する相続人の住民票 【法定相続分で相続する場合】 ・固定資産評価証明書 ・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、住民票の除票 ・すべての相続人の戸籍謄本、住民票 |
財産分与 | 【旧名義人】 ・登記済権利証 ・印鑑証明書 ・固定資産評価証明書 【新名義人】 ・住民票 【その他】 ・離婚協議書、財産分与契約書 ・戸籍謄本 |
固定資産評価証明書は登記をする年度のものを用意します。印鑑証明書は、発行後3ヶ月以内のものが必要になるケースがあるので注意してください。
財産分与に伴う登記で戸籍謄本を提出する場合は、離婚の事実が分かる必要があるので離婚届の提出後に取得した戸籍謄本を用意します。
登記申請書を作成する
登記申請書の用紙は法務局のサイトからダウンロードできます。売買・生前贈与・相続・財産分与それぞれのケースにおける記入例も掲載されているので確認してみてください。
以下は、生前贈与で登記をする場合の記入例です。
出典:法務局「不動産登記の申請書様式について」
[課税価格]
固定資産評価証明書に記載されている、固定資産評価額の千円未満を切り捨てた金額を記入します。
[登録免許税]
登録免許税の税額は、課税価格に税率をかけて計算します。税率は売買や生前贈与、財産分与では2%、相続では0.4%です。2,000万円の土地の贈与であれば税率2%で、40万円の登録免許税がかかります。
[不動産の表示]
登記事項証明書に記載されている内容を転記して記入します。登記事項証明書が手元にない場合は、法務局で手続きを行って取得しておきましょう。
管轄の法務局に提出する
登記の手続きができるのは、対象となる土地がある地域を管轄する法務局です。管轄の法務局が分からない場合は、以下のサイトで検索できます。
法務局:管轄のご案内
登記の申請方法には、窓口申請・郵送申請・オンライン申請の3つの方法があります。このうちオンライン申請は、主に司法書士が使う方法で、一般の方が自分でやる場合は窓口か郵送で申請することが多いです。
法務局が開いている時間は、平日の午前8:30~午後5時15分です。法務局の窓口で手続きをする場合は、開庁時間内に行きましょう。
登記識別情報通知を受け取る
登記の申請後、手続き完了までの期間は法務局の混雑状況で変わりますが、書類不備がなければ一般的に1~2週間で手続きが完了します。そして、登記識別情報通知(権利証)を受け取れば一連の手続きは終了です。登記識別情報通知(権利証)は紛失しても再発行されないので、大切に保管するようにしてください。
土地の名義変更でかかる主な費用
土地の名義変更でかかる主な費用は、必要書類の取得費用と税金の2つです。司法書士に依頼する場合は、司法書士に支払う報酬も費用としてかかります。
必要書類の取得費用
土地の名義変更で必要になる主な書類の取得費用は、以下のとおりです。
- 固定資産評価証明書:1通200~400円程度(自治体による)
- 戸籍謄本:1通450円
- 住民票:1通300~400円程度(自治体による)
- 印鑑証明書:1通200~400円程度(自治体による)
- 登記簿謄本:1通600円(申請方法による)
必要になる書類の種類や枚数はケースによって異なりますが、取得費用として一般的に数千円から1万円前後かかります。
税金(登録免許税や贈与税、相続税など)
前述のとおり、登記では登録免許税がかかります。不動産取得税は売買や贈与で土地を取得する場合にはかかりますが、相続ではかかりません。
土地の生前贈与では、年間110万円を超える額に対して税率10%~55%で贈与税がかかり、贈与額が大きいほど税率が高くなります。
ただし、夫婦間の土地の贈与で配偶者控除を使える場合は2,000万円まで税金がかかりません。配偶者控除を使えるのは、婚姻期間が20年以上であることや贈与財産が居住用不動産であることなど、一定の条件を満たす場合です。
相続で土地を取得する場合は相続税の課税対象となりますが、遺産額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。
基礎控除額とは「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算した金額で、土地以外の遺産と合わせた遺産総額がこの金額以下であれば相続税はかからずに済みます。
司法書士に支払う報酬(専門家に依頼する場合)
多くの司法書士事務所では、登記する物件の数や収集した戸籍謄本通数等によって報酬額が変わります。報酬の体系や金額は司法書士事務所ごとに異なるので、司法書士に依頼する際はよく確認するようにしてください。
相続登記であれば司法書士に支払う費用は「7~15万円」が相場といわれています。
土地の名義変更をするときの注意点
必要書類に漏れがあると受け付けてもらえず、手続きに時間がかかることがあります。余計な手間をかけないためにも、必要書類の種類は最初の段階でよく確認しておきましょう。
土地の名義変更で一般的に必要になる書類は前述のとおりですが、ケースによっては追加で書類が必要になる場合があります。手続きで何の書類が必要になるのか分からない場合は、司法書士に相談するようにしてください。
手続きの期限にも注意が必要です。相続税がかかる場合は10ヶ月以内に、贈与税がかかる場合は翌年2月1日~3月15日に、それぞれ申告をしなければいけません。申告期限を過ぎると延滞税や無申告加算税を課されてしまいます。
登記に関して2022年10月時点では原則として期限はありませんが、登記をしないと売却や不動産担保の借入ができないなど困ることがあるので、名義変更が必要な場合には速やかに手続きを済ませてください。
もっとも、2024年4月以降は法改正により相続登記が義務化さるので、不動産を相続した場合には原則として3年以内に登記をしなければなりません。詳細につきましては「相続登記が2024年(令和6年)4月1日から義務化!手続きを専門家に依頼すべき理由は?」をご参照ください。
土地の名義変更は自分でできる?司法書士に依頼すべき?
土地の名義変更は、自分で行うことも司法書士に依頼することもできます。どちらにするか迷った場合は、以下で紹介するそれぞれのメリット・デメリットを踏まえて決めるようにしてください。
自分で行えば費用は抑えられるが手間がかかる
自分で行えば、司法書士に支払う報酬がかからずに済み、費用を抑えられる点がメリットです。ただし、市区町村役場や法務局は平日しか開いていないので、平日に仕事がある人は仕事を休んで手続きをしに行かなければいけません。
また登記に慣れていない人が自分でやろうとすると途中でミスをして、手続き完了までに時間がかかる場合があります。
司法書士に任せればミスなくスムーズに手続きを終えられる
司法書士に手続きの代行を頼むと費用はかかりますが、必要書類の取得から登記申請まですべて任せれば、自分でやる場合のような手間はかからず負担を軽減できます。
また、専門家に任せることでミスなくスムーズに土地の名義変更を終えられる点もメリットのひとつです。慣れていない人が自分で手続きをすると書類の不備等で、時間がかかる場合がありますが、司法書士に依頼すればそのような心配はありません。一般の人には対応が難しく複雑な場合でも、司法書士であれば安心して任せられます。
まとめ
売買や生前贈与、相続などで土地を取得すると、名義変更が必要になります。また、上記の話は土地だけでなく、家などの建物の名義変更も全て同様です。
登記は自分でもできますが、必要書類を揃えたり書類を提出したりする手間がかかるので、手間や時間をかけたくない場合は司法書士にすべて任せることも選択肢のひとつです。専門家に代行を頼むと費用はかかりますがミスなくスムーズに手続きを終えられます。
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