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遺産分割とは?手続きの流れや遺産分割協議書の書き方、揉めたときの対処法を紹介

2023.03.30 遺産相続

この記事を監修したのは、

辻本 歩

所属 司法書士法人みどり法務事務所 愛媛県司法書士会 会員番号 第655号 認定番号 第1212048号 資格 司法書士

家族が亡くなり相続が起きると、相続人の間で遺産をどのように分けるのか、遺産分割について話し合って決める必要があります。遺産を分割して相続するためには、遺産の分け方にどんな方法があるのか、必要な手続きは何か、理解しておかなければいけません。

この記事では、遺産分割の方法や手続きの流れ、遺産分割協議書の書き方、揉めたときの手続きである調停・審判について紹介します。いずれも遺産を相続する人にとって必要な知識ですので、相続の基本をしっかりと押さえるようにしましょう。

遺産分割とは

「遺産分割」とは文字通り「遺産を分けること」です。相続人が1人の場合はその人が遺産を相続し、2人以上いても遺産の分け方が全て遺言書で指定されている場合は遺言どおりに遺産を分けますが、相続人が2人以上いて遺言書が残されていないケースでは、遺産の分け方を相続人で話し合って決める必要があります。

遺産の分け方を決める話し合いが「遺産分割協議」で、遺産を相続する人にとっては、他の相続人と話し合って自分が遺産をどれだけ相続するのかを決める大切な手続きです。協議が終わったら合意内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割を行うときの4つの方法

遺産の分割方法と聞くと、「銀行預金はAが相続して、土地はBが相続して…」というように、現物をそのまま分割する方法をイメージする人が多いと思いますが、実際にはこの他にも遺産分割の方法があります。

遺産分割を行う方法は「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」の4つです。それぞれの方法にメリット・デメリットがあり、どの遺産分割方法を選ぶべきなのかはケースによって異なります。4つの方法の特徴を理解して、ご自身のケースで最も適した遺産分割の方法を選ぶようにしましょう。

➀現物分割

現物分割とは、遺産をそのままの形で相続人が受け取る遺産分割の方法です。遺産分割の方法の中では最も基本となる方法であり、「兄は家と土地を、弟は現金と預金を相続する」といった形で現物のまま相続します。

この後に紹介する代償分割や換価分割のように、代わりに別の財産を渡したり売却によって現金化したりする手間はかからず、亡くなった家族の財産をそのままの形で残せる点がメリットです。現金や預金など、そのままでも分割しやすい財産が遺産に多く含まれる場合、現物分割が適しています。

しかし、不動産のように分割しにくい財産が遺産の大半を占める場合には現物分割は適していません。現物分割によって土地や家を相続すると、高額な遺産である不動産を相続する人とそれ以外の人で遺産の受取額に大きな差が生じて不公平になる場合があります。

②換価分割

換価分割とは、遺産を売却して現金化して、その現金を相続人で分ける遺産分割の方法です。家族が残した大切な財産が残らない点はデメリットですが、不動産のように分割しにくく公平に分けることが難しい財産でも、現金化すれば公平に分けることができます。相続人が現金で受け取れば、生活資金や納税資金として使いやすい点もメリットです。

ただし、換価分割ができるのは財産に価値があって売れる場合なので、例えば遺産に含まれる土地の立地が悪くて買い手が見つからない場合は、そもそも換価分割はできません。売れる場合でも査定から売却まで時間がかかり、不動産会社とのやり取りなど手間がかかる点はデメリットです。

➂代償分割

代償分割とは、相続人の中の1人又は一部の人が遺産を受け取り、遺産を受け取らなかった他の相続人に対して代わりに現金など自分の財産を渡す遺産分割の方法です。代償として自分の財産を渡せば、各相続人の受取額を調整できて公平性を保つことができます。

換価分割と違って故人の遺産をそのままの形で残せる点がメリットで、不動産のように分割しにくい財産が遺産に含まれる場合に適した方法です。ただし、不動産のような高額な財産を受け取ると代償として渡す財産の金額も大きくなる場合があります。そのため代償として渡せるだけの十分な財産がない場合には代償分割はできません。

④共有分割

共有分割とは、遺産の名義を共有名義にして複数人で相続する遺産分割の方法です。

例えば遺産に土地が含まれる場合、共有分割によって兄弟2人で2分の1ずつ所有すれば公平に分けることができ、換価分割のように売らずに済むため遺産をそのままの形で残せます。

ただし、実際には共有分割は避けられることが多い方法です。不動産を共有名義にすると、売却したい場合でも他の共有名義者の同意がないと売却できないなど、遺産活用の妨げになることが少なくありません。

また、共有名義者が亡くなってその相続人が相続すると、権利関係が複雑になって関係者の数が多くなり、同意を得ることがさらに難しくなる場合があります。

遺産分割の流れ

遺産分割を行う場合、そもそも遺産分割の対象になる遺産は何か、遺産を相続する相続人は誰か、あらかじめ確認すべき事項があり、手順を踏んで手続きを進めていく必要があります。以下では遺産分割における一般的な手続きの流れを紹介します。

遺言書の有無を確認する

遺言書が残されているかどうかで相続開始後の手続きの流れが変わるので、相続が開始したらまずは遺言書の有無を確認します。生前に遺言書の有無や保管場所を家族が聞いていればすぐに確認できますが、そうでない場合は、遺言書が保管されている可能性のある場所を一つひとつ確認しなければいけません。

故人の部屋で遺品整理を行う際に遺言書がないか確認し、公証役場や法務局に遺言書が保管されていないか照会を行いましょう。後から遺言書が見つかると、遺産分割協議が無効になるなど問題が起きる可能性が高いので、遺言書の有無は相続開始後にしっかりと確認することが大切です。

相続人調査を行う

遺産を相続する権利を持つ相続人は誰なのか、確認する必要があるので相続人調査を行います。配偶者は相続人になりますが、子・親・兄弟姉妹の間では相続人になる順位があり、子が第一順位、親が第二順位、兄弟姉妹が第三順位です。

相続人調査をするには、亡くなった人の出生から死亡まで全ての戸籍を取り寄せる必要があり、戸籍を読み解くことで親族関係を把握して誰が相続人なのか確認します。戸籍の取り寄せを自分でやると時間や手間がかかることが多いので、相続人調査は弁護士や司法書士に依頼するほうが良いでしょう。

相続財産調査を行う

遺産分割協議の対象となる財産は何か、確認する必要があるので相続財産調査を行います。故人が生前に財産目録を作っていれば簡単に確認できますが、そうでない場合は、残された財産を一つひとつ確認する作業が必要です。

また、故人に借金があると借金も相続の対象になるので、信用情報機関への照会も行いましょう。遺産に借金が含まれる場合、相続放棄の検討が必要になる可能性がありますが、相続放棄ができるのは原則として3ヵ月以内です。期限を過ぎて借金を相続してしまわないように、相続財産調査は早めに終える必要があります。

遺産分割協議を行って遺産の分け方を決める

遺産分割協議には、全ての相続人が参加する必要があります。直接会って話して協議しても、メールや電話などで意見を調整しても構いませんが、対象者が1人でも欠けた状態で行った遺産分割協議は無効です。

法定相続分に応じて遺産を分けるケースが多く見られますが、相続人が納得して合意できるのであれば、異なる割合で遺産分割をしても構いません。遺産分割協議に期限はありませんが、協議が終わらず遺産を相続できないとその遺産を使って生活する予定の相続人が困る場合があるので、早めに終わらせるようにしましょう。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議で合意できたら、合意した内容を遺産分割協議書としてまとめます。相続人が遺産分割協議書を作成する法的な義務はありませんが、相続手続きをする際に提出する必要があるので、遺産分割協議書の作成は実質的に必須です。

一般的に遺産分割協議書は協議に参加した人の数だけ作成して各相続人が署名・押印し、各自が1通ずつ保管します。遺産分割協議書の提出先はケースによって異なりますが、よくあるのは預金口座の解約や不動産の相続登記をするために銀行や法務局に提出するケースです。相続手続きをする際、戸籍謄本などその他の必要書類と一緒に提出します。

遺産分割協議書のひな形と書き方

遺産分割協議書のひな形

遺産分割協議書では「誰が何の財産を相続するのか」が明確に分かるように記載します。仮に「銀行預金は相続人Aが相続する」と書いてしまうと、どこの金融機関の預金なのか分からず遺産分割協議書として意味をなしません。

上のひな形のように、銀行預金であれば銀行名や支店名、口座番号なども記載し、不動産であれば所在地なども記載して、どの預金口座や不動産を指すのか分かる書き方にします。

遺産分割協議書はパソコンで作成して問題ありませんが、署名だけは各相続人が自書し、押印は実印で行うようにしてください。また、ひな形のように「ここに記載のない財産については、相続人〇〇が全て相続する」といった文言を入れておけば、万が一他にも遺産が後から見つかった場合でも、その遺産について改めて遺産分割協議を行う必要がなくなります。

遺産分割協議書の作成では注意すべき点が多いので、書き方がよく分からず不安であれば弁護士や司法書士に作成を依頼するほうが良いでしょう。

遺産分割を巡って親族で揉めたときの対処法

遺産分割協議がスムーズに進むケースがある一方で、相続人同士で揉めてしまい、いくら協議をしても合意できないケースもあります。このような場合、一般的に裁判所に申し立てをして解決を図ることになります。

遺産分割調停

遺産分割調停では、遺産分割で揉めている相続人から調停委員が意見を聞き、中立の立場から解決策の提案を行います。調停には裁判所への申し立てが必要で、申立先は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所です。

当事者同士で話し合うと感情的になって揉める場合でも、遺産分割調停であれば当事者はお互いに顔を合わせる必要がなく、意見の調整等を調停委員がしてくれるので、冷静になれて解決できる可能性が高くなります。

ただし、調停委員から示される調停案に従う義務は相続人にはないので、調停によって必ず解決できるわけではありません。調停が不成立になった場合は遺産分割審判に移行します。

遺産分割審判

遺産分割審判では、訴訟のように当事者から提出された証拠資料などに基づいて裁判官が判断します。裁判官から下された審判の内容には法的な拘束力があり、相続人は従わなければいけません。

裁判所がどのように判断するかはケースごとに異なりますが、法定相続分で遺産分割をするように判断が下されることが多いようです。審判では自分の意見を主張することはできますが、自分の希望どおりの内容で裁判所が最終判断をしてくれるとは限らず、望まぬ結果になる場合もあります。

まとめ

相続人が遺産を相続するまでには、相続人調査や相続財産調査、遺産分割協議などさまざまな手続きが必要になります。4つの遺産分割方法のうちいずれの方法を選ぶべきか、最適な方法はケースによって異なるので、遺産に含まれる財産の種類や相続人の状況を考慮して決めるようにしましょう。

相続手続きのやり方や遺産分割協議書の書き方が分からないなど、相続のことでお困りの方は司法書士法人みどり法務事務所が運営する「スマそう-相続登記-」にご相談ください。当事務所では、相続登記の代行など相続に関する各種サポートを行っています。

この記事を監修したのは、

辻本 歩

所属 司法書士法人みどり法務事務所 愛媛県司法書士会 会員番号 第655号 認定番号 第1212048号 資格 司法書士

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