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遺贈とは?相続・死因贈与との違いや税金、放棄の方法を解説

2023.04.19 生前対策 遺贈とは?相続・死因贈与との違いや税金、放棄の方法を解説

この記事を監修したのは、

辻本 歩

所属 司法書士法人みどり法務事務所 愛媛県司法書士会 会員番号 第655号 認定番号 第1212048号 資格 司法書士

遺贈とは、ある人が亡くなったときに財産を渡す方法のひとつです。財産の渡し方には相続や死因贈与もありますが、遺贈で渡すほうが良い場合があります。遺贈・相続・死因贈与の違いを理解して、ご自身やご家族の状況を踏まえて適切な方法を選ぶことが大切です。

この記事では、遺贈の種類や手続きの流れ、メリット・デメリット、相続税や不動産取得税など、遺贈でかかる税金について解説します。

遺贈とは

遺贈とは、遺言で自分の財産の全部または一部を贈ることです。読み方は「いぞう」で、遺贈をする人を遺贈者(いぞうしゃ)、遺贈によって財産を受け取る人を受遺者(じゅいしゃ)と言います。

遺贈によって財産を渡す相手は、法定相続人(民法で定められた相続人)でもそれ以外の人でも可能で、特に制限はありません。法定相続人ではない家族に財産を遺贈することもできますし、介護でお世話になった人や知人など、家族以外の人に財産を遺贈することもできます。

また、遺贈先は人だけに限りません。企業や団体に遺贈することもできるので、ボランティア団体やNPO法人、自治体に遺贈する旨を遺言書に記載すれば、自分が亡くなったときに財産を寄付し、活用してもらうことができます。

遺贈の種類と手続きの流れ

遺贈をするためには生前に手続きをする必要があり、手続きをする際に特定遺贈と包括遺贈のいずれにするか決めなければいけません。特定遺贈と包括遺贈の違いや手続きの流れを理解しておきましょう。

特定遺贈と包括遺贈の違い

特定遺贈とは、渡す財産を特定して行う遺贈のことで、包括遺贈とは財産を特定せず、渡す財産の割合を指定して行う遺贈のことです。

特定遺贈であれば「Aに土地Bを遺贈する」のように遺言書に記載し、包括遺贈であれば「遺産のうち4分の1をAに遺贈する」のように遺言書に記載します。

 

特定遺贈

包括遺贈

遺贈の方法

渡す財産を指定する

渡す財産の割合を指定する

受遺者の権利

遺贈される特定の財産のみ権利を有する

相続人と同じ

遺産分割協議

参加対象外

参加が必要

財産変化と無効の可能性

相続開始までに特定の財産がなくなれば遺贈は無効

遺言書作成後に財産が変化しても無効にならない

借金が対象になるか

特定遺贈で指定しない限り対象にならない

遺産に借金があれば包括遺贈の対象になる

特定遺贈だと誰に何の財産を渡すのか明確になるため、「〇〇に△△を渡したい」という希望がある場合に適しています。ただし、遺贈対象の財産が売却や焼失等でなくなって相続開始時点で存在しない場合には特定遺贈は無効です。

一方で、包括遺贈の場合は財産を特定せず割合で指定するので、相続開始時点で遺産が0円でない限り、指定した割合の財産を受遺者に渡すことができます。特定遺贈のように、遺言書作成後に無効になる心配は基本的にありません。

しかし、包括遺贈では現預金や不動産などプラスの遺産だけでなく、借金や未払金などのマイナス遺産も遺贈対象になる点に注意が必要です。遺言書を作成した時点では借金がなくて問題ない場合でも、相続開始時点で借金があると借金も包括遺贈の対象になって受遺者に遺贈されてしまいます。

また、前述したように遺産の割合しか指定されていないので、遺産を相続する相続人が他にいる場合は相続人と受遺者がそれぞれ何の財産を受け継ぐのか、遺産分割の方法を決めなければいけません。包括受遺者も遺産分割協議の対象になるため、他の相続人と揉めると受遺者が相続トラブルに巻き込まれる場合があります。

遺贈をするには遺言書を作成する

遺贈をする場合「誰に何の財産を渡すのか」遺贈の内容を決めた上で、遺言書を作成します。

遺言書を作成するときに注意すべき点は、主に以下の3つです。

  • 遺言書に不備があると無効になる場合がある
  • 遺贈では遺言執行者を選任しておくほうが良い
  • 他の相続人の遺留分を侵害するとトラブルになる場合がある

遺言書は法定の要件を満たすように作る必要があり、不備があると無効になる場合があります。相続に詳しくない方がご自分で自筆証書遺言を書いて自宅等で保管すると、実は遺言書の形式に問題があって相続開始後に無効が発覚することがあるので注意が必要です。

不備がないようにするためにも、自筆証書遺言を法務局で保管する制度を利用して形式不備がないか法務局に確認してもらうか、遺言書の形式を公正証書遺言にして公証人に遺言書を作成してもらうほうが良いでしょう。

遺言執行者に関しては遺言書への記載義務はないですが、遺贈をする場合は遺言で遺言執行者を定めることが一般的です。

遺言執行者がいない場合、相続人や受遺者が共同で相続手続きを進めることになり、非協力的な人がいたり揉めたりすると、遺言執行手続きがうまく進まないことがありますが、遺言執行者が遺言で指定されていれば、その人が単独で手続きを進められます。

また、遺贈で多くの財産を特定の人に渡すと、他の相続人の遺留分を侵害してトラブルになる場合があるので、遺留分を考慮して遺贈の内容を決めることが大切です。遺贈を受けると税金がかかる場合があるので、受遺者が払う税金についても考慮しておく必要があります。

遺贈と相続・死因贈与は何が違う?

遺贈・相続・死因贈与は「自分が亡くなったときに財産を渡す」という点は同じです。しかし、実際に相続が起きたときの効果や結果は、遺贈・相続・死因贈与で違いが生じます。

遺贈と相続の違い

相続とは、民法で定められた相続人(法定相続人)が遺産を相続することなので、法定相続人以外の人に遺産は渡りません。

ある人が亡くなれば相続は当然に起きて法定相続人が遺産を相続することになり、法定相続人になる人がいない場合は、特別縁故者や国などに遺産が渡ることになります。

一方で、遺贈の場合は法定相続人以外にも遺産を渡すことが可能です。

ただし、相続のように人の死亡によって当然に起きるものではありません。遺贈をするためには、生前に遺言書を作成しておく必要があります。

例えば遺言書で「(法定相続人である)Aに土地Bを相続させる」と書けば有効ですが、「(法定相続人ではない)Cに土地Bを相続させる」と書くと無効です。法定相続人でない人に遺産を渡すなら「相続させる」ではなく「遺贈する」と書く必要があります。

遺贈と死因贈与の違い

相続と比較した場合、遺贈も死因贈与も「法定相続人以外の人にも財産を渡せる」という点は同じです。

ただし、死因贈与は贈与契約という契約の一種なので、生前に死因贈与契約を結んで自分の死後に財産を相手に渡す場合は、相手の同意を得て契約を交わす必要があります。

一方で、遺贈は遺言書を作成する人が一方的にできるので、財産を渡す相手の同意は法的には必要ありません。もちろん、遺言書を作成する段階で相手に説明して了解を得ておけば相続開始後に手続きがスムーズに進むので良いでしょうが、事前に相手に伝えていなくても遺贈自体は有効です。

遺贈者が一方的にできる反面、相続開始後に受遺者が遺贈を放棄して財産を受け取らないこともできます。 死因贈与も遺贈と同じく基本的に撤回が可能ですが、負担付死因贈与の場合は、負担にあたる事項が履行された後だと基本的に撤回ができません。

遺贈のメリット・デメリット

遺贈には、メリット・デメリットの両方があります。

財産を遺贈で渡すかを決める際には、メリット・デメリットを理解した上で決めるようにしましょう。

メリット

遺贈であれば相続と違い、法定相続人以外に財産を渡すことができます。お世話になった人に遺産を渡したり、企業・団体に寄付できたりする点が遺贈のメリットです。

また遺贈に際して遺言書を作成して遺産の分け方を指定すれば、相続開始後に遺産の分け方を相続人等で話し合う遺産分割協議が必要なくなり、揉める余地がなくなって相続トラブルを回避できます。

デメリット

遺贈のデメリットは、遺言書を作成する手間や費用がかかる点です。

法務局で自筆証書遺言を保管してもらう制度を使う場合や公証役場で公正証書遺言を作成する場合、所定の費用を負担しなければいけません。

また、遺留分を侵害するなどの遺言書の内容に問題があると、遺贈が相続トラブルの原因になる場合があります。そして遺贈者は良かれと思って遺贈する旨を遺言書に記載した場合でも、遺贈によって税金がかかると受遺者の税負担が重くなり、納税資金の確保で困る場合があります。

遺贈は放棄できる?

ある人が亡くなって遺言書が見つかった場合、遺贈する旨が書かれているものの受遺者からすると財産を受け取りたくない場合があります。

このようなケースで遺贈の放棄が可能かと言えば、結論としては遺贈の放棄が可能です。ただし、期限までに手続きをしないと放棄ができなくなる場合があるので、手続き期限には注意する必要があります。

包括遺贈の放棄には期限がある

包括遺贈を受ける受遺者は相続人と同じ権利を有するので、遺贈を放棄する場合には相続人が相続放棄をする場合と同じような手続きが必要になります。

相続放棄ができるのは相続の開始を知ってから3ヶ月ですが、包括遺贈の場合も遺贈の事実を知ってから3ヶ月以内であれば放棄が可能です。放棄をするには、裁判所で手続きを行います。

逆に言えば、3ヶ月以内に手続きをしなければ遺贈の放棄はできません。遺贈の対象となる財産に借金や負動産など、受け取りたくない財産が含まれる場合でも受け取ることになるので、遺贈の放棄をする場合は3ヶ月以内に手続きをするようにしてください。

特定遺贈の放棄に期限はない

特定遺贈の放棄に期限はなく、また放棄をする場合に裁判所での手続き等は必要ありません。特定遺贈の放棄をする場合は、放棄する旨を遺言執行者に対して内容証明郵便で伝えることが一般的です。

また、放棄をするのかしないのかが、いつまでも決まらない状態が続くと権利関係が不安定になって困る場合があるので、利害関係者が催告した場合は、決められた期間内に回答しないと遺贈を承認したものと見なされます。

相続放棄しても遺贈で財産を受け取れる?

相続と遺贈は混同しやすいので違いについて解説しましたが、同様に相続の放棄と遺贈の放棄も間違えやすい点のひとつです。

以下では、相続放棄と遺贈の放棄の違いについて解説します。

相続の放棄と遺贈の放棄は異なる

相続人が相続放棄をすることと、受遺者が遺贈の放棄をすることは別の話です。相続人としての立場で相続放棄をしても、受遺者の立場で遺贈の放棄をしたことにはなりません。

そのため、遺言書で相続人Aに財産を遺贈する旨が書かれていた場合、Aは相続人・受遺者の両方の立場になりますが、両方とも放棄したい場合には相続放棄・遺贈の放棄いずれの手続きもする必要があります。

債権者が遺贈の無効や取り消しを主張する場合がある

特定遺贈によって現預金や不動産などのプラスの財産を承継し、相続放棄によって借金の相続を免れた場合、被相続人にお金を貸していた債権者から訴えられて遺贈が無効になる場合や取り消される場合があります。

債権者の立場からすれば、特定遺贈の対象となったプラスの財産は借金の返済に充てられるべきものです。借金の返済を免れるためだけに、このような特定遺贈・相続放棄が認められてしまうと、債権者の権利を侵害していると見なされる場合があります。

遺贈でかかる税金の種類と計算方法

遺贈では以下で紹介する税金がかかるので、必要であれば納税資金に充てる現預金も併せて遺贈するようにしましょう。

相続税

相続税とは、遺産を相続するときにかかる税金です。相続と遺贈は異なることをさきほど紹介しましたが、相続税に関しては相続でも遺贈でも課税の対象になります。

相続税がかかるのは遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合です。

相続税には2割加算と呼ばれるルールがあり、亡くなった方の「一親等の血族および配偶者」以外の人が財産を受け継ぐ場合には、相続税が2割加算されることになっています。

遺贈では、相続人ではない家族や家族以外の知人・団体などに財産を渡せる点がメリットですが、2割加算によって相続税が高くなる場合があるので注意が必要です。

登録免許税

登録免許税とは、登記をする際に納める税金です。相続や遺贈によって不動産の所有者が変わる場合、新たな所有者となる相続人や受遺者は登記をする際に登録免許税を納付します。

遺贈で不動産を取得する場合、登録免許税の税額は「固定資産税評価額×税率2%」です。遺贈される土地の評価額が2,000万円、税率が2%であれば40万円の登録免許税がかかる計算です。ただし、受遺者が法定相続人の場合には税率0.4%で計算します。

不動産取得税

不動産取得税とは、土地や建物など不動産を取得したときにかかる税金です。相続人が不動産を遺贈される場合には、不動産取得税はかかりません。

一方で、相続人以外の人が不動産を遺贈される場合は、包括遺贈であれば不動産取得税は非課税ですが特定遺贈だと不動産取得税がかかります。

不動産取得税は「固定資産税評価額×税率」で計算し、税率は原則として4%、ただし一定の要件を満たす不動産では3%です。建物の評価額が600万円、税率が3%であれば18万円の不動産取得税がかかります。

まとめ

遺言書を作成して遺贈する旨を記載すれば、自分の財産を渡したい人に渡すことができます。相続とは違い、遺贈であれば法定相続人以外の人に財産を渡すことができ、遺贈先を企業や自治体にして財産を寄付することも可能です。遺贈は受遺者が放棄できるので、一方的な押し付けになる心配もありません。

遺言書を作成する際には、相続人の遺留分を侵害しないかどうかや相続税をはじめとした税金など、さまざまな点を考慮して遺贈の内容を決める必要があります。

遺贈では専門的な知識が必要になりますので、生前の相続対策や相続開始後の手続きでお困りの方は司法書士法人みどり法務事務所にご相談ください。当事務所では、定額の相続登記代行サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする相続に関する各種サポートを行っています。

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