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土地相続をしたら遺産分割協議書が必要?ケース別の判断基準と作成手順を解説

2022.12.12 遺産相続 土地相続をしたら遺産分割協議書が必要?ケース別の判断基準と作成手順を解説

この記事を監修したのは、

代表 寺島 能史

所属 司法書士法人みどり法務事務所 東京司法書士会 会員番号 第6475号 認定番号 第901173号 資格 司法書士

1.遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の内容を記載したものです。また、遺産分割協議とは、相続人が複数いる場合、「誰が」が「どの相続財産」を「どれだけ」相続するか話し合うことです。

遺産分割協議書は事後のトラブルを防ぐ、権利関係を明確にする等、作成されることが多いですが、場合によって作成は不要です。

次項以降、遺産分割協議書の要不要や作成手順等を解説していきます。

2.遺産分割協議書が必要になるケース

民法上、遺産分割協議書の作成は必須ではありません。ただ、遺産分割協議書は、相続人同士の相続財産における権利関係を明確にするものなので、相続財産を売却する等の第三者がかかわる場合は作成が要求される場面があります。

遺産を法定相続分どおりに相続しない場合

民法上、相続人が二人以上の場合は、各相続人に「法定相続分」という財産を相続できる割合が定められています。

この法定相続分と異なる割合で財産を相続することにした場合、遺産分割協議書の作成が必要になります。

例えば、不動産を所有する父親が亡くなり、相続人が母親と子供一人の場合、母親と子供法定相続分は各2分の1ですが、遺産分割協議により不動産を母親の単独所有にした場合です。

なお、不動産の場合は、遺産分割協議書を作成するだけでは足りず、相続登記も行う必要がある点に注意です。

※前述の例で相続登記までしておかないと、子供が勝手に不動産の持ち分2分の1を担保にして借金した場合、母親は、子供の債権者に対して不動産は自分の単独所有であることを主張できません。

相続税を申告する場合

相続財産が相続税の基礎控除額(※)を超える場合は、相続税の申告が必要です。

※基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

そして、相続税の申告手続きでは、遺産分割協議書が必要になります。また、配偶者控除や小規模住宅の特例などの減税措置を受ける場合にも、遺産分割協議書の写しの提出が求められます。

なお、相続税は相続があったことを知った日から10カ月以内に申告する必要があり、遺産分割協議もこの期間内に行わなければなりません。

相続後のトラブルを避けたい場合

遺産分割協議は、相続財産の処分方法という重大な内容を話し合うことになります。口頭だけで済ませてしまうと、後に言った言わないの相続人間の争いに発展しかねません。

たとえ、相続税の申告等が不要であっても、遺産分割協議書を作成して権利関係を明確にしておけば、争いの発生を防ぐことができます。

3.遺産分割協議書が不要なケース

続いて、遺産分割協議書が不要なケースについて説明します。

相続人が一人しかいない場合

相続人が一人であれば、相続放棄をしない限り相続財産をすべて相続することになるため、遺産分割協議書は不要になります。

なお、相続人が一人とは、相続放棄・相続廃除・相続欠格によって相続人の資格を持つ人が一人になった場合も含みます。

遺言どおりに遺産を分割して相続する場合

被相続人が遺言書を残し、その内容の通りに相続財産を分割する場合は、遺産分割協議書は不要です。

なお、遺言書には大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言があり、前者については原則としてば、開封する前に家庭裁判所で検認という手続きを受ける必要があります。

法定相続分どおりに遺産分割する場合

法定相続分に従うのであれば、遺産分割協議書は不要です。

ただし、前述の通り、口約束だけではトラブルの種を残すことになるため、「法定相続分に従い相続する」という旨を明文化した方が良いでしょう。

4.遺産分割協議でトラブルになりやすい例

遺産分割協議を円滑に進められればいいのですが、金銭等の財産に関して話し合いをする以上、相続人同士の意見が衝突するケースは残念ながら少なくありません。

本項では、特にトラブルに発展しやすい事例を紹介します。

財産の中に不動産が含まれている

相続財産に不動産が含まれていると、持ち分の割合や処分方法等について意見が対立しやすいです。

不動産は、後の処分を考えると単独所有にしておくのが望ましいのですが、持ち分を手放す相続人にとっては不公平となります。特に、相続財産が不動産しかない場合は、不動産を相続しない代わりに金銭を相続するといった柔軟な分割が困難なため、よりトラブルになりやすいです。

相続人同士が疎遠または仲が悪い

相続人同士の仲が悪いと、意見が対立して協議がまとまらない傾向にあります。

音信不通の相続人がいる

遺産分割協議は相続人全員が参加する必要があるため、音信不通の相続人がいると、遺産分割協議を進めることが困難になります。

このばあい、裁判所に不在者財産管理人を選任してもらうなどの手段があります。

特別受益や寄与分がある

特別受益とは、相続人の一部が被相続人から受けた生前贈与などの遺産の前渡しと言える利益です。

寄与分とは、被相続人に対し、介護や無給の手伝いなどの被相続人財産の維持や増加に貢献したものに認められる取り分です。

これらは相続財産の所得割合に考慮され、特別受益が認められればそれを受けた相続人の取得分は減り、寄与分が認められれば寄与した相続人の取得分は増えます。

しかし、実際に特別受益や寄与に値する行為があったかの判断が難しく、争いに発展しやすいと言えます。

相続の途中で二次相続が発生した

遺産分割協議をまとめる前に一部の相続人が亡くなり、二次相続が発生すると、一次二次の2回分の遺産分割協議を行うことになり、相続人が増える分、意見の対立が起こりやすくなります。

以上が遺産分割協議でトラブルになりやすい例です。これらに当てはまる場合の対処ですが、弁護士・司法書士等の専門家に相談することがおすすめです。

相続人間の仲が疎遠でも、専門家であれば代理が可能であるため、直接的な意見の対立が起こりにくくなり、また、特別受益や寄与分にあたるかを法的な観点からアドバイスすることが可能です。

5.遺産分割協議書を作成する流れ

遺産分割協議書は内容に不備があると無効になってしまいます。そのような事態を防ぐために、正しい手順を解説します。

1.遺言書を確認する

遺言書がある場合、遺産分割協議は不要のため、まずは遺言書の有無を確認します。

公正証書遺言や法務局で自筆証書遺言が保管されている場合もあるため、自宅で見つからない場合は最寄りの公証役場または法務局にも問い合わせた方が良いでしょう。

2.相続人を確認する

遺産分割協議は相続人全員が参加する必要があるため、協議の前に相続人の確定を済ませなければなりません。

相続人の調査は、被相続人の戸籍謄本を出生まで遡っていき、把握していない養子や子供がいないかを確認します。

3.相続財産を調査する

遺産分割協議書には、どの財産について遺産分割協議をしたかを明記する必要があるため、対象となる相続財産を調査しなければなりません。

調査方法は財産ごとに異なり、以下は一般的なケースです。

 

・不動産

土地の権利証、固定資産税評価証明書証

 

・預貯金

銀行への残高証明発行の依頼、通帳の記帳

 

・有価証券

証券会社への確認、株主名簿の確認

 

・負債

信用情報機関への開示請求

4.遺産分割協議を行う

相続人と相続財産の調査が完了したら、相続人全員でどの財産をどのように分割するかを協議します。

なお、相続人全員と言っても、全員が現実に一つの場に集まる必要はなく、電話や文書を介する方法でも問題はありません。

5.遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議の内容を書面にまとめ、相続人全員が署名捺印を行います。書面は相続人の人数分の通数が必要で、デジタル・手書きのどちらでも可能です。

なお、遺産分割協議書には決まった形式はありませんが、最低限、以下の事項が必要です。もし、遺産分割協議書に不備があると無効となり、相続登記等の手続きが進められなくなるため、作成に不安があれば専門家に依頼すると良いでしょう。

①被相続人の氏名、最後の住所

②相続開始日

③どの財産を誰がいかなる割合で相続するかなどの具体的な分割内容

④対象となる財産の明記

⑤「~の財産について遺産分割協議が成立した」などの協議が成立したことを示す文書

⑥遺産分割協議が成立した日

⑦相続人全員の氏名・住所

⑧相続人全員の署名捺印(実印が必要)

6.まとめ

以上が、遺産分割協議書を作成する流れや注意事項です。

遺産分割協議書は自分で作成することも可能ですが、相続人関係や相続財産が複雑です。

事前知識があまりない状態で専門家の関与なく手続きを進めても、手間と時間が無駄にかかり、場合によっては相続人間のトラブルに発展しかねません。

また、法改正により相続登記は義務となり、令和6(2024)年4月1日以降、相続があったことを知った日から3年以内に相続の登記をする必要があり、正当な理由なくこれをしないと10万円以下の過料に処せられるおそれがあります。

確実に相続登記を完了させるために、多少費用が掛かったとしても、司法書士等の専門家に手続きを依頼することをお勧めします。

当事務所では、皆様になるべくストレス無く相続を済ませていただくために、定額の相続登記代行サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする相続に関する各種サポートを行っています。まずは、お気軽にお問い合わせください。

この記事を監修したのは、

代表 寺島 能史

所属 司法書士法人みどり法務事務所 東京司法書士会 会員番号 第6475号 認定番号 第901173号 資格 司法書士

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