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遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)とは?計算方法や手続き方法を解説!

2023.04.19 遺産相続 遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)とは?計算方法や手続き方法を解説!

この記事を監修したのは、

代表 池村 英士

所属 司法書士法人みどり法務事務所 東京司法書士会 会員番号 第9216号 認定番号 第1001075号 資格 司法書士

遺言や生前贈与などによって、他の人が遺産を多く受け取って自分の取り分が少なくなった場合でも、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をすれば取り戻せる場合があります。そのため、泣き寝入りしてしまう前に遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の制度内容のチェックしておくことをお勧めします。

この記事では、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をできる人や請求額の計算方法、手続きの流れ、遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求の違いを解説します。

請求しても相手が応じない場合の対処法も紹介するので、遺産相続でお困りの方は参考にしてください。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)とは

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)とは、他の人が多くの遺産を相続して自分が相続できる遺産が少なくなった場合に、法律で保障されている遺産取得割合を主張して侵害された分を請求することです。

法律で保障されている遺産取得割合は遺留分と呼ばれ、後述するように、一定の相続人には遺留分が法律で保障されています。

たとえば、すべての遺産を特定の相続人1人に渡すと遺言書に書かれていて、他の相続人に遺産を渡さない旨が記載されていても、遺留分がある相続人なら法律で定められた遺留分に相当する額の財産を受け取る権利を主張できます。

特定の相続人1人だけが全遺産を相続して受け取ったとしても、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をすれば一定の財産を取り返せるわけです。

遺言は亡くなった方(被相続人)の意思であり尊重すべきものなので、遺言には法律上強い効力が認められていますが、相続人の権利である遺留分は遺言によっても侵害できない権利として法律で保障されています。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をできる期間は、遺留分が侵害されていることを知ってから1年以内、または相続開始時点から10年以内です。この期間を経過すると時効が成立するので、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)はできません。

遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求の違い

遺留分減殺請求とは、2019年6月以前の旧制度、遺留分侵害額請求とは2019年7月以降の新制度です。いずれも侵害された遺留分を請求する点は同じですが、法改正によって制度が変わったため、遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求では制度内容に違いがあります。

両者の大きな違いは「請求して何を取り戻すのか」という点にあり、旧制度の遺留分減殺請求権は基本的に「遺産そのものを取り戻す権利」、新制度の遺留分侵害額請求権は「侵害された額に相当する額のお金を取り戻す権利」です。

旧制度の場合、家族が残した大切な遺産そのものを取り戻せるので良さそうですが、遺産に不動産が含まれる場合、遺留分減殺請求をして不動産がそれぞれの持分に応じて共有状態になると、かえってトラブルの原因になることがありました。不動産が共有状態になると、売却するには共有者全員の同意が必要になってしまい、相続人同士で揉めたり不動産活用の妨げになったりするケースがあったからです。

一方で、新制度の場合は侵害された額を金銭で取り戻すので、財産が共有状態になって取り扱いを巡って揉める心配はありません。また、新制度では侵害された額を計算する際の対象が、旧制度から一部変更されました。

被相続人の生前に特別な利益(特別受益)を受けた場合、旧制度ではすべて遺留分計算の対象でしたが、新制度では相続開始前10年以内の生前贈与のみ対象となっています。なお、贈与したときに当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合においては、10年以上前のものでも遺留分計算の対象になります。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をできる人とは?

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)では、請求できる人や請求できる割合が法律で決まっています。相続人であっても遺留分がなく請求できない人もいるので、対象者や割合を正しく理解しておくことが大切です。

遺留分の対象者

遺留分が認められているのは、相続人のうち兄弟姉妹以外の人です。

「配偶者」「子および孫・ひ孫などの代襲相続人」「親や祖父母などの直系尊属」が相続人になる場合は遺留分があるので、もしも遺留分を侵害されれば遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をできます。

一方で、兄弟姉妹は相続人であっても遺留分がなく、その代襲相続人である甥・姪が相続人になる場合も遺留分はありません。

そのため、亡くなった人の配偶者と兄の2人が相続人になるケースにおいて、全財産を配偶者に渡す旨が遺言書で書かれていた場合、兄は遺留分がないので配偶者が全財産を相続しても、その一部を請求して受け取ることはできません。

遺留分の割合

それぞれの相続人の遺留分割合がいくらなのかは、誰が相続人になるのかによって変わります。

具体的には以下のとおりです。

相続人

遺留分

配偶者のみ

配偶者:2分の1

配偶者と子

配偶者:4分の1

子:4分の1

子のみ

子:2分の1

配偶者と親

配偶者:3分の1

親:6分の1

親のみ

親:3分の1

配偶者と兄弟姉妹

配偶者:2分の1

兄弟姉妹:なし

兄弟姉妹

兄弟姉妹:なし

該当する人が複数人いる場合は、表で記載した遺留分を人数で割った値が1人あたりの遺留分です。

配偶者と子2人が相続人のケースであれば、遺留分は子2人で4分の1なので、子1人の遺留分は8分の1です。

この場合にもしも遺言書で子に全く遺産を渡さない旨が記載されていた場合、子は遺留分として8分の1の額を取得することを権利として主張できます。

なお、相続に関する割合としては、遺留分の他に法定相続分がありますが、法定相続分と遺留分は異なる概念です。法定相続分は相続する遺産割合の目安となる割合のことで、遺留分とは異なります。

法定相続分については「法定相続人にあたる人は誰?それぞれの相続分は?」で解説していますので、参考にしてください。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の対象となる金額の計算方法

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をする場合、自分の権利を侵害している相手に対して請求することになりますが、その際に請求する金額を計算する必要があります。

請求額を計算するときの流れは以下のとおりです。

  • 遺留分計算の対象となる財産を把握して合計する
  • 財産額に遺留分割合を乗じる
  • 遺留分から相続する財産額を引いて請求額を求める

遺留分計算には相続開始時点の遺産だけでなく、生前贈与のうち一定のものも含まれます。

遺留分計算に含まれる財産は以下の財産です。

【遺留分計算に含まれる財産】

  • 現預金や不動産などのプラスの遺産

  • 相続開始前1年以内に行われた生前贈与

  • 相続開始前10年以内に相続人に対して行われた生前贈与のうち特別受益にあたる贈与

  • 当事者双方が遺留分を侵害すると知って行われた生前贈与

 

 

また、被相続人に借金などの債務がある場合はその額を差し引きます。

たとえば、遺留分計算の対象になる財産が3,000万円、相続人が配偶者と子の2人の場合、子の遺留分が4分の1で遺留分相当額は750万円です。

仮に遺言で子に500万円の財産しか渡さない旨が書かれていれば、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の対象となる金額は750万円と500万円の差額250万円です。

なお、個々の財産の評価は相続開始時の価格で行うので、土地や建物を生前に贈与された場合は、相続人が亡くなった時点の価格を基準に遺留分を計算します。現金を生前贈与された場合も、相続開始時点の貨幣価値に引き直して計算します。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の手続きの流れ

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)には、直接交渉・調停・訴訟の3つの方法があります。まずは直接交渉をして、相手が応じない場合に調停・訴訟に移行することが一般的です。

以下では、それぞれの手続きの流れを紹介します。

相手と直接交渉する場合

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をする場合、遺産を多くもらって自分の遺留分を侵害している人に対して、請求権を行使する旨の意思表示をする必要があります。

意思表示の方法に特に決まりはないので口頭で伝えることもできますが、口頭で済ませてしまうと請求権をいつ行使したのか証拠が残りません。後々にトラブルになる可能性があるので、相手方への意思表示は内容証明郵便によって行うことが一般的です。

口頭で伝えて請求権の行使日が分からなくなると、時効成立前に請求権を行使したのか分からず、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)が認められなくなってしまう可能性があります。

相手と交渉して合意できた場合は、合意内容を巡って後々にトラブルにならないように、合意書や和解書などの形で書面を作成するようにしてください。その際、公証役場で公正証書の形式で作成すれば、万が一相手方が合意内容に違反したときにすぐに強制執行の手続きを取ることができます。

遺留分減殺(侵害額)請求調停の申立を行う場合

相手と話し合いをしても合意できなかった場合や、そもそも相手が話し合いに応じない場合、家庭裁判所に調停の申立を行います。

調停とは、調停委員を介して家庭裁判所で行う話し合いのことです。申立先は相手の住所地を管轄する家庭裁判所で、申立書を作成して後述する必要書類とともに提出します。

調停では調停委員が仲介役となって意見の聞き取り等を行うので、当事者同士が直接交渉するわけではありません。直接交渉すると感情的になって揉める場合がありますが、調停であれば当事者同士で話し合う場合より、解決・合意できる可能性が高まります。

調停の結果、合意できた場合には調停調書を作成し、合意できない場合には訴訟を起こすことになります。調停調書には判決と同じ効力があり、相手が違反した場合には強制執行が可能です。

遺留分減殺(侵害額)請求訴訟を起こす場合

調停でも合意できない場合や相手が応じない場合、被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出して訴訟を起こします。訴えを起こす裁判所は、請求金額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下の場合は簡易裁判所です。

訴訟ではお互いが主張・立証を行い、その内容に基づいて裁判所が判決を下します。判決内容に不服がある場合は、控訴・上告も可能です。

ただし、裁判は一般の人には馴染みが薄く、自分で手続きをしようとしても難しい場合が多いです。遺留分減殺(遺留分侵害額)請求訴訟を起こす場合は、弁護士や司法書士に依頼するほうが良いでしょう。

請求額が140万円以下であれば、弁護士ではなく司法書士でも裁判対応の代理が可能です。但し、司法書士は調停代理を行うことはできません。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)でかかる費用と必要書類

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)でかかる費用と必要書類

遺留分減殺(遺留分侵害額)請求調停や訴訟では必要書類の取得費用がかかり、弁護士に依頼すれば報酬の支払いが必要になります。

以下では、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)でかかる費用と必要書類を紹介します。

費用

弁護士に相談すると、一般的には30分5,000円~1万円ほどの相談料がかかります。

報酬体系は弁護士事務所によって異なりますが、内容証明郵便の送付や相手との交渉を依頼する場合、着手金として10~30万円程度、内容証明郵便の送付(意思表示の代理)で数万円、交渉して侵害された額を回収できた場合は成功報酬がかかることが一般的です。

成功報酬は回収した金額の何%と定められていることが多く、回収できた金額のうち一定割合を弁護士に報酬として支払うことになります。仮に成功報酬が15%で回収額が200万円であれば、30万円を成功報酬として支払う計算です。また、調停や訴訟に発展した場合は、着手金や成功報酬が別途かかることもあります。

必要書類

調停の申立をする場合や訴訟を起こす場合、主に以下の書類が必要になります。

 

必要書類

訴訟の申立

  • 申立書

  • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本

  • 相続人全員の戸籍謄本

  • 遺言書の写し

  • 遺産に関する資料

 

 

訴訟

  • 訴状

  • 証拠書類

 

 

遺産に関する資料とは、預貯金の通帳の写しや固定資産評価証明書、借金に関する資料などが該当します。上記の他、収入印紙や郵便切手も必要になります。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)に関する注意点

最後に、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)に関して注意すべき点をいくつか紹介します。

時効が成立すると請求できなくなる

前述のとおり、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)は遺留分の侵害を知ってから1年、または相続開始から10年が経過すると時効によって請求権がなくなり行使できなくなります。

遺言書に基づいて遺産を分けるケースであれば、遺留分を侵害する内容の遺言書を確認した時点を基準として1年が経過すると時効が成立し、それ以降は請求できません。

相続開始後は葬儀や遺産相続の手続き、相続税の申告など、何かと忙しくなって1年はすぐに経過してしまうので、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)を行う場合は早めに手続きをするようにしてください。

遺留分の放棄をしても他の相続人の遺留分は増えない

遺留分がある人は、相続開始前でも相続開始後でも遺留分を放棄することができます。相続開始前に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所での手続きが必要です。

遺留分を放棄した場合、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)は行えません。

遺留分の放棄に関して間違えやすい点の1つが、ある相続人が遺留分を放棄しても他の相続人の遺留分は増えない点です。相続放棄の場合は、相続放棄をした人は最初から相続人ではなかった扱いになるので、他の相続人の相続権割合(法定相続分)が増える場合がありますが、遺留分の放棄の場合は他の相続人の遺留分に影響はありません。

請求相手は法定の順序に従って決まる

自分の遺留分を侵害して財産を多く受け取っている人が複数いる場合、誰に対して遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)を行うか、請求対象の順序が問題になります。

この点に関して法律では、遺贈(遺言による贈与)と生前贈与がある場合にはまずは遺贈が請求の対象になり、複数の生前贈与がある場合には日付が新しい贈与から対象とすると定められています。

遺留分の計算や遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の手続きでは、専門的な知識が必要です。一般の方が自分で対応しようとしても難しい場合が多いので、やはり弁護士や司法書士に相談されることをお勧めします。

まとめ

配偶者や子、親には遺留分があり、侵害された場合には遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をすれば侵害された額を取り戻すことができます。遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をできる期間は、侵害されたことを知ってから1年以内、または相続開始後10年以内です。

被相続人が亡くなった時点の遺産だけでなく、相続開始前1年以内に行われた生前贈与や相続開始前10年以内に相続人に対して行われた生前贈与のうち、特別受益にあたる贈与も遺留分の計算に含まれます。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)を行う場合、まずは相手と直接交渉し、応じない場合には調停や訴訟に移行することが一般的です。裁判所を介した手続きである調停や訴訟は自分で対応しようとしても難しい場合が多いので、遺留分を侵害されてお困りの方は弁護士や司法書士などの専門家に相談するようにしてください。

司法書士法人みどり法務事務所では相続でお悩みの皆様に、安心でリーズナブルな相続を済ませて頂くために、定額の不動産の名義変更サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする遺産相続に関する各種サービス(ゆうちょ・みずほ・三井住友・三菱UFJ、りそななどの各金融機関の相続に伴う預貯金の解約払戻し、その他相続に関する裁判所提出書類作成サポートなど)を行っています。また、電話や来所での相続相談は無料で承っております。相続に関してお悩みの方はまずはお気軽にお電話ください。

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