【遺産の相続割合】の決め方や計算方法をかんたん解説!
2023.10.17 遺産相続遺産の相続では、誰がどれくらいの割合の遺産を相続するのか、遺産の分け方が重要になります。相続人同士で話し合って遺産の分け方を決める場合、各相続人の相続割合を巡って揉めるケースも少なくありません。
この記事では遺産の相続割合の決め方や計算方法、遺産を相続できる法定相続人の範囲について解説します。将来の相続に備えた相続対策を考える際や、実際に相続が起きて遺産相続割合を決める際の参考にしてください。
目次
遺産の相続割合の決め方
遺産の相続割合の決め方には「財産を残す人が遺言書を作成して決める方法」と「相続が起きた後に相続人が話し合って決める方法」の2つの方法があります。
遺産を相続する場合、遺言書の有無によって遺産の相続方法や相続割合の決め方が変わるので、以下では遺言書がある場合とない場合に分けて解説します。
遺言書がある場合:遺言内容に従って相続する
近年では相続人同士を揉めさせないために、しっかりと遺言書を残される方が増えてきています。当事務所でも相続相談の際に、相談者である相続人の方が遺言書を持参されるケースが増えてきたように感じます。
遺言書によって遺産の分け方が指定されている場合は、基本的には遺言内容に従って相続人の間で遺産を分けることになります。
遺言書がないと思って相続人の間で話し合って遺産の分け方や相続割合を決めたとしても、後から遺言書が見つかれば基本的に遺言書の内容が優先です。
そのため、相続が起きたときには、遺言書が残されていないか最初によく確認しなければいけません。
ただし、遺言書の内容とは異なる方法で遺産を分けることに相続人全員が同意した場合は、遺言内容とは異なる方法で遺産を分けることができます。
遺言書がない場合:相続人で話し合って相続割合を決める
遺言書がない場合や遺言書では一部の財産の分け方しか指定されていない場合、相続人が複数人いれば誰がどの財産を相続するのかを話し合って決める必要があります。遺産の分け方を話し合うための協議が遺産分割協議、協議した内容をまとめた書面が遺産分割協議書です。
遺産分割協議で相続割合を決めるときには、後述する法定相続分で遺産を分けるケースも見られますが、遺産分割協議では相続人が自由に協議して相続割合を決められるので、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることもできます。
当事務所にて相続業務についてご依頼頂く際に、私どもが一番気を遣わなければならないのがこの遺産分割協議です。それは、ちょっとした話の食い違いで兄弟姉妹での相続争いに発展しかねないからです。遺産分割協議をする際には各相続人の心情や状況に配慮した対応が必要になります。
⇒遺産分割協議については「遺産分割とは?手続きの流れや遺産分割協議書の書き方、揉めたときの対処法を紹介」でも詳しく解説しておりますので、是非ご参考下さい。
遺産を相続できる「相続人」になる人の範囲
相続が起きて各相続人の遺産の相続割合を決めるためには、そもそも誰が法定相続人(法律上の相続人)になって遺産を相続できるのか、相続人になる人の範囲を正しく判断しなければいけません。
生前に遺言書を作成すれば法定相続人以外の人に遺産を渡すこともできますが、遺言書がなければ遺産を相続するのは法定相続人です。遺産の相続権があるのは誰なのか、法定相続人の決まり方を理解しておく必要があります。
以下では、法定相続人の決まり方に関する法律上のルールを紹介するので、ご自身のケースでは一体誰が相続人になるのか、確認してみてください。
配偶者は常に相続人になる
相続が起きたときに被相続人の配偶者(夫や妻)が生きていれば、法定相続人として遺産を相続します。
子・親・兄弟姉妹の間では法定相続人になる順位が決まっているので、上の順位の人がいると相続人にならない場合がありますが、配偶者に関しては他の相続人がいるかどうかは関係ありません。配偶者は故人に近い存在として、当然に遺産を相続する権利が認められています。
ただし、法定相続人になる配偶者とは婚姻関係にある配偶者です。婚姻届を出していない事実婚(内縁)の配偶者は法定相続人にはなりません。
第一順位:子供や代襲相続人である孫・ひ孫
子・親・兄弟姉妹の間では法定相続人になる順位が決まっていて、この中で最も順位が高い第一順位にあたるのが子です。
また相続開始時点で子が亡くなっていても、その子(つまり孫)がいれば孫が代わりに第一順位の法定相続人として遺産を相続します。代襲相続と呼ばれる制度で、本来の相続人が亡くなっていても次の世代に遺産の相続権が移る仕組みです。
第二順位:親や祖父母などの直系尊属
子・親・兄弟姉妹の中で子に次いで相続順位が高いのは、親や祖父母などの直系尊属です。第一順位の人がいない場合、第二順位の人がいればその人が法定相続人として遺産を相続します。
たとえば、相続開始時点で配偶者・子・親が生きているケースでは、配偶者と第一順位の子が相続人になるため、第二順位の親は相続人にはなりません。しかし、相続開始時点で子がおらず配偶者・親が生きているケースであれば、配偶者と親が法定相続人になります。
第三順位:兄弟姉妹や代襲相続人である甥・姪
子・親・兄弟姉妹の中で第三順位の法定相続人となるのは兄弟姉妹です。相続開始時点で兄弟姉妹が亡くなっていても、その子(つまり甥・姪)がいれば甥・姪が代わりに第三順位の法定相続人として遺産を相続します。
なお、代襲相続が起きる点は第一順位の子も第三順位の兄弟姉妹も同じですが、代襲相続が起きる範囲が異なります。子の場合は孫・ひ孫など何世代先まででも代襲相続が起きる可能性がありますが、兄弟姉妹の場合は代襲相続が起きるのは一世代限りです。甥・姪の子がいても代襲相続は起きません。
遺産の相続割合の目安となる「法定相続分」とは?
法定相続分とは、遺産のうちどれだけの割合を相続する権利が各相続人にあるのか、法律で定められている相続割合のことです。法定相続分は、遺産分割協議を行って遺産の分け方を決めるときに目安となる割合であり、遺産の分け方で揉めて裁判になった場合に、最終的に裁判所もこの法定相続分を基準として遺産の分け方を決めることが多いです
法定相続分は、誰が相続人になるのかによってその割合が変わります。
相続人 | 法定相続分 |
配偶者のみ | 全財産 |
配偶者と子 | 配偶者:2分の1 子:2分の1 |
子のみ | 全財産 |
配偶者と親 | 配偶者:3分の2 親:3分の1 |
親のみ | 全財産 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1 |
兄弟姉妹のみ | 全財産 |
⇒法定相続人・法定相続分については「法定相続人にあたる人は誰?それぞれの相続分は?」でも詳しく解説しておりますので、是非ご参考下さい。
遺産の一定割合を最低限相続できる「遺留分」とは?
遺留分とは、相続人が遺産の一定割合を最低限相続できる権利割合のことです。遺言によっても奪うことができない相続人の権利として、遺留分が法律で認められています。
仮に、ある相続人に対して遺留分を下回る割合の遺産しか渡さない旨が遺言書に書かれていても、その相続人は遺留分を主張して侵害された分を請求できます。
法定相続人のうち、遺留分があるのは配偶者・子・親です。注意すべきは兄弟姉妹には遺留分はないという事です。遺留分の割合は誰が相続人になるのかによって変わります。
相続人 | 遺留分 |
配偶者のみ | 配偶者:2分の1 |
配偶者と子 | 配偶者:4分の1 子:4分の1 |
子のみ | 子:2分の1 |
配偶者と親 | 配偶者:3分の1 親:6分の1 |
親のみ | 親:3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者:2分の1 兄弟姉妹:なし |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹:なし |
⇒遺留分については「遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)とは?計算方法や手続き方法を解説!」でも詳しく解説しておりますので、是非ご参考下さい。
遺産の相続割合を計算するときの注意点
遺産の相続割合を計算するときには、注意すべき点がいくつかあります。
以下では主な注意点を紹介するので、相続割合を計算する際、以下のケースに該当する場合は注意してください。
遺産に借金が含まれる場合
現預金や不動産などのプラスの遺産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの遺産も相続の対象です。亡くなった方に借金がある場合、遺産分割協議を行って遺産の相続割合を決めるときには借金の負担割合についても取扱いを決めないと、後で揉め事の原因になってしまいます。
ただし、プラスの遺産とは異なり、借金に関しては法律上、債権者の同意がない限り上記で説明した法定相続分に応じて各相続人が返済義務を負います。したがって、遺産分割協議で借金の相続割合を決めて一部の相続人のみで負担・返済すると決めた場合でも、債権者からは法定相続分に応じて請求される可能性があるので注意が必要です。
相続放棄をした人がいる場合
相続放棄をした人は、最初から相続人ではなかった扱いになります。相続放棄とは遺産の相続権を放棄することで、相続の開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをすれば相続放棄が可能です。
相続人の中に相続放棄をした人がいると、相続人になる人の範囲や各相続人の法定相続分・遺留分の割合が変わる場合があります。そのため相続人の範囲や相続人ごとの相続割合を計算するときには、相続放棄をした人がいないか確認が必要です。当該相続人から相続放棄しているかの確認をとれない場合には、家庭裁判所で相続放棄申述の有無を照会する方法があります。
養子が相続人になる場合
養子も実子と同じく法定相続人になります。ただし実子とは異なり、代襲相続が起きない場合がある点に注意が必要です。
本来の相続人である養子が相続開始時点で既に亡くなっていて養子の子がいる場合、その子が生まれた時期が養子縁組の後であれば、養子の子は代襲相続人になります。
しかし、養子縁組の前に生まれた子の場合は代襲相続人にはなりません。これについては専門家でも見落としがちなので要注意です。
相続人が被相続人より先に亡くなっている場合
本来の相続人が被相続人より先に亡くなっていて代襲相続が起きる場合、代襲相続人の法定相続分は本来の相続人と同じです。遺産の相続割合に関して、代襲相続人は本来の相続人と同じ権利を有します。
代襲相続が起きる場合、代襲相続人は法律上当然に相続人となって遺産を相続できるので、代襲相続人になるために何らかの手続きを行う必要はありません。
相続人の中に連絡が取れない人がいる場合
相続人の中に連絡が取れない人がいるからといって、その相続人を除いて遺産分割協議をして遺産の相続割合を決めても、その協議結果や合意内容は無効です。連絡が取れない相続人がいる場合は不在者財産管理人の選任申立や失踪宣告等の対応が必要になります。
また、実際に相続が起きると、相続財産調査や相続人調査などの手続きが必要になり、相続手続きに慣れていない方がご自身でやろうとしても難しい場合が少なくありません。
近年においては当事務所でも相続財産調査・相続人調査・遺産分割協議・不動産や金融資産の名義変更等の総合相続サービス(遺産承継業務)のご依頼を頂くことが増えてきております。
まとめ
各相続人がどれだけの割合の遺産を相続するのか、相続割合の決め方には遺言書で決める方法と遺産分割協議で決める方法の2種類の方法があります。
遺言書で遺産の分け方を決める際には、各相続人の遺留分に注意が必要です。遺言書が残されていない場合は遺産分割協議を行って、相続人の間で話し合って遺産の分け方を決める必要があります。
相続では法定相続分や法定相続人、遺留分など専門的な知識が必要になるので、相続に関してお困りの場合は専門家への相談を検討してみてください。
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