不動産を相続するときにすべきことは?手続きや税金、注意点などを確認しておこう
2023.03.30 遺産相続不動産を所有する親が亡くなった場合、相続に伴い様々な手続きが必要となります。本記事では、不動産の相続時および相続後に必要な手続きについて解説していきます。
目次
1.不動産の相続にあたってやるべきこと
まず、不動産を所有する親が亡くなってしまった場合にすべきことを簡単に説明し、次項から詳述していきます。
なお、今回解説するのは、あくまで不動産を相続する場合に関連する手続きで、死亡届や葬式の手配については省きます。
遺言書の確認
遺言書の有無を、遺言書があれば検認のうえ内容を確認しましょう。
戸籍謄本の取得
不動産の名義変更では戸籍謄本が必要になります。相続人の確定も兼ねるので、戸籍謄本を取得しましょう。
遺産分割協議書の作成
相続人同士で遺産分割協議を行った場合、遺産分割協議書を作成しましょう。
なお、法定相続分で相続する、または相続放棄をする場合、遺産分割協議書の作成は不要です。
必要書類の取得
戸籍謄本以外に印鑑証明書など書類が必要なのでそれらを取得します。
2.不動産を相続するときの流れ
不動産を相続した場合、相続登記による名義変更の手続きが必要になります。
相続登記の手続きに依頼するのが一般的ですが、自分で行うことも可能です。
司法書士に依頼するケース
①司法書士を探す
相続登記を依頼する司法書士を探しましょう。
相続登記を依頼するのは、やはり普段から相続業務を扱っている司法書士事務所が安心です。多くの司法書士事務所がHPを開設しているので、過去の実績や依頼者の声を多く載せている事務所を選ぶと良いでしょう。
②司法書士に依頼する
司法書士と面談し、手続きを正式に依頼します。
依頼先の司法書士が決まったら、電話またはメールで面談日時を決め、司法書士と面談を行ったうえで依頼をします。
③手続きの完了を待つ
司法書士に依頼したら、あとは手続きの完了を待つだけです。
自分で手続きを進めるケース
①遺言書の有無や内容を確認する
遺言書の有無によって後の手続きが変わってくるので、まずは遺言書が残されていないかの確認が必要です。
遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があり、遺言書の作成方法、検認の要否が異なります。
自筆証書遺言は、亡くなった方が自分で自筆した遺言書です。一般的には、金庫や土地の権利書などの重要な書類の保管場所を探すことになると思われます。
もし遺言書が見つかった場合、開封はせずに裁判所に届け出て、検認という手続きをうける必要があります。
検認は、裁判所が遺言書を確認する手続きですが、これをしておかないと相続登記に遺言書を添付することができません。
自筆証書遺言が見つからない場合、公正証書遺言が残されているケースもあります。
公正証書遺言は公証役場で作成する遺言で、公証役場で保管されています。遺言書の有無は公証役場で確認できるため、自筆証書遺言が見つからない場合は、念のため、公証役場に問い合わせた方が良いでしょう。
なお、公正証書遺言の場合、検認は不要です。
②相続人全員で遺産分割協議をする
遺言書がなく、法定相続分以外で相続財産を分ける場合は、相続人全員で遺産分割勝協議を行います。
遺産分割協議は、相続人全員で、相続財産を誰がどのように相続するかを話し合います。相続人全員の参加が必要ですが、現実に一つの場所に集まる必要はなく、文書や電話で意思を確認する方法でも大丈夫です。
そして、遺産分割協議が終わったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書に明確な形式はありませんが、亡くなった方の氏名や死亡日等・日付の記載・財産の記載・署名捺印など、最低限押さえておかなければならない点が多数あり、その点を守らなければ無効となってしまいます。
※遺産分割勝協議書の例
https://www.moj.go.jp/content/001387870.pdf#page=11
③相続登記に必要な書類を集める
相続登記では相続関係を証明する書類として、以下のような戸籍謄本などが必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本及び除籍謄本
- 被相続人の出生から住民票除票又は本籍地が記載された戸籍の附票
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 固定資産税評価証明書
- 相続関係説明図
※1 遺産分割協議をした場合は遺産分割協議書と印鑑証明書が必要
※2 遺言書に従う場合は検認済みの遺言書が必要
④相続登記に必要な書類を作成する
必要な書類がそろったら、相続登記の申請書を作成します。
申請書は以下の法務局のページにひな形が載っているので、分からない場合は参考にすると良いでしょう。
法務局:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
⑤法務局で手続きをする
相続登記の準備が完了したら、法務局で手続きします。
相続登記の申請方法は、窓口・郵送・オンラインの3つがありますが、慣れていない場合は、訂正が容易な窓口で申請するのがおすすめです。
※申請方法による違い
・窓口で申請
法務局に直接出向く必要はありますが、申請書に不備があってもその場で指摘してもらえ、申請書に押印したものと同じ印鑑があれば修正することが可能です。
・郵送で申請
管轄の法務局が遠方であっても、郵送による申請が可能です。
郵送する際の封筒には「登記申請書在中」と明記する必要があります。また、重要な書類を多く封入することになるため、書留郵便や赤色レターパックプラスなどを利用するとよいでしょう。
ただし、登記申請書に不備がある場合、訂正も郵送によりおこなうため時間がかかります。すぐに登記したい場合には不向きな方法です。
・オンラインで申請
登記はオンラインでも申請が可能です。オンラインであれば自分に都合のいいタイミングで窓口に出向くことなく申請が可能であるため、環境が整っているのであればオンライン申請がおすすめです。
登記・供託オンライン申請システムを利用した手続き
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/
マイナンバーカードを利用した手続き
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudosan_online03.html
3.不動産を相続するときにかかる費用
不動産を相続する場合、必要書類の取得費用や各種税金、手続きを依頼した場合にのみ発生する専門家への報酬があります。
必要書類の取得費用
戸籍等の必要書類を取得する際は手数料が必要です。なお、これらの書類は基本的に役所で取得します。
書類名 | 1通当たりの手数料 | 備考 |
戸籍謄本 | 450円 |
|
除籍謄本 | 750円 |
|
改製原戸籍 | 750円 |
|
戸籍の附票の写し | 300円 |
|
住民票 | 300~400円 | 自治体により異なる |
印鑑証明書 | 200~400円 | 自治体により異なる |
固定資産税評価証明書 | 200~400円 | 自治体により異なる |
司法書士への報酬
司法書士に相続登記を依頼した場合は報酬が必要です。
司法書士の報酬は各司法書士が自由に定めることになっており、登記原因によりある程度前後しますが、相場は6~10万円です。
ただし、この相場はあくまで1件の登記申請に対する報酬です。多くの司法書士事務所では、登記を行う物件の数、当事者の数、遺産分割協議書の作成業務によって報酬は変わってきます。
税理士への報酬
税理士に相続税の申告を依頼した場合の費用相場は、遺産総額の0.5~1.0%です。
例えば、遺産総額が1億円であれば報酬は50万~100万円です。
また、税理士事務所によっては、「相続人の数が多い」、「遺産に土地や非上場株式が含まれている」、「税理士に依頼した日から相続税の申告期限までの期間が3カ月以内」といった場合は加算報酬を定めています。
税理士に依頼する場合は、事前に事務所HPで報酬体系を確認すると良いでしょう。
4.不動産を相続するときにかかる税金
不動産を相続した場合、相続税と登録免許税が発生します。
相続税
相続税は、一定額以上の財産を相続した場合にかかる税金で、納付期限は相続から10カ月です。
相続税は、財産を相続したら必ず発生するわけではなく、相続した財産の額が、基礎控除額を超えた場合に発生します。
基礎控除額は次の式で求められます。
基礎控除額=3,000万+600万×法定相続人の数
相続人が配偶者と子供二人であれば、4,800万円までは相続税がかからないということです。
そして、相続財産が基礎控除額を超えた場合は、超えた額に応じた税率かけ、そこから一定の額を控除し、最終的な相続税額が求められます。
税額=(相続税評価額―基礎控除額)×税率―控除額
※税率は以下の国税庁のHPに載っています
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
なお、不動産の評価額は、土地の場合は「路線価」が、家の場合は「固定資産税評価額」が基準となります。
登録免許税
登録免許税とは、登記を申請する際に発生する税金で、相続登記の場合は次の式で求められます。
不動産の評価額 × 0.4
簡単な例として、相続により2000万円の不動産の名義変更をする場合、
「2000万×0.4%」で8万円になります。
なお、不動産の評価額は「課税明細書」または「固定資産税評価証明書」に記載されています。
課税明細書は、固定資産税が記載された書類で、不動産の諸州者に対し役所から毎年4月ごろに送付される書類です。 固定資産材評価証明書は、固定資産税の課税対象となる資産についてその評価額を証明する書類で、取得するには役所に請求する必要があり、その際には1通300~400円程度の手数料がかかります。
相続登記の免税措置
登記申請では登録免許税が必要ですが、土地の相続登記の場合は免税が受けられるケースがあります。
①相続により土地を取得した人が相続登記をしないで死亡した
例として、祖父Aが死亡して父Bが土地を相続したが、父B名義に相続登記をする前に父Bが死亡して孫Cが土地を相続した場合。
このようなケースではA→B→Cと順に登記をすることになりますが、A→Bの相続登記については登録免許税が免税となります。
②相続した土地の価格が100万円以下
相続した土地の価格が100万円以下であれば、登録免許税が免税となります。
不動産取得税
不動産を取得した際に課税される税金として、不動産取得税がありますが、相続の場合は課税されません。
ただし、遺言書で相続人以外が不動産を取得した場合や相続人への贈与・死因贈与など、不動産の取得原因が相続以外であれば不動産取得税が課されます。
5.不動産を相続したあとにかかる税金
また、不動産を相続したあとも、それを所有しつつける限り固定資産税、土地計画税が課税されます。
固定資産税
固定資産を所有している場合に発生する税金です。
固定資産税は、毎年1月1日時点で対象の固定資産を所有している場合に発生し、土地や家などの不動産も固定資産の対象となります。
1月1日時点で相続が発生し、名義変更を済ませておけば、新たな名義人に対して4月頃に納税通知書が送付されます。
都市計画税
固定資産税同様、毎年1月1日時点で不動産を所有している場合に発生する税金です。
6.不動産を相続したくないときにはどうすればいい?
これまで解説した通り、不動産を相続すると、手続き面・金銭面で様々な負担が生じます。
価値がある不動産であればよいのですが、中には価値がなく所有するだけで負担になる不動産もあり、そのような場合は相続放棄または不動産の売却・処分も一つの手です。
相続を放棄する
相続放棄は相続権を放棄する手続きで、これを行えば、価値がない不動産を相続する必要がなくなります。
ただし、相続放棄の注意点として以下が挙げられます。
- ①一部の財産のみの放棄は認められず、すべての権利・財産の相続ができなくなる。
- ②相続放棄をする場合は相続から3カ月以内に行う
- ③一部でも財産を処分すると、相続したとみなされて相続放棄ができなくなる
そのため、相続放棄をする場合は、一部の財産に着目するのではなく、全体のプラスの財産とマイナスの財産を比較したうえで、相続放棄をした方のメリットが大きいか、などを十分に検討する必要があります。
なお、相続放棄をしても、他の相続人が相続財産を管理できるようになるまで、その財産を管理する必要があるため(民法940条)、相続放棄をしたら終わりではなく、ほかの相続人とも相続財産の管理について連絡を取りましょう。
相続後に売却または処分する
相続放棄ができない場合は、一旦不動産を相続したうえで売却または処分する方法もあり、うまくいけば不要な不動産を現金化できます。
ただし、相続した不動産が空き家の場合、放置すれば傷んでいき、買い手が付きづらくなります。また、あまり空き家を放置しすぎると「特定空き家」に指定され、固定資産税の減税が受けられなくなります。
売却または処分をする場合は、早めに対応を進めていきましょう。
7.不動産を相続するときの注意点
最後に、不動産を相続する際の注意点について解説します。
相続について相続人全員で話し合う
不動産を誰がどのように相続するのか、相続人全員で話し合いましょう(遺産分割協議)。
遺産分割協議を行わないと、不動産は、相続人全員の共有状態になりますが、共有状態の不動産は共有者全員の同意がなければ処分できないため、不動産の流動性が下がり、価値にも影響が出てきます。
そのため、基本的には、相続人のうちの誰かが単独所有になるのが望ましいですが、他の相続人にとっては不公平となりこともあります。
不動産を相続しない代わりに現金を相続する、不動産を売却した原因を分割する、といった方法もあるので、相続人全員が納得する方法を協議すると良いでしょう。
相続登記はできるだけ早く済ませておく
不動産を相続したら、早めに相続登記を済ませましょう。
相続登記の申請自体は義務ではありませんが、名義変更をしておかないと、第三者に不動産の権利を主張できない、不動産を売却できない等のデメリットがあります。
また、令和6(2024)年4月1日以降は相続登記が義務となり、これをしないまま放置すると罰則が科せられる恐れがあります。
相続税の申告は10ヶ月以内に
相続税を申告する場合は、相続から10カ月以内に申告する必要があります。
相続税は、「配偶者控除」、「小規模宅地等の特例」のようの減税措置があり、知識がないと難しい部分があるため、基本的には税理士に相談すると良いでしょう。
8.まとめ
以上のとおり、不動産を相続した場合は
- 遺言書の確認
- 遺産分割協議
- 必要書類の収集
- 相続登記
- 相続税の申告
など、必要な手続きが多岐にわたります。
なかには期限までに行う手続きもありますが、慣れていない方にとっては時間のかかる手続きが多いです。
不動産の相続手続きをスムーズに進めたい方は、一度専門家に相談することをお勧めします。
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