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土地活用は節税効果アリ?相続税のしくみや注意点も解説

2022.10.19 税金対策 土地活用は節税効果アリ?相続税のしくみや注意点も解説

この記事を監修したのは、

天満 亮

所属 税理士法人ブライト相続 資格 税理士、行政書士

会計事務所勤務(約8年)、相続専門の税理士法人勤務(約7年)、相続専門の税理士法人設立(2019年~)

相続税の節税には、土地活用が効果的だと聞いたことがある方も多いでしょう。不動産業者も相続対策としてサービスを用意しているので、これから相続が発生する可能性がある方は興味があるのではないでしょうか。

そこで本記事では、土地活用が節税対策につながる理由や活用方法を注意点も交えて説明します。相続税対策で土地活用を検討している方は、参考にしてください。

そもそも相続税とは?

土地活用で相続税の節税方法を説明する前に、まずは相続税についての基本をおさらいしておきましょう。

相続税のしくみ

「相続税」は、亡くなった人(被相続人)の財産を引き継ぐ場合に、その財産にかかる税金のことです。相続人は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納税を行う必要があります。

相続税の控除について

相続税には「基礎控除」があります。基礎控除は、課税される財産から一定の額を差し引いて(控除して)税額を計算する制度です。この制度は無条件で適用されるので、申告は必要ありません。

控除される額(基礎控除額)は【3000万円+(600万円×法定相続人の数)】で求められます。

計算式にある「法定相続人」とは、民法に規定されている相続人のことです。控除額を計算する際には、相続放棄する相続人も人数に含めて計算します。

例えば、夫婦と子ども2人の家庭で夫が亡くなった場合、法定相続人は妻と子どもの合計3人です。このうち子ども1人が相続放棄をしたとしても、基礎控除額の計算は次のように放棄した人を含めて計算します。

3,000万円+(600万円×3)=4,800万円

相続放棄をした子ども1人を含んだ法定相続人3人で計算するので、基礎控除額は「4,800万円」になります。

相続税では、課税財産が基礎控除額を下回るときには、申告は必要ありません。上の例でいうと、課税財産が4,800万円以下であれば、申告も納税も発生しないことになります。

一方で財産が基礎控除を超える場合には、超えた分に対して税金がかかるため、申告と納税が必要です。

相続税を計算する方法

相続税の計算方法は、相続人が実際に取得した財産に税率をかけて求めるものではありません。まずは、相続人それぞれの法定相続分での課税額を計算し、合計額を出します。そして実際に相続した財産の割合で、相続税を再分割するという方法で計算します。

  1. 1.法定相続分での各相続人の税額を求める
  2. 2.1で求めた額を合計する(相続税の総額)
  3. 3.2で求めた相続税の総額を、実際に取得した財産の割合で分割する

「法定相続分」とは、民法で定められている相続財産の割合です。しかし、必ずしも法定に従って分割する必要はなく、遺言書がある場合や相続人同士で協議して決めることもできます。

土地活用で相続税を節税できる理由

相続税のおさらいをしてみて「土地活用がなぜ相続税の節税対策に有効なのか」と、さらに疑問が深まったという方もいらっしゃるでしょう。ここでは、土地活用で相続税を節税できる2つの理由を説明します。

相続税評価額が下がるから

相続した土地を貸し出したり、建物を建てて第三者に貸し出したりすることで、相続税評価額が下がり、節税効果が得られます。

「相続税評価額」とは、相続税だけではなく贈与税を計算する際にも用いられる基準価格のことです。土地の評価を出すときには「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法で計算します。

そして土地の評価は「地目」によって変わります。地目とは、その土地の利用法のことで、宅地・田・畑・山林のように分類されます。

この中でも宅地は以下のように細かく区分され、それぞれ評価方法が異なります。

  • 自用地:自分が使っている土地
  • 貸宅地:他人に貸している土地
  • 貸家建付地:貸し出し用物件を建て、他人に貸し出している土地

「自用地」は文字通り、自分が所有して使っている土地のことです。

「貸宅地」は、自分の土地に第三者が建物を建てて使用している土地のことを意味し、自分の土地にアパートを建てて経営している場合、その土地は「貸家建付地」になります。

貸家建付地と貸宅地の違いは、建物の所有が「自分か、第三者か」の違いです。

そして貸家建付地も貸宅地も住人や貸した土地に権利が発生し、所有者が土地を自由に使えないことから、土地の相続税評価額が自用地に比べて低くなります。そして、相続税評価額が低くなるとその分相続税が少なく計算されるため、節税対策に有効だといわれているのです。

小規模宅地等の特例が適用されるから

「小規模宅地等の特例」とは、一定の要件に当てはまる土地を相続した際に、一定面積まで評価額が減額される制度です。この特例制度では、宅地の評価額が50%または80%に減額されるので、条件を満たせば相続税を大幅に節税することができます。

制度の詳しい内容や条件については、後ほど詳しく説明します。

相続税評価額を下げる方法

ここまでは、土地活用でなぜ節税できるかについて説明してきました。では、具体的にどう活用すると節税になるのか、具体例を交えながら確認していきましょう。

建物は貸家にする

建物を相続した場合には、貸家にすれば相続税評価額を下げることが可能です。建物が貸家の場合は、「借家権割合」が適用され、評価額が30%減額されます。

この「借家権」とは、借主が不当に退去させられることがないよう、借主を保護するための権利です。この権利によって貸主は不動産に制限が出るため、その分評価額が低くなります。貸主にとっては厳しいことが多い借家権も、相続税対策においては有効な手段になるのです。

土地は貸家建付地にする

相続税を節税したいときには、土地を「貸家建付地」にする方法があります。貸家建付地とは、所有する土地にアパートやマンションなどを建てて活用している土地のことです。貸家建付地の評価額は、以下の計算式で求められます。

自用地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

前述したように土地の評価額は、路線価方式または倍率方式のいずれかで計算します。

「路線価」とは、道路に面した一般的な宅地の1㎡あたりの価格のことです。路線価がある地域では、この価格をもとに土地の評価額を計算します。

路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて求める「倍率方式」で計算します。

では、いくつか計算例を見てみましょう。なお、借家権割合は場所を問わず、全国一律30%です。

 

例1)自用地の評価額が3,000万円の土地に借地権割合が60%、入居率100%のアパートを建てた場合

計算式:3,000万円×(1-0.6×0.3×1)=2,460万円

 

例2)自用地の評価額が5,000万円の土地に借地権割合が60%、入居率50%のアパートを建てた場合

計算式:5,000万円×(1-0.6×0.3×0.5)=4,550万円

 

一部を賃貸、その他を居住用とした場合も貸家建付地の評価は可能です。その場合、賃貸部分の割合分の土地の評価のみが貸家建付地となります。

計算式を見てわかるように、貸家建付地では入居率によって評価が変わってくるため、高い入居率であるほど節税に効果的です。

出典:国税庁「令和4年分の路線価等について

現金の場合は建物を新築する

現金で財産を相続した場合には、建物を新築し、現金を不動産に変えることで節税効果が得られます。なぜなら、土地や建物の価格は実勢価格(時価)の7〜8割程度で評価されるからです。

例えば、1億円を現金で相続すると、相続時に現金の価値は額面通りとなるので、相続税評価額は1億円です。

一方で、1億円を使って建物を新築した場合には、その建物の評価額は7,000〜8,000万円と評価されるので、相続税を大きく抑えることができます。

相続税評価額を下げる際の注意点

相続税の納税負担を軽くするために、土地活用で相続税評価額を下げる方法はいくつかありますが、注意点もあります。

例えば、現金を不動産に組み替えて手持ちを少なくしたことで、遺産分割時に相続人同士でのトラブルになるケースがあります。現金を不動産に組み替える場合には、納税資金も考慮し、どのくらい残すべきかについても考えなくてはいけません。

また、評価減を目的にアパート経営をする際には、相続後も経営できるよう収益性もしっかりと考える必要があります。相続税を抑えられても、経営が赤字では意味がありません。

ここまでの内容を見てわかるように、相続税評価額を抑えるにはさまざまな知識が必要です。相続税を上手に節税するためには、専門家の力を借りることをおすすめします。

小規模宅地等の特例で相続税評価額を下げる方法

前章では、土地活用で節税できる方法を説明してきましたが、イメージできたでしょうか。ここからは土地活用ではなく、国が用意した特例を利用して節税する方法を紹介します。

小規模宅地等の特例とは?

前述したように「小規模宅地等の特例」は、要件を満たす土地を相続した際に、一定面積まで評価額を減額できる制度です。

小規模宅地等の特例は、相続税の納税が原因で、住んでいる場所や事業を行っている場所を手放さなくてはいけない人を救済するために設けられた特例です。

要件を満たした場合、50%または80%の減額を受けることができます。対象となるのは、亡くなった人(被相続人)が住んでいた、もしくは事業をしていた土地で、要件を満たす配偶者や親族が相続した場合です。

小規模宅地等の特例の適用条件

特例の適用を受けるには、土地の用途に関する要件と、相続する人の要件が必要になります。

土地の用途に関する要件は、下記の4つです。

  1. 特定居住用宅地等:被相続人が自宅として使っていた土地
  2. 特定事業用宅地等:被相続人が事業用として使っていた土地
  3. 特定同族会社事業用宅地等:同族会社の事業用に使っていた土地
  4. 貸付事業用宅地等:賃貸事業に使っていた土地

上記要件のポイントは「亡くなった人がその土地に関わっていたか」という部分です。また、相続する人の要件や減額割合は、土地の用途によってそれぞれ定められています。

 

1.特定居住用宅地等:被相続人が自宅として使っていた土地

配偶者または、同居している親族が相続する場合に適用されます。ただし、相続税の納税期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月)までにその土地を保有していなければいけません。

減額される割合は土地面積の330㎡まで80%となり、330㎡を超えた部分は通常の評価額で評価されます。

 

2.特定事業用宅地等:被相続人が事業用として使っていた土地

故人の親族で、相続税の申告期限までにその事業を引き継いで、事業を継続している場合に適用されます。また、その土地を相続税申告期限までに保有していなければいけません。

故人ではなく、親族が故人の土地で事業をしていた場合は、亡くなる直前から相続税申告期限までに事業を継続し、土地を保有していることが要件となります。減額割合は400㎡までは80%です。

 

3.特定同族会社事業用宅地等:同族会社の事業用に使っていた土地

相続税申告期限までにその法人の役員であり、土地を継続して保有している親族が相続する場合に適用を受けられます。

法人事業の場合の減額率は、400㎡まで80%です。

ただし、不動産貸付業や駐車場業のように、貸付事業に使われていた土地は含まれません。

 

4.貸付事業用宅地等:賃貸事業に使っていた土地

故人の親族で、貸付事業を相続税申告期限までに継続して行い、その土地を保有している場合に適用を受けられます。減額割合は200㎡まで50%となります。

上記を見てわかるように、小規模宅地等の特例には細かい要件があります。「相続した土地がどれに当てはまるかわからない」という方は、専門家に相談しましょう。

小規模宅地等の特例の注意点

相続税を大幅に減額できる小規模宅地等の特例ですが、注意点があります。それは、小規模宅地等の特例を適用して相続税を計算し、相続税が0円になった場合でも、特例を利用する場合は申告が必要な点です。

「相続税は0円だから申告しないでもいい」と勘違いし、申告期限である被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月までに申告をしないと、追徴課税される場合もあります。小規模宅地等の特例を利用するのであれば、申告が必要になることを覚えておきましょう。

また、小規模宅地等の特例を受けるには、その土地を誰が相続するか決定していなくてはいけません。つまり、遺産分割協議が終わっている必要があります。申告期限までに協議がまとまらない場合は、通常の評価額を納めてください。

なお、申告期限から3年以内に協議がまとまり、遺産分割手続きが完了した場合は、過払い分の相続税が返金されます。

相続税対策で土地活用をするときの注意点

ここまでの説明で、土地活用によって相続税評価が下がることで節税効果が得られることをおわかりいただけたのではないでしょうか。

しかし、安易に土地活用を始めると失敗する恐れもあります。ここからは、土地活用をするときの注意点を説明します。

土地の状態調査

土地活用を検討している場合は、まず土地の調査を行うことをお勧めします。古くからの土地や親が相続した土地などは、測量技術が今のように発達していなかったため、土地の面積が正確でない場合が多いからです。登記簿上の面積と実際の面積が異なる場合もあり、トラブルの原因になる可能性があります。

土地の調査とは、土地家屋調査士や測量士に依頼して土地の正確な面積を測量し、隣地との境界線をはっきりとさせる調査をいいます。土地の調査をしておけば、土地活用で売却などをする場合にスムーズに取引きが進むため、あらかじめ調査しておくと良いでしょう。

遺産の分割方法

相続でもっとも揉めるのは「遺産分割」です。特に不動産(土地)の場合は現金と違い、正確に分割しにくいため争いになることが多くあります。

そのため、相続税対策のために土地活用をしたことによって、相続人の間でトラブルが起こってしまうことも考えられるでしょう。

遺産分割で争いを避けるためには、以下のような対策を考える必要があります。

  • 分筆しやすい土地を購入、または所有している土地を整地しておく
  • 区分マンションを複数所有するなど、相続時に分割しやすくしておく
  • 遺産分割協議をしっかり行う

土地の場合は分筆して分割する方法があります。「分筆」とは、1つの土地を複数に分けて登記することをいいます。しかし、これも土地の場所によって、価値に差が出るため平等に分けることは難しいです。

争いを避けるためには、相続時に分筆することを念頭に置き、分筆しやすい土地を購入することが大切です。土地を相続する場合には、分筆時にできるだけ不平等が出ないための整地や、分割方法について話し合っておきましょう。

また、土地にアパートやマンションを建て、区分所有物件として分けるという方法もあります。

ただし区分所有の場合は、二次相続、三次相続で区分所有者が増えてしまうと、権利関係が複雑になり、建て替えなどができなくなる恐れがあります。相続は自分の代だけで起こるものではありません。子世代や孫世代が相続をすることも考え、分割方法を検討しましょう。

そしてどの方法を選んだとしても、争いを避けるために一番大切なのは「遺産分割協議」です。遺産をどのように分けるのか、相続後に揉めないためにしっかりと話し合い、全員が納得できる分割方法を考える必要があります。

しかし、相続人だけで話し合いをすると、なかなか話がまとまらないことも多く、結局争いになることが多いのも事実です。

土地活用の知識

土地活用は、活用方法を決めるまでにもするべきことがありますが、本当に大変なのは活用を始めてからです。

土地を活用するためには不動産経営の知識が必要になり、経営には手続きの手間もかかります。相続税対策のために安易にアパート経営を始めたものの、想像以上に経営に手間がかかり、後悔する方も多いです。

土地活用を成功させるために必要な知識を具体的に挙げると、周辺の相場や、どういった層に需要があるのかといったマーケティング、法律、税務の知識が必要です。

これらの注意点からわかる通り、土地活用は誰でも対応できるものではありません。土地の相続が発生する予定がある方は、知識のある司法書士や弁護士などのプロに相談することをお勧めします。

まとめ

土地活用は、相続税に対して大きな節税効果が期待できます。貸宅地や貸家建付地にして第三者に貸し出せば不動産収入も得られるので、とても魅力的に感じるでしょう。

しかし、相続税対策のための土地活用はメリットばかりではありません。遺産分割時にトラブルになる、不動産経営がうまくいかず損失が出るなどのリスクもあるのです。

リスクを回避しつつ上手に節税するためには、やはり人の手を借りるのが一番です。費用がかかりますが司法書士や弁護士、不動産会社などの専門家に相談することをお勧めします。

相続税対策で土地活用を検討している方は、実績豊富なみどり法務事務所へご相談ください。当事務所では、皆様になるべくストレス無く相続を済ませていただくために、定額の相続登記代行サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする相続に関する各種サポートを行っています。まずは、お気軽にお問い合わせください。

この記事を監修したのは、

天満 亮

所属 税理士法人ブライト相続 資格 税理士、行政書士

会計事務所勤務(約8年)、相続専門の税理士法人勤務(約7年)、相続専門の税理士法人設立(2019年~)

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