トラブル回避!相続した不動産を売却するときの手順と注意点を徹底解説!
2023.06.27 遺産相続不動産を相続したが、所在が遠方のため管理が大変、家族状況と家の間取りが合わないなど、様々な理由で相続した不動産を売却する選択肢を取ることもあるでしょう。
ただ、不動産の売却は、多くの人にとってあまり体験することのない取引なので、どのように進めてよいか分からない方もいると思います。
そこで、本記事では、相続した不動産を売却する手順、その注意点等を解説していきます。
相続した不動産を売却する手順
1.遺産分割協議をする
不動産を所有する親が亡くなってしまった場合、その不動産を売却するかしないかに関わらず、まずは遺産分割協議により、相続人のうちだれが不動産を所有するか、どのように不動産を分割するかを話し合います。
遺産分割協議をしないと、相続財産は相続人全員が共有している状態です。共有状態だと売却・処分をするのに共有者全員の同意が必要となるため、相続した不動産の売却を考えている場合は、共有は避け、特定の相続人の単独所有にするのが良いでしょう。
遺産分割協議が終わったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成してください。
なお、相続財産の分割方法は、共有以外に以下の3つがあります。
①現物分割
相続財産をそのまま分ける分割方法です。
不動産でも土地であれば、分筆により現物分割することが可能です。
※分筆とは、一つの土地を複数に分ける手続きです。
②代償分割
財産を相続した相続人が、代わりに他の相続人に現金を支払う方法です。
例えば、相続人が兄弟二人で相続財産が2000万円の家のみのケースで、兄が家を単独で相続する代わりに、兄が弟に1500万円の現金を支払います。
③換価分割
相続財産を売却して得られた現金を相続人間で分ける方法です。
2.相続登記をする
遺産分割協議で相続不動産の所有者が決まったら、不動産の名義をその人に変更するための相続登記を行います。
相続登記は、不動産の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人に変更するための手続きです。
被相続人から不動産の買主に直接名義を変更することはできないため、相続した不動産の売却を考えている場合は、相続登記は必須です。
3.相続した不動産の売却活動を行う
不動産の権利関係を確定・整理出来たら、あとは通常の不動産の売却と同様です。仲介先の不動産会社を選び、不動産の売却先を探していきます。
不動産の仲介がなくても不動産の売買は可能ですが、買主の選定、書類の準備、司法書士への依頼など必要な手続き全てを自分で行う必要があるため、不動産の取引に慣れていない限りは仲介を頼みましょう。
そして、不動産売却の流れは次の通りです。
①不動産会社に相談・媒介契約
不動産会社に、不動産を売りたい旨の相談をします。不動産の査定結果、担当者に問題がないのであれば、その不動産会社と媒介契約を結びます。
媒介契約とは、売却活動の報告頻度や不動産の売却が成立した場合の仲介手数料などを取り決める契約です。
②販売活動
媒介契約を結んだら、不動産の販売を進めていきます。これについては不動産会社主導で進んでいくので、売主側は不動産会社からの報告・問い合わせに対応するだけで良いでしょう。
③売買契約
不動産の買主が決まったら、売主と買主の間で不動産の売買契約を結び、手付金の授受や決済・引き渡しの日程の取り決めなどを行います。
売買契約は、売主・売主の仲介業者と買主・買主の仲介業者が一堂に会して行うのが一般的です。
④決済・引き渡し
売買契約の際に決定した日時に、不動産の決済・引き渡しを行います。
決済では、手付金分を差し引いた残りの代金の支払いや、仲介業者への手数料の支払い、司法書士への登記費用の支払いなどを行います。
決済が完了すれば、その日のうちに司法書士により所有権の移転登記が行われます。
⑤確定申告
不動産の売却価格により譲渡所得が出た場合は確定申告が必要となります。
譲渡所得は次の式で計算します。
譲渡価格―(取得費+譲渡費用)―特別控除額=課税譲渡所得金額
取得費は不動産を購入した当時の価格ですが、相続不動産では当時の取得費が不明の場合があり、その際は概算取得費として譲渡価格の5%を取得費として計算します。
4.必要があれば売却代金を分配する
遺産分割協議時に換価分割の方法を選んでいた場合は、売却代金を相続人間で分配し、相続不動産の売却手続きは完了となります。
相続した不動産を売却するときの必要書類
相続登記に必要な書類
※以下の書類はあくまで一例です。
相続のパターンによって必要な書類が微妙に変わるため、不安であれば司法書士などの専門家に相談をしてください。
書類名 | 取得先 |
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本及び除籍謄本 | 役所 |
被相続人の住民票除票又は本籍地が記載された戸籍の附票 | |
法定相続人全員の戸籍謄本 | |
不動産を取得する相続人の住民票 | |
固定資産税評価証明書 | |
印鑑証明書 | |
遺産分割協議書 | 自作 |
相続関係説明図 |
不動産会社に提出する書類
〇=必須、△=あれば望ましい
書類名 | 戸建て | マンション | 土地 |
身分証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
固定辛酸税納税通知書および固定資産税評価証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
登記簿謄本 | 〇 | 〇 | 〇 |
登記権利証または登記識別情報 | 〇 | 〇 | 〇 |
土地測量図、境界確認書 |
| 〇 | 〇 |
建築確認済証および検査済証 | 〇 |
|
|
建物の図面 | 〇 | 〇 |
|
設備の説明書 | 〇 | 〇 |
|
建築設計図書・工事記録書 | △ |
| △ |
マンションの管理規則・使用規則 |
| 〇 |
|
マンションの維持費関連書類 |
| 〇 |
|
耐震診断報告書 | △ | △ |
|
アスベスト使用報告書 | △ | △ |
|
購入時の契約書 | △ | △ | △ |
引き渡し時に買主に渡す書類
書類名 | 戸建て | マンション | 土地 |
身分証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
印鑑証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
実印 | 〇 | 〇 | 〇 |
住民票 | △ | △ | △ |
銀行口座書類 | △ | △ | △ |
ローン残高証明書 | △ | △ | △ |
物件のパンフレット | △ | △ | △ |
相続した不動産を売却するときにかかる費用
相続した不動産を売却する場合は、相続登記時と不動産の売却時にそれぞれ費用が発生します。
相続登記にかかる費用
①必要書類の取得費
戸籍謄本など、役所から取得する書類については手数料が必要です。
相続関係にもよりますが、相続登記1件で合計7000円前後いなります。
書類名 | 1通当たりの費用 |
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本及び除籍謄本 | 450円 |
被相続人の住民票除票又は本籍地が記載された戸籍の附票 | 300円 |
法定相続人全員の戸籍謄本 | 450円 |
不動産を相続する相続人の住民票 | 400円 |
固定資産税評価証明書 | 300円 |
②登録免許税
登記をする際には、登録免許税という税金が発生します。
不動産の所有権に関する登録免許税は、「不動産の評価額×税率」で決まり、相続登記の場合の税率は「0,4%」です。
例として、2000万円の土地について相続登記をする場合は次の通りとなります。
2000万 × 0.4% = 8万円の登録免許税
③司法書士への報酬
相続登記を司法書士に依頼する場合は報酬下必要です。金額は司法書士によって異なりますが、相続登記1件当たりの相場は8万円前後です。
司法書士に依頼せずに自分で相続登記をすることもできますが、書類の収集や登記手続きをすべて自分で行う必要があるため、基本的には司法書士に依頼することになります。
不動産の売却にかかる費用
項目 | 費用の目安 |
仲介手数料 | 売買価格の3%+6万円+消費税 |
収入印紙代 | 数千円~数万円(物件の価格により変動) |
ハウスクリーニング費用 | 10万円前後 |
敷地の測量費 | 40円万~80万円 |
建物の解体費 | 100万円~300万円 |
廃棄物の処理費 | 30万円前後 |
引っ越し費用 | 数万円~数十万円 |
検認済証明書 | 原本が必要 |
相続した不動産を売却する前の注意点
不動産の名義変更をしなければ売却できない
不動産を売却する手順の説明でも少し触れましたが、被相続人(亡くなった方)から不動産の買主に直接名義を変更することはできません。
そのため、相続した不動産の売却する場合は、前提として相続登記は必須です。
なお、法改正により令和6(2024)年4月1日以降は、相続登記を行うことが義務となります。これは、2024年4月1日以降、相続があったことを知った日から3年以内に相続の登記をしなければならないというもので、2024年4月1日より前に相続があった場合でも、同日より3年以内に相続の登記をする必要があります。
そのため、当面の間は相続した不動産を売却する予定がない場合であっても、相続登記は早目に済ませておきましょう。
不動産の分割方法を話し合っておく
不動産の売却により得られた金銭をどのように分配するか、遺産分割協議の段階でしっかりと決めておきましょう。
また、売却後、「この金額なら売りたくなかった」という相続人が表れてトラブルにならないよう、最低売却価格を決めておくのも重要です。
相続した不動産を売却するときの注意点
相続人のうち1人が窓口係になる必要がある
仲介業者とのやり取りは、相続人のうち一人を窓口にして行いましょう。
相続人が複数いる場合に窓口を決めないと、買主側から誰に連絡すればいいか分からない、人が変わるたびに仲介業者から説明をしなければならないなどの不都合が生じ、売買がスムーズに進行しません。
希望価格で売却できないこともある
仲介業者を挟んだとしても、不動産が希望価格で売れるとは限りません。買主側から値下げの話が出ることもあるので、売却するためには希望価格を下げる必要があるケースもあります。
共有名義の場合は共有者全員の署名捺印が必要
売買契約の際は実印による署名捺印と印鑑証明書が必要となりますが、不動産が共有名義の場合は、共有者全員の分が必要です。
共有者の誰かにさらに相続が発生するとその分共有者が増え、遺産分割協議や署名捺印のやり取りが面倒になってしまいます。
そのため、売却予定の不動産の所有者は単独にしておくのが望ましいでしょう。
売却金によって譲渡所得税がかかる
不動産の売却により譲渡所得が発生すれば譲渡所得税が発生します。
譲渡価格―(取得費+譲渡費用)―特別控除額=課税譲渡所得金額
取得費は不動産を購入した当時の価格ですが、相続不動産では当時の資料がなく正確な取得費が不明なこともあります。その場合は概算取得費として譲渡価格の5%を取得費として計算します。
まとめ
相続した不動産を売却するには、「相続登記」と「不動産の売却」の二つの手続きが必要です。多くの方にとってどちらも馴染みのない手続きであるため、自身ですべてをやろうとすると多大な手間と労力がかかり、相続人間のトラブルに発展するケースもあります。
相続した不動産の売却を考えている方は、早い段階で専門家に相談をしてください。
みどり法務事務所では相続でお悩みの皆様に、安心でリーズナブルな相続を済ませて頂くために、定額の不動産の名義変更サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする遺産相続に関する各種サービス(ゆうちょ・みずほ・三井住友・三菱UFJ、りそななどの各金融機関の相続に伴う預貯金の解約払戻し、その他相続に関する裁判所提出書類作成サポートなど)を行っています。
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