土地相続で兄弟トラブルに!揉める原因や事例、トラブルの回避方法は?
2023.06.27 遺産相続土地、家を所有する親が亡くなってしまった場合、その不動産をどのよう相続するか、兄弟間で揉めてしまうケースがあります。
相続のパターンは様々であり、揉めてしまう原因も同様のため、話をまとめるには事案に応じた対応が必要となります。
この記事では、相続時の揉めごとの原因やその対策などを解説していくので、事前に備え、相続時のトラブル発生を防ぎましょう。
目次
土地相続で兄弟トラブルが起こる5つの原因
まず、相続時に兄弟間でトラブルが発生しやすい5つの原因を挙げていきます。
遺言書がなかった
遺言書がない場合は、相続財産をどのように分割するかで意見が割れ、トラブルに発展しやすいです。
遺言書は、被相続人(亡くなった人)が、相続財産をどのように相続させるかを書き残した文書です。これは親が最後に残した意思表示のようなものなので、遺族はその内容を尊重し、遺言書通りに相続財産を分けることが多いです。
遺言書がない場合に相続財産を分割する場合は、相続人同士で遺産分割協議を行うことになりますが、相続財産の内容によっては公平に分割することができないこともあるため、兄弟間で互いの利益が衝突し、トラブルに発展しやすいと言えます。
相続できるものが土地だけだった
相続財産が土地だけなど、処分が困難な財産のみであることも兄弟間で揉めやすい原因です。
相続財産が、土地以外に現金や価値のある宝石などの動産があれば、金額的に完全に公平でなくても、兄弟がそれぞれ財産を相続することができます。
これに対し相続財産が土地だけだと、兄弟全員が相続財産を得ることが難しくなり、不公平が生じやすいため、話し合いの過程でトラブルになることがあります。
なお、土地を兄弟全員で相続して共有状態になることは可能ですが、その場合、土地を処分・売却する際に兄弟全員の同意が必要となるため、話し合いによるトラブルを先送りにする形となり、共有で相続することはお勧めしません。
生前に聞いていた条件と変わっていた
生前に親から聞いていた財産の額が、相続が発生した時点で変わっている場合、揉める原因になりやすいです。
例として、兄弟間で、兄には不動産を、弟には現金1000万円を相続させると親から聞いていたが、相続が発生した後に現金数十万~数百万になっていた、というケースです。
親が亡くなる前の介護・医療費や葬式などで予定外の出費が発生し、子供に相続させるつもりであった現金が目減りするということは十分にあり得ます。
このようなケースでは、十分な現金を相続できるから不動産は相続しなくてもいいと考えていた側が、納得いかずに不動産の権利を主張することになります。
寄与分の主張が出た
相続人の一部から寄与分の主張が出た場合、遺産分割協議が上手くまとまらないことがあります。
寄与分とは、相続人が、被相続人の相続財産の増加に貢献した場合に、その貢献を考慮してもらえる相続財産が増える、という民法上の制度です。
例えば、「長年にわたり親の介護を一人で行った」、「親の生活費を負担していた」などです。
寄与分が認められるかどうかに明確な基準はないため、法律の専門家を介さずに兄弟間のみで話し合い、トラブルに発展しやすい事例です。
特別受益の主張が出た
相続人の一部から特別受益の主張が出た場合も、遺産分割協議が上手くまとまらないことがあります。
特別受益とは、相続人が、被相続人から生前に生前贈与などを受けた場合に、相続財産を一部前払いされたものとして、その分もらえる相続財産が減る、という民法上の制度です。
例えば、「住宅の購入費用を援助してもらった」、「多額の借金を肩代わりしてもらった」などです。
特別受益は、寄与分よりかは基準が明確ですが、金額が同じでも事案によっては特別受益にあたらないと判断されることもあるため、これも、法律の専門家を介さずに兄弟間のみで話し合うとトラブルに発展しやすい事例と言えます。
土地相続でよくある兄弟トラブル事例
続いて、土地相続の場面でよくある兄弟間のトラブルの事例を紹介します。
兄弟間で平等に分けられない遺産しかなかった
遺産が土地だけなど、兄弟間で平等に分割するのが難しい遺産しかない場合、どのよう世にそれを相続するかで揉めてしまい、トラブルになります。
分割が難しい相続財産のみだと、どうしても兄弟の一方のみが得をする結果になりやすいです。このようなケースの対策として、土地を現金に変える・土地を相続した方が他方に現金を払うなどいくつかの分割方法がありますが、それらについては次項で詳しく説明します。
兄弟から相続放棄を求められた
兄弟の一人が、自分一人で親の介護を行ってきたため、自分だけが土地を相続すると主張してほかの兄弟に相続放棄を求めた結果、対応を巡ってトラブルになることがあります。
相続放棄とは、相続人が家庭裁判所で相続を放棄する意思を示すことです。これにより財産を相続する権利をすべて失い、ほかの相続人の相続割合が増えることになります。
相続放棄をするかどうかは相続人自身が決めることで強制はできないため、兄弟から相続放棄を求められてもすぐに決めるのではなく、十分に検討をしてください。
ただし、相続放棄は、相続が発生してから3カ月以内に行う必要があります。話し合いがもつれてこの期間内に結論を出すのが難しいのであれば、家庭裁判所に期間の伸長を求めると良いでしょう。
遺言の内容に偏りがあった
相続財産の多くを土地が占める事例で遺言書が残されていたが、特定の兄弟にのみ土地を相続させる内容であったため、他の兄弟の不公平感からトラブルになります。
このようなトラブルを避けるには、偏りがないように遺言書を作成するのが一番ですが、既に相続が発生したあとであれば遺留分侵害請求で調整することになります。
遺留分とは、一定範囲の相続人に認められている最低限の相続財産の割合です。遺言の内容が、この遺留分を侵害するほどのものであれば、多くの財産を受けた兄弟に対し遺留分の限度で金銭の支払いを求めることが可能です。
相続した土地を兄弟で分ける5つの方法
土地のように分割が難しい相続財産であっても、複数の分割手段があります。
現物分割
土地がひとつであっても、その土地を分筆すれば兄弟間で分割して相続することができます。
分筆とは、一つの土地を複数に分ける手続きです。
ただし、土地の大きさや立地によっては、土地を分筆することによって価値が下がることがあるため、兄弟間で完全に公平に分けることは難しいと言えます。
土地を分筆する場合は十分に検討が必要でしょう。
代償分割
兄弟の一人が土地を相続し、代わりに他の兄弟に現金を支払う方法です。
例えば、兄弟が二人で相続財産が3000万円の土地のみの場合、兄が土地を単独で相続する代わりに、兄が弟に1500万円を支払います。
この方法は、土地をそのまま活用でき、兄弟間の公平を保てますが、土地を相続する側に資産が必要となります。
換価分割
土地を売却して得られた金銭を分ける方法です。
現金であれば公平に分割することができるため、兄弟間の公平が保てます。
しかし、土地を売却することが前提となる以上、土地自体にある程度の価値は必要でしょう。
また、換価分割では相続人全員の同意が必要であるため、先祖代々の土地であれば、そこに住み続けたいという思いから納得がいかない兄弟が出てくる可能性があり、このようなケースでは手続きが困難になります。
共有
土地はそのままで、兄弟全員で共有相続する方法です。共有であれば、兄弟全員がその土地を利用することができます。
この方法は一見公平ですが、土地が共有の場合、売却や処分をする際には共有者全員の同意が必要となり、土地の流動性が下がります。
また、兄弟の一部が死亡した場合はその持ち分についてさらに相続が発生し、共有者が増えていくことになります。
このことから、土地の共有はデメリットが多く極力避けるべきでしょう。
相続放棄
相続放棄により、他の兄弟に土地の権利を譲る方法です。
相続放棄が認められると初めから相続人でなかったと扱われ、他の相続人の相続割合が増えるため、親の介護をしてもらったため相続財産を譲ってもいいと考えている場合は、相続放棄も一つの手段です。
ただ、相続放棄は特定の財産のみには認められず、プラスの財産・マイナスの財産を含むすべての相続財産の権利を失うことになります。場合によってはほかの相続人に親の債務を負担させることになるため、相続放棄をする場合はほかの相続人と十分に話し合いましょう。
相続した土地を現物分割で分筆する場合の注意点
前項で土地を分筆する現物分割について触れましたが、その注意点について詳しく説明します。
土地の価値が下がってしまうことがある
分筆は一つの土地を分ける以上、元の土地よりかは価値が下がります。
単純に価値が半分になるだけなら良いですが、分筆したことにより最低敷地面積を下回り建物が建てられない、分筆した一部の土地だけ接道義務を果たせなくなるなどで、価値が著しく下がってしますこともあります。
平等にすることが難しい
土地の形状・立地によっては、単純に面積の半分に分筆したとしても、前述のように道路に設置できない土地が生じる場合があるため、土地の価値を平等にすることは非常に難しいです。
条例によって分筆できないケースがある
都道府県の条例によっては、一定の面積未満の分筆を規制しています。
土地を売却して換価分割する場合の注意点
土地を売却して得られた金銭を分ける「換価分割」の注意点です。
譲渡所得税が発生することがある
換価分割のためであっても、土地の売却により譲渡所得が発生すれば譲渡所得税が発生します。
譲渡所得は次の式で計算します。
譲渡価格―(取得費+譲渡費用)―特別控除額=課税譲渡所得金額
取得費は土地を購入した当時の価格です。相続の場面では当時の資料がなく正確な取得費が不明の場合があり、その際は概算取得費として譲渡価格の5%を取得費として計算することになります。
売却価格を兄弟間で話し合っておく
換価分割をする場合は、最低売却価格をあらかじめ決めておきましょう。
換価分割では共有状態の土地を売却することになりますが、この場合は兄弟全員の同意がなければ土地を売却することはできません。
また、土地の売却交渉は一部の兄弟が進めることが多く、あらかじめ最低売却価格を決めておけば、都度、ほかの兄弟に確認する必要もないため、スムーズに交渉を進めることができます。
窓口役になった人に謝礼を渡す
土地の売却交渉では窓口を一本化した方が、不動産会社や買主側からの連絡先がはっきりするため、よりスムーズに進みます。ただ、交渉は不動産会社や買主との調整など気苦労が絶えない場面が多いです。
そのため、窓口を担当してくれた兄弟には、分割する現金の割合を少し多くするなど謝礼を渡した方が、現金分割時のトラブルを避けることができます。
土地を相続放棄する場合の注意点
相続放棄の注意点について改めて説明します。
遺産を相続する権利が一切なくなる
相続放棄をするうえで、事前に知っておかなければならないのが、「相続財産すべての権利を失う」という点です。
土地の相続方法について揉めてしまい、これ以上のトラブルを避けるため相続放棄をした場合、自身は土地についてだけ権利を放棄したつもりでも、土地を含めた他の現金などの財産も含めてすべての権利を失ってしまいます。
特定の財産のみの権利を放棄するのであれば、相続放棄ではなく、遺産分割協議書で「〇〇の権利は放棄する」と明記するのが良いでしょう。
期間制限がある
相続放棄は、自身に相続があったことを知ってから3カ月以内にする必要があります。
ただ、兄弟間で相続について揉めた場合、3カ月では話がまとまらないこともあるでしょう。このように、3カ月以内に相続放棄をするかどうか直ちに決められない事情がある場合は、家庭裁判所に申述すれば、この3カ月の期間を延ばしてくれることがあります。
生前からできる土地相続で兄弟間トラブルを避ける方法
兄弟間の相続トラブルについて原因や事例を解説してきましたが、もちろんトラブル自体を避けることが一番です。
最後に、トラブルを避ける方法について解説します。
遺言書を作成してもらう
親に遺言書を残してもらうことが大事です。遺言書は親の最後の意思表示と言えるため、その内容を尊重し、兄弟間でのトラブルを避けやすい方法です。
ただし、前述の通り、遺言の内容に偏りがある場合は、不公平感から揉め事に発展しかねないため、そのような場合は遺言書を残すとともに親兄弟で話し合うこと、または遺留分を侵害するような偏りのある遺言にしないことが必要です。
生前贈与をしておく
生前贈与であれば、確実に親から子に財産を承継させることができます。
生前贈与は特別受益にあたる場合があるため、これを避けたい場合は、親が「持ち戻しの免除」の意思表示をする必要があります。
これは、特別受益が認められても、その分の財産が相続財産に持ち戻されて計算されないため、生前贈与を受けた相続人の取得割合が減ることはなくなります。
専門家に相談する
あらかじめ司法書士や弁護士などの専門家に相談し、対策を立てるのが肝要です。
専門家であれば法的な見地から正しい相続分や遺言書の内容をアドバイスできるため、親兄弟間で正しい知識を理解することで、無駄な言い争いを避けることができます。
また、事前に専門家に総則関係や遺産に内容を相談しておけば、兄弟間でトラブルに発展した際にスムーズに対応することが可能になります。
まとめ
相続時は大きな金額が動くことが多く、仲が良かった兄弟間でも揉めることは少なくありません。
特に、相続財産が土地だけのような場合、兄弟間の公平を保ったまま分割するのが困難であるため、それぞれの主張が対立しやすくなります。
専門家であれば、法的な知見から有効な対応を立てられるため、トラブルが発生した場合は初期の段階で相談をしてください。
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