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相続手続きの強い味方!戸籍[広域交付制度]を一挙解説

2024.03.06 遺産相続

この記事を監修したのは、

辻本 歩

所属 司法書士法人みどり法務事務所 愛媛県司法書士会 会員番号 第655号 認定番号 第1212048号 資格 司法書士

就職、結婚、パスポート、相続手続きなど、社会生活における各場面で戸籍の提出を求められたことは誰しも一度や二度あるのではないでしょうか?そして、自分の戸籍だけならまだしも、自分以外の家族についての戸籍も要求される相続手続きのようなケースでは、戸籍を集めるのに苦労された経験がおありの方もいるかもしれません。

そんな皆様に朗報です!

令和6年3月1日に戸籍の取り扱いに関する基本的なルールを定めた戸籍法が改正され、「広域交付制度」という新制度が導入されました。そしてこれにより、戸籍の「取得」や「届出」の手間が大幅に緩和されました。

この記事では、広域交付制度の導入により戸籍の取り扱いにつき具体的に何が変わったのか。どのように戸籍の「取得」や「届出」が便利になったのか。広域交付制度の「メリット」「デメリット」につき分かりやすく解説いたします。戸籍は誰の生活にも欠かすことのできない公的証明書になりますし、特に令和6年4月1日に施行された「相続登記の義務化」に伴い相続登記をご検討されている方にとってはとても関係が深い新制度になりますのでどうぞご覧いただき、各種お手続きの参考にしていただければ幸いです。

相続登記の義務化について詳しく知りたい方は、【法務局の[相続登記の義務化]が分かる!2024年4月以降の罰則や対策をかんたん解説!】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参照下さい。

戸籍の広域交付制度とは?

広域交付制度とは令和6年3月1日に戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が施行されたことに伴い運用が開始された戸籍に関する新制度のことを指します。具体的には、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍謄本、除籍謄本(※)を請求できるようになりました。

※コンピュータ化されていない一部戸籍・除籍(何らかの理由でPDFのような画像データ化することができていない戸籍等)を除きます。

※一部事項証明書、個人事項証明書(いわゆる戸籍抄本)は請求できません。

従来の制度

新制度(広域交付制度)

出典:法務省ウェブサイト

広域交付制度導入で何ができるようになったの?

従来の制度の下では、戸籍は(その戸籍の本籍地欄に記録されている)「本籍地」のある市区町村の役所においてしか取得することができませんでした。そこで、本籍地が遠方にある方についての戸籍を取得しようとする際は、わざわざその本籍地のある市区町村の役所に足を運び、または郵送請求するなど、時間と手間をかけて取得する必要がありました。

一方、広域交付制度では、本籍地「以外」の市区町村の窓口でも戸籍謄本を請求できます。さらに、必要な戸籍の本籍地が全国各地に点在していたとしても、お近くの市町村の窓口でまとめて請求することができるため、従来と比べると戸籍の取得が格段に楽になったといえます。

広域交付制度 最大のメリット

広域交付制度の最大のメリットは、本籍地以外の市区町村にお住まいでも、請求する方ご本人がお近くの役所の窓口に足を運びさえすれば、広域交付制度で取得できる範囲の戸籍を「一度に」「まとめて」集められるということです。

従来の制度では必要な戸籍の本籍地以外にお住まいの方は、その本籍地の市区町村の役所までわざわざ足を運んだり、郵送請求せざるを得なかったことを考えると、たとえすべての戸籍が集まらないとしても、格段に戸籍収集の手間と時間を節約できるようになったといえるでしょう。

特に令和6年4月1日より相続登記の義務化が開始されたことに伴い、多くの方にとって戸籍収集は身近で逃れがたい手続になるかと思われますので、それに先立ってこのような新制度が導入されたことは、相続登記をする方々にとっても、我々専門家にとっても、有難いことです。

広域交付制度 3つのデメリット

広域交付制度のデメリットは次の3つです。

× 相続手続きなどにおいてきょうだい・甥姪の戸籍を請求できない

× 代理人によって請求することができない

× 郵送請求することができない

ただし、広域交付制度はあくまで従来の制度にプラスオンされた新制度ですので、上記3つのデメリットは従来型の制度を利用することで補うことはできます。

また、そもそも広域交付制度は従来の制度プラスオンされた制度なのでこれらをデメリットというべきではないかもしれませんね!いつかはこの点も改善されることを期待しましょう!

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従来の制度との違いは?押さえておくべきポイント4選!

ここでは従来の制度と広域交付制度との違いについて解説してまいります。

なお、広域交付制度は従来の制度にプラスオンされたものになりますので、従来の制度と併用できますのでご安心ください。

1 戸籍の請求先となる役所はどこ?

まず、戸籍の請求先となる役所についてです。

従来の制度では「本籍地」においてしか戸籍を取得できません。

一方、広域交付制度では「本籍地以外」でも戸籍を取得することができます。

 

2 誰が(の)戸籍を請求できるの?

次に「誰が」または「誰の」戸籍を請求できるのか?というお話です。これは戸籍に記載されている方との関係(続柄)によって決まっています。

従来の制度において戸籍を請求できる方は、原則として、その戸籍に記載されている方ご本人、その方の配偶者(妻・夫)、直系尊属(父母・祖父母)、直系卑属(子・孫)に限られます。「戸籍に記載されている人から見てどんな関係の方が請求できるのか?」というのが、法律的な請求権者の決め方なんですね。

少しわかりにくいので、「請求する人から見て誰の戸籍をとれるのか?」という目線で捉えなおすと、ご自身の戸籍、夫・妻の戸籍、(祖)父母の戸籍、子・孫の戸籍ということです。

さらに例外として、相続手続きの中で金融機関や法務局に提出する場合など一定の限られた目的においては、その目的の範囲内の戸籍であれば、誰もが請求することが出来ます(これ以降、「第三者請求」と表現します。)。例えば相続手続きのためにきょうだいの戸籍が必要になった場合に、そのきょうだいの戸籍を取得できるということです。

(原則としてはきょうだいの戸籍はとれませんでしたよね!)

一方で広域交付制度では、第三者請求をすることができません。つまり、相続手続きにおいてきょうだいの戸籍が必要になった場合に、きょうだいの本籍地が遠方であったとすると、そのきょうだいの戸籍についてはお近くの役所で取得できるのではなく、従来通りその役所まで足を運んだり郵送請求する、またはきょうだい自身に取得してもらって郵送してもらう必要があるということです。

また、相続手続きは司法書士や弁護士といった専門家に任せることが一般的と思われますが、司法書士等が職務上与えられた権限によって広域交付制度を利用することもできません。

言い方を変えると、本当に戸籍に記載されている方(の)ご本人、その配偶者(妻・夫)、直系尊属(父母・祖父母)、直系卑属(子・孫)しか利用できないということです。

出典:法務省ウェブサイト

 

3 代理人によって請求することは出来るの?

では、代理人によって請求することは出来るでしょうか?

従来の制度は委任状さえあれば代理人が請求することもできましたので、例えばご本人が平日の日中お仕事で役所に行けない場合でも、代理人が代わりに請求するということもできました。

一方で、広域交付制度を利用できるのは、請求できる方ご本人だけです。つまり、代理人が手続きをすることはできません。

 

4 郵送で請求することは出来るの?

最後に請求の方法です。

従来窓口で請求できるのはもちろん、遠方であれば郵送請求という方法もあります。

しかし、広域交付制度では窓口請求しか認められておりません。よって、ご高齢の方等お近くの役所まで足を運ぶことが困難な方や、最寄りの役所までの距離が遠い場所にお住まいの方も郵送請求による広域交付制度は利用できないということです。

 

従来の制度

広域交付制度

本籍地以外の役所での取得

×

請求できる方

[原則]

戸籍に記載されている方との関係

〇本人

〇その配偶者(妻・夫)

〇直系尊属(父母・祖父母)

〇直系卑属(子・孫)

 

[例外]

〇きょうだい・甥姪など

ただし、自己の権利を行使したり、国や地方公共団体に提出する場合等戸籍法10条の2第1項各号に定める場合に限る

(例)相続手続きのために法務局に提出する必要がある場合

〇司法書士、弁護士等

[従来の原則のみ]

戸籍に記載されている方との関係

〇本人

〇その配偶者(妻・夫)

〇直系尊属(父母・祖父母)

〇直系卑属(子・孫)

 

×きょうだい・甥姪など

×司法書士・弁護士等

代理人による請求

×

郵送請求

×

 

広域交付制度の利用方法

ではここで、広域交付制度の利用法について確認していきましょう。

1 請求できる方

戸籍謄本等に記載されている方ご本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母等)、直系卑属(子、孫等)。

※お近くの市区町村の窓口に直接出向く必要があります

※(父母の戸籍から除籍した)兄弟姉妹の戸籍謄本等は請求できません。

※代理人による請求はできません

 

2 手数料

戸籍謄本(戸籍の全部事項証明書)       450円/通

除籍謄本(除籍の全部事項証明書)        750円/通

改製原戸籍謄本                                  750円/通

※戸籍抄本(個人事項証明書)は請求できません

 

3 本人確認について

窓口で戸籍を請求するにあたっては本人確認が必要となりますので、次のような顔写真付きの公的証明書が必要となります。厳格な本人確認が必要であるため郵送請求は認められなかったということですね。

・運転免許証

・マイナンバーカード

・パスポート

・在留カード

 

4 注意点

広域交付制度は令和6年3月1日に始まったばかりの新制度です。また、利用者が殺到したことにより初日にはシステムエラーが発生する等トラブルも発生しています。

発行に時間がかかることがあり、最悪当日中の発行が出来ないことも考えられますので、しばらくの間は時間に余裕をもって本制度をご利用いただくのが適切でしょう。

広域交付制度でも解決しきれなかった課題とは?

常日頃相続実務に携わる専門家として実感する戸籍収集の一番の負担は、やはりその手間です。基本的に最寄りの役所ですべての戸籍が集まることは稀であり、多くの場合は全国各地の市区町村に郵送請求し、一部返ってきては、またその続きの戸籍を別の市区町村に請求する…といった作業の繰り返しです。

そこで、広域交付制度の導入により、これら戸籍収集の煩雑な手続きから一切解放されるかもしれないという淡い期待を抱いていたわけですが、残念ながら広域交付制度で請求できる戸籍の範囲には限りがある点、また司法書士が職務上の権限で広域交付制度を利用できないためご依頼者様にご協力いただく必要があるという点については、その限度で戸籍収集の課題を解消しきれなかったともいえると思います。

ただし、広域交付制度が及ばない部分に関しては従来の制度でカバーすることができますし、トータルで見れば戸籍収集の手間が大幅に減少し、さらに郵送請求する際の決済方法に用いられる定額小為替の発行手数料(450円の小為替を発行するのに200円も手数料かかるのです…)を負担いただく必要が無くなる点も考慮すると経済的な負担も減少するので、時間的にも経済的にも戸籍を必要とする方の負担が減少したことは間違いありません。

戸籍法改正で広域交付制度以外にも便利になったこと2選!

実は今回の戸籍法改正で新たに始まった制度は広域交付制度だけではありません。

そこで、広域交付制度ほどではないかもしれませんが、皆様の生活に関係する改正点について解説いたします。

1各種社会保障手続きにおける戸籍謄抄本の提出の省略

各種の社会保障手続きで、マイナンバー制度の活用により戸籍謄本等の添付を省略できるようになりました。例えば、児童扶養手当認定手続きにおいて、申請書と併せて申請人等のマイナンバーを申請先の行政機関に提示することにより、申請先の行政機関が戸籍関係情報(マイナンバーの提示を受けた者に関する親子関係、婚姻関係等の情報)を確認することができるようになりますので、戸籍謄本等の添付が不要となります。他にも、国民年金の第3号被保険者(被保険者に扶養されている主婦など)の資格取得事務における婚姻歴の確認、奨学金の返還免除事務における死亡の事実の確認、健康保険の被扶養者の認定事務における続柄の確認などについて本制度が活用されることが見込まれています。

2戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略

本籍地以外の市区町村において、新システムを利用して本籍地以外の市区町村のデータを参照できるようになったことで、戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付が不要となりました。具体的には、婚姻届や養子縁組届などを提出する際の戸籍謄抄本の提出が不要となります。

広域交付制度で相続手続きが簡単に!

1 もともとは?

相続手続きをするにあたっては、戸籍の収集から逃れることはできません。戸籍は個人の身分を証明する公正証書であり、同時に家族関係を証明する機能があるため、戸籍によって亡くなった方の相続人が誰なのかを確定させる必要があるためです。

そこで従来は最寄りの役所で集まりきらなかった戸籍については、ご自身で遠方の役所まで足を運んだり郵送請求したり、はたまた司法書士がご依頼を頂いている場合は、職務上請求として同様に窓口または郵送にて請求をしてきました。そしてお亡くなりになられた時期が昔であればあるほど、ご家族が多ければ多いほど、そしてきょうだい間の相続など調査の対象となる戸籍の通数が増えていき、相続人を確定させる作業だけで多くの時間や手間を費やしてきた背景があります。

 

2 広域交付制度によって簡単に!?

この点広域交付制度が開始したことにより、相続手続きで必要な戸籍のうちかなりの割合のものがお近くの役所で「一度に」「まとめて」取得できることとなりました。上記の通り戸籍収集には時間と手間がかかるだけでなく、遠方の役所に郵送請求するとなるとその通信費や郵送請求の決済方法である定額小為替を購入する際の手数料もばかになりません。450円の戸籍を郵送請求するために定額小為替が200円もかかるのです。そう考えると相続手続きをするにおいて今まで要していた時間的・経済的負担が減少することは間違いなく、これによってより短期間でスムーズかつより安価な相続手続きが実現できることになろうかと思います。

 

3 相続登記の義務化とも相性バツグン

令和6年4月1日より、ついに相続登記が義務化されました。

過去に相続が発生したものの名義が亡くなった方のままになっているものも全て対象となり、その相続人は原則不動産の名義人が死亡してから3年以内に相続登記をしないと相続人一人当たり最大10万円の過料に処せられる恐れがあります。特に相続人が多いご家族は全体としての影響が非常に大きいですよね。速やかに相続登記をするのがベターでしょう。

相続登記の義務化について詳しく知りたい方は、【法務局の[相続登記の義務化]が分かる!2024年4月以降の罰則や対策をかんたん解説!】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参照下さい。

そこで、対象となる方は相続登記申請に向けて多数の戸籍を集める必要がありますが、これについては広域交付制度を上手に活用することによってその負担を大幅に減らすことができます。もちろん戸籍を集めたとしても、遺産分割協議書の作成や相続登記申請書の作成等煩雑な手続きが多い登記実務においては、一般の方が一から十までご自身ですべての手続きを完了させるには少々ハードルが高いと思います。必要に応じて適宜、登記の専門家である司法書士にご相談いただければ幸いです。

相続登記の必要書類についてさらに詳しく知りたい方は、【法務局の[相続登記の必要書類一覧]をかんたん解説!】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参照下さい。

まとめ

令和6年3月1日より導入された広域交付制度によって、本籍地以外の役所でも戸籍を取得できるようになりました。これによって戸籍を集めるにあたっての時間的・経済的なご負担が格段に軽減されることと思います。ただし、集められる戸籍の範囲には限界があり、例えばきょうだいや甥姪の戸籍については従来の制度によってその戸籍の本籍地の役所に請求しなくてはならない等の制約があるのも事実です。

また、令和6年4月1日より相続登記が義務化されることに伴って、多くの方が今まで申請をしていなかった相続登記を申請せざるを得ない状況になることが想定されます。そのような状況下で広域交付制度は強い味方となってくれると思われます。ただし、上記の通り一部制約があり、また戸籍を集めたとしても、遺産分割協議書の作成や相続登記申請書の作成など煩雑な手続きが多い登記実務においては、一般の方が一から十までご自身ですべての手続きを完了させるには少々ハードルが高いかとも思います。そこで必要に応じて適宜、登記の専門家である司法書士にご相談いただくことも非常に有効な手段の一つです。ご自身で必要書類を揃えたり申請書を法務局に提出したりするのが面倒な場合は、司法書士に依頼して名義変更の手続きをすべて任せてしまっても良いでしょう。専門家に頼むと費用はかかりますが、自分でやる手間がかからずに済んでミスなくスムーズに登記を終えられます。

司法書士法人みどり法務事務所では相続でお悩みの皆様に、安心でリーズナブルな相続を済ませて頂くために、定額の不動産の名義変更サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする遺産相続に関する各種サービス(ゆうちょ・みずほ・三井住友・三菱UFJ、りそななどの各金融機関の相続にともなう預貯金の解約払戻し、その他相続に関する裁判所提出書類作成サポートなど)をおこなっています。また、電話や来所での相続相談は無料で承っております。相続に関してお悩みの方はまずはお気軽にお電話ください。

 

 

 

 

 

この記事を監修したのは、

辻本 歩

所属 司法書士法人みどり法務事務所 愛媛県司法書士会 会員番号 第655号 認定番号 第1212048号 資格 司法書士

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