法務局の【相続登記の必要書類一覧】をかんたん解説!
2023.04.27 相続登記(名義変更)不動産の所有者の方が亡くなられた場合、その自宅・土地・貸家・マンションなどを遺産として引き継いだ方に名義変更するためには法務局での相続登記が必要になります。法務局での相続登記の申請には様々な書類を添付する必要があります。そして、登記の種類によっても必要書類は異なってきます。
この記事では、不動産の相続登記をするときの「種類ごとの必要書類」「相続登記の種類」をわかりやすく紹介します。あわせて相続登記の必要書類について知って得する情報についても解説してあります。これから法務局への相続登記の申請を予定されている方で、
「私の場合、何の書類を集めれば良いのか分からない・・・」
「仕事や家事で忙しくて時間がないので、なるべく効率よく集めたい。」
「ある程度書類を集めたけれど、これで足りているのか確認したい。」
という方は、是非参考にして頂ければと思います。
目次
1.各相続登記の必要書類一覧
不動産の相続登記には主に4種類あります。まずは全種類共通の相続登記の必要書類を確認したうえで、各種類の相続登記の必要書類を確認していきましょう。
なお、自分がどの種類の相続登記が必要なのかは「2.自分に必要な登記の種類を確認!」をご参照ください
登記の種類 | 必要書類 |
全種類共通の 相続登記の必要書類 |
|
遺産分割協議による 相続登記の必要書類 |
⇒「相続関係説明図とは?作成手順や注意点を確認して相続を円滑に進めよう」
|
遺言書による 相続登記の必要書類 |
|
遺産分割調停・審判による 相続登記の必要書類 |
|
法定相続分による 相続登記の必要書類 |
|
※登記の申請書に決まった様式などはありませんが、法務局のサイトに用紙・ひな型や記入例が掲載されています。
法務局|不動産登記の申請書様式について
また、登記申請書の作成方法については「相続登記申請書の書き方は?具体的な項目や記載例、綴じ方を紹介!」の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参考下さい。
2.自分に必要な登記の種類を確認!
「不動産を相続した」と一言で言っても、その相続内容により相続登記の種類も様々です。そして、その相続登記の種類によっても必要書類は異なってきます。まずは、自分の場合はどの種類の相続登記なのかを確認することが必要です。ここでは相続登記の中でも、特に多い4種類の相続登記を紹介します。
⑴ 遺産分割協議による不動産の相続登記
法務局への不動産の相続登記の種類のなかでも、最も申請件数が多いとされているのが遺産分割協議による相続登記です。
遺産分割協議とは「故人のどの遺産を誰が相続するのかを相続人全員で話し合って決めること」を指します。故人が遺言書を作成していた場合を除き、通常は遺産分割協議によって不動産を取得する相続人を決めることになります。相続人の一部だけでは遺産分割協議はできませんので、必ず相続人全員の合意が必要となります。そして、話し合いがまとまり次第、その内容通りの遺産分割協議書を作成して相続人全員が署名・押印することになります。この遺産分割協議書は不動産の相続登記だけに関わらず、預貯金や株式などのその他の遺産の相続手続きにも必要になる書類なので、大事に保管しておきましょう。
⑵ 遺言書による不動産の相続登記
近年増加しているのが、この遺言書による相続登記です。
故人が生前に不動産の相続方法についての自筆証書遺言や公正証書遺言を作成していた場合には、遺言書が優先されるので上記の遺産分割協議をする必要はなく、遺言書の記載内容通りに不動産を取得する相続人が決まります。但し、遺言書には厳格な作成のルールが定められており、不備があるために遺言書が無効になってしまうこともあるため注意が必要です。なお、公正証書遺言については法律の専門家である公証人が作成に関与するので、無効になる心配はほとんどありません。近年では高齢化社会に伴う相続対策への意識の高まりから、生前に遺言書を作成しておく方が増えてきています。
また、故人の遺言書の存在を知らずに、遺産分割協議による相続登記をした後に遺言書が見つかったというケースもあります。そのような場合には相続登記をやり直さなければなりません。二度手間にならないようにするためには、まずは故人の遺品の中に遺言書があるかを確認しておきましょう。なお、公正証書遺言については原本が公証役場で保管されているため、故人が遺言書を作っていたかを公証役場で検索することができます。
⑶ 遺産分割調停・審判による不動産の相続登記
家庭裁判所で遺産分割調停・審判の手続をされた方は、この遺産分割調停・審判による相続登記をすることになります。
故人が遺言書を作っておらず相続人全員での遺産分割協議もまとまらない状態、いわゆる「相続争い」状態の場合には、家庭裁判所に遺産分割調停・審判の申立をすることができます。通常は遺産分割調停の申立から行うことになります。ただし、遺産分割調停はあくまで裁判所でする「話し合い」なので、相続人の中で納得がいかない人がいた場合には不成立となってしまいます。その時に初めて遺産分割審判に移行することになります。遺産分割審判においては通常の裁判と同様に法的な主張や証拠の提出が求められます。ここでは高度な専門知識が求められるため、弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。
⑷ 法定相続分による不動産の相続登記
一番簡単にできるのが、この法定相続分による不動産の相続登記です。
遺言書の存在や遺産分割協議の成立の有無に関わらず、民法で定められた法定相続分に従った相続登記であれば、相続人の中の一人が他の相続人の承諾を得ることなくも相続登記を申請することができます。ただし、登記できる内容はあくまで民法で定められている法定相続人に対する法定相続分に従った登記のみです。
相続人が一人しかいない相続の場合は、この相続登記をしておけば問題ありません。
しかし、多くの場合は相続人が複数います。
「話し合いをするのも面倒だから・・・。」という気持ちから、とりあえず法定相続分の相続登記をしておくとすると、不動産は共有状態になります。何か事情があるのであれば別ですが、不動産の共有状態は管理方法・費用負担、処分の意向の相違などが原因で争いが生じやすくなります。なので、できる限り全相続人の意思が明確に確認できる遺産分割協議による相続登記をお勧めします。
仮に法定相続分による相続登記をする場合には、少なくとも管理方法・費用負担、処分の意向などについて、事前に全相続人間で方針を話し合っておくのが良いでしょう。
3.【相続登記の必要書類】の知って得する知識3選
相続登記の必要書類を確認できたら、次は必要書類を集めるにあたって知っておくべき3つの知識を紹介します。私自身も相続登記の相談を受ける中で、この3つに関する質問が特に多いように思います。裏を返せば、この3つについては誤解が多いということになります。余計な時間や手間をかけないためにも、この3つの情報は必ず押さえておきましょう。
⑴ 相続登記の必要書類には有効期限はない!
実は意外と多いのが「印鑑証明書は取得後3か月以内のものじゃなきゃダメ」「戸籍謄本は取得後6か月以内のものじゃなきゃダメ」という誤解です。
法務局での相続登記に必要な戸籍謄本・除籍謄本・住民票・印鑑証明書などは「取得後〇か月以内」という制限はありません。つまり、有効期限というものはありません。
このような誤解がある原因としては、
- 不動産を売買したときの所有権移転登記の場合は売主の印鑑証明書は「取得後3か月以内」でなければならないこと、
- 預貯金等の相続手続の際に金融機関に提出する戸籍謄本・印鑑証明書などは、金融機関側の規定で「取得後〇か月以内」と決められていること
という2つの事と混同してしまっていることにあると思われます。
相続登記の際に「有効期限を過ぎてしまったから取り直さなきゃ・・・」と勘違いして、無駄な時間や費用をかけないように注意しましょう。
なお、相続人の戸籍謄本については故人の死亡日以降に取得したものである必要があります。また、固定資産評価証明書(又は納税通知書+課税明細書)は最新年度のものが必要となります。
⑵ 相続登記の申請に権利証は不要!
これについてもかなり誤解が多いように感じます。相続登記の相談を受ける際に「夫が亡くなって自宅を相続したけれど、権利証が見当たりません・・・。相続登記はできないでしょうか?」と少し心配そうな表情でご質問を受けることがあります。
結論として相続登記の申請に権利証は不要です。
権利証(登記済権利証)とは、不動産の所有者であることの証明書のことをいいます。
平成17年の法改正以前は登記申請をして不動産の権利を取得した人には、権利証(登記済権利証)が発行されていました。そして、不動産登記の必要書類の中でも最も重要な書類として自宅の金庫などで大切に保管される方がほとんどでした。
しかし平成17年の法改正により、現在では権利証(登記済権利証)は発行されずに、代わりに登記識別情報通知(数字とアルファベットのパスワード)が発行されることになっています。
権利証(登記済権利証)にしても、登記識別情報通知にしても、現在でも重要書類であることには変わりありません。実際に不動産を売却したときの所有権移転登記や銀行ローンを組んだときの抵当権設定登記を申請する場合には、これらの書類が必要となります。しかし、相続登記を申請する場合には、権利証(登記済権利証)も登記識別情報通知も必要ありません。もし、故人の遺品から権利証が見つからなくても相続登記はできますのでご安心ください。
もっとも、例外的に権利証が必要になる場合が2つあります。
①登記上の所有者の住所と住民票の除票の故人の住所との繋がりがつかない場合
②相続人以外の第三者への遺贈の登記をする場合
これらの場合には権利証が必要になるので注意が必要です。
⑶ 取得した証明書類は「原本還付」で返してもらえる!
「預貯金などの相続手続もあるから、戸籍謄本は同じものを2~3通取得しておくべきですか?」という内容のご質問もよくあります。
法務局では「原本還付」という作業をすれば提出した証明書類を返却してもらう事ができます。また、金融機関についても同様の作業をすれば原本を返却してくれる場合が多いようです。つまり「原本還付」の作業を行い、すべての証明書類を1通ずつ取得しておけば、その一式を不動産や預貯金等の各相続手続で使いまわすことができます。
原本還付の作業の流れ
①返却してほしい証明書類のコピーをとる。
②コピー余白部分に「右は原本に相違ありません」と記入した上、署名・押印をする。
③コピーが複数枚にわたる書類(戸籍謄本など)の場合には、各ページに割印をする。
④原本と一緒にコピーを法務局に提出する。
原本還付ができる証明書類
①故人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本等
②故人の住民票の除票又は戸籍の付票
③相続人全員の戸籍謄本
④不動産を相続する人の住民票
⑤相続人全員の印鑑証明書
⑥固定資産評価証明書(又は納税通知+課税明細)
⑦遺産分割協議書
⑧遺言書
⑨遺産分割調停調書・審判書(確定証明書付き)謄本
※登記申請書・委任状・相続関係説明図は原本還付ができません。
※戸籍謄本・除籍謄本は相続関係説明図を作成して提出すれば、コピーを提出しなくても原本を返却してもらえます。
⇒「相続関係説明図とは?作成手順や注意点を確認して相続を円滑に進めよう」
「原本還付」によって余計な費用や手間も省くことができます。もっとも、相続手続を急いでいて各財産の相続手続を同時平行で進めたい方は、各証明書類を複数通取得するか、又は法務局で法定相続情報一覧図の写しを複数通取得する必要があります。
4.まとめ
以上の通り相続登記の必要書類はその相続登記の種類によって様々です。また仕事を休んで何度も役所などに書類を取りに行くのはかなり手間と時間がかかります。したがって、事前に①自分の場合はどの種類の相続登記が必要になるのか②その種類の相続登記に必要な書類は何か、ということをしっかり確認してから役所等の書類集めにとりかかることをお勧めします。
司法書士法人みどり法務事務所では相続でお悩みの皆様に、安心でリーズナブルな相続を済ませて頂くために、定額の不動産の名義変更サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする遺産相続に関する各種サービス(ゆうちょ・みずほ・三井住友・三菱UFJ、りそななどの各金融機関の相続に伴う預貯金の解約払戻し、その他相続に関する裁判所提出書類作成サポートなど)を行っています。また、電話や来所での相続相談は無料で承っております。相続に関してお悩みの方は、まずはお気軽にお電話ください。
関連記事
関連記事
人気記事
新着記事