土地などの不動産を相続したら名義変更は必要か、名義変更をしない場合のデメリットは?
2023.05.12 相続登記(名義変更)不動産を相続した場合、一般的には相続登記により名義変更を行います。
ただ、相続登記は、書類の準備に手間が、書類の発行や司法書士報酬で費用がかかるため、不動産に価値がないケースなどでは、わざわざ名義変更はしたくないと思う方がいるかもしれません。
本記事では、名義変更は必要か、しない場合のデメリットなどを解説していきます。
目次
1.不動産を相続したら名義変更は必要?
不動産の名義変更とは
不動産の所在や所有者などの情報は、法務局が登記簿によって管理しています。不動産を所有している人が亡くなった場合、その不動産の権利は相続人に移り、所有者が変わりますが、登記簿の情報は自動で書き換えられないため、申請により登記簿の名義を変更します。
これが、不動産の名義変更で、相続により名義を変更することを相続登記といいます。
不動産を相続したら名義変更が必要
そして、不動産を相続したら名義変更をする必要があります。
2023年現在、相続登記の申請は必須ではありませんが、法改正により令和6(2024)年4月1日以降は申請が義務です。
この法改正の内容は、相続があったことを知ってから相続登記を3年以内にしなければならないというもので、2024年4月1日以降に相続が発生した場合に対象となるのはもちろん、この日より前に相続が発生している場合でも、この日より3年以内に相続の登記をする必要があります。
名義変更をしない場合のデメリット
①不動産を売却できない
不動産を相続しても、相続登記により名義変更をしておかないと不動産の売却をすることはできません。
実際は不動産の所有者であっても、登記簿上の名義がその人になっていないと、買主側からは誰が本当の所有者か判断ができないからです。
また、不動産登記制度は、原則として、途中の権利移動を省いた登記を認めていません。
例えば、父から相続した不動産を売却するケースで、不動産の名義が父のままだと、父から買主へと直接名義変更をすることはできず、一旦、父→自分→買主という順で実際に権利が移動した順に名義変更をする必要があります。
②権利関係が複雑になる
相続登記をしておかないと、その間に不動産を相続した人が死亡して権利関係が複雑になることがあります。
相続登記をしないまま不動産の現所有者が死亡すると、相続が連続して発生し、名義上は祖父の代にもかかわらず、実際は孫の代の誰かが相続している、という客観的に見て不動産の権利状態が分かりにくくなってしまいます。
このように相続が重なると、前に発生した相続と同時に処理をすることになるため、相続人の調査、相続書類の収集、および遺産分割協議がその分複雑となり、名義変更の手続きそのものが難しくなってしまいます。
③差し押さえのリスクがある
遺産分割で不動産を単独相続しても、その通りに名義変更をしておかないと、ほかの相続人の債権者に不動産の権利の一部を差し押さえられるリスクがあります。
民法では、不動産の権利を取得しても、その内容を登記しなければ不動産の権利を第三者に対抗(権利の主張)できないと定められています。
例えば、相続人が兄と弟の二人のケースで、遺産分割協議により兄が単独で不動産を相続することになっても、兄が単独で相続したという内容を登記しないままでいると、弟に借金があった場合その債権者が、弟の法定相続分の限度で不動産を差し押さえたとしても、兄は弟の債権者に対し、遺産分割協議で自分が不動産を単独で相続したことを主張できません。
④2024年4月1日以降は罰則が科せられる
既に触れましたが2024年4月1日以降は相続登記により名義変更が義務となります。この相続登記義務に正当な理由なく違反すると10万円以下の罰則(過料)が課せられる恐れがあります。
2.不動産の相続手続きに必要な流れ
不動産の名義変更をする前提として、まずは不動産を相続するまでの流れを説明します。
遺言書の確認、検認
親、祖父母が亡くなってしまい相続が発生した場合、まずは遺言書が残されていないか確認をしましょう。遺言書が残されている場合は、原則としてその内容に従って財産を相続することになります。
注意するのが、もし遺言書が見つかったらその場で開封はせずに裁判所に届け出て「検認」という手続きを受けてください。検認というのは、遺言書を確認して偽造などを防止する手続きで、これをしておかないと、遺言書を正式な書類として今後の手続きに使えなくなってしまいます。
遺産分割協議
遺言書がない場合は、相続人間で遺産分割勝協議により不動産をだれがどのように相続するかを話し合います。
遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があります。全員の参加といっても、実際に一つの場所に集合する必要はなく、文書・電話で参加する方法でも問題ありません。
遺産分割協議が済んだら遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書に決まった形式はありませんが、亡くなった方の氏名や死亡日等・日付の記載・財産の記載・署名捺印など、最低限必要な記載があるため、その点を守らなければ無効となる点には注意してください。
なお、不動産は、複数人の共有状態だと売却や処分をするのに共有者全員の同意が必要となり、流動性が下がるため、相続人のうち一人が単独所有することをお勧めします。
相続登記
不動産をどのように相続するかが決まったら、名義変更のための法務局に相続登記の申請を行います。
3.相続登記の流れ、費用、必要な書類は?
相続登記の手順、流れ
相続登記には、自分で手続きを進める場合と、司法書士に依頼する場合の2パターンがあります。
①自分で手続きを進める場合
必要書類を収集する
↓
申請書を作成する
↓
法務局で申請する
自分で手続きを進める方は「相続登記は自分でできる?必要書類や手続き方法を説明!」の記事でも詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参考下さい。
②司法書士に依頼する場合
依頼先の司法書士を探す
↓
司法書士と面談して手続きを依頼する
司法書士に依頼される方は「相続登記を司法書士に頼むときの費用相場はいくら?専門家に任せるメリットとは?」の記事でも詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参考下さい。
相続登記に必要な費用・書類
相続登記では、必ず発生する費用として登録免許税と書類の取得費用が、司法書士に依頼した場合に必要な司法書士への報酬があります。
・登録免許税
登録免許税とは、登記を申請する際に発生する税金です。相続登記の場合の税額は次の式により求められます。
不動産の固定資産税評価額 × 0.4%
例として、相続により5000万円の不動産の名義変更をする場合、
「5000万×0.4%」で20万円になります。
なお、不動産の固定資産税評価額は「課税明細書」または「固定資産税評価証明書」に記載されています。
課税明細書は、不動産の所有者に対して役所から毎年4月ごろに送付される書類で、これに固定資産税が記載されています。 固定資産税評価証明書は、固定資産税の課税対象となる資産についてその評価額を証明する書類で、役所で取得できますが、その際には1通300~400円程度の手数料がかかります。
・必要書類の取得費用
相続登記では、以下のような戸籍や住民票などの書類が必要となります。
書類名 | 1通当たりの手数料 | 備考 |
戸籍謄本 | 450円 |
|
除籍謄本 | 750円 |
|
改製原戸籍 | 750円 |
|
戸籍の附票の写し | 300円 |
|
住民票 | 300~400円 | 自治体により異なる |
印鑑証明書 | 200~400円 | 自治体により異なる |
固定資産税評価証明書 | 200~400円 | 自治体により異なる |
・司法書士への報酬
相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、報酬が必要となります。
報酬額は依頼先の司法書士により異なります。相続登記の場合は、1件当たり10万円前後がおおよその相場です。
4.相続登記は自分でできるのか?司法書士に依頼しないとどうなる
不動産の名義変更手続きは、司法書士でなくても行うことができます。
ただし、一口に相続登記と言っても、ケースによって申請書の様式や必要書類が異なります。もし申請内容に不備があった場合は、自身で補正しなければなりません。
法務局で相談することは可能ですが、個々の事案に応じた具体的な内容まで助言を受けられるわけではありません。
また、必要書類の取得や登記の申請は基本的に役所が担当するため、平日の昼間での対応が基本となり、多くの方にとって時間を取るのが難しい場合もあります。
相続した不動産を売却・処分する予定がある場合はそれまでに相続登記を済ませておく必要があるため、それまでに確実・スムーズに名義変更を終わらせたい場合などは司法書士に依頼することをお勧めします。
5.まとめ
以上が、土地などの不動産を相続した場合に必要な名義変更手続きの概要です。
法改正による相続登記の義務化がもうすぐ始まります。相続登記の義務化は、既に相続が発生している方も対象となるので、おおよその手続きの流れだけでも把握しておくと良いでしょう。
司法書士法人みどり法務事務所では相続でお悩みの皆様に、安心でリーズナブルな相続を済ませて頂くために、定額の不動産の名義変更サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする遺産相続に関する各種サービス(ゆうちょ・みずほ・三井住友・三菱UFJ、りそななどの各金融機関の相続に伴う預貯金の解約払戻し、その他相続に関する裁判所提出書類作成サポートなど)を行っています。
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