贈与税とは?生前贈与で節税する方法も紹介!
2022.10.07 税金対策「贈与税はどれくらいかかる?」「生前贈与で相続税を軽減できる?」親の所有する財産が多く、相続税の負担を心配している方もいらっしゃるでしょう。相続税の負担を軽減するために、生前贈与で対策することも可能です。生前贈与には贈与税の非課税枠を利用して節税できるものもあります。
この記事では、贈与税の概要、生前贈与で節税する方法などをご説明します。
目次
贈与税とは?
まず、贈与税の概要をご説明します。
贈与税の基礎知識
贈与税とは、年間(1月1日から12月31日)に他の個人から財産を贈与された場合に課税される税金です。複数名から贈与を受ける場合、合計金額に課税されます。贈与を受けた価額が110万円を超えなければ課税されることはなく、申告する必要もありません。
贈与税の計算方法
贈与税の計算式は下記の通りです。
(1)【1年間に贈与された金額の合計-110万円(基礎控除))=課税価格】
(2)【課税価格×税率-控除額=贈与税】
例えば、父親から500万円を未成年の子供に贈与したケースで考えてみましょう。
500万円−110万円=390万円
390万円×20%−25万円=53万円このケースでは、53万円が贈与税となります。
贈与税の税率は、一般贈与か特例贈与かで税率が異なります。
一般贈与財産
直系尊属(父母)から未成年の子供に贈与される場合などに適用されます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
---|---|---|
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
特例贈与財産
直系尊属(父母)から成人した子供に贈与される場合などに適用されます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
---|---|---|
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
贈与税の申請・納付期限
贈与税の申請・納付は、贈与があった年の翌年2月1日~3月15日までに贈与を受けた受贈者がすることになっています。納税が遅れた場合には、延滞税がかかるので注意しましょう。
納税は税務署や金融機関にて現金で納付します。また、電子納税(インターネットバンキングや銀行ATMなど)やクレジットカードでの決済、納税額が30万円以下ならコンビニ納付も可能です。
贈与税がかからないもの
贈与税がかかるかどうかを判断しづらいものもあるでしょう。ここでは、贈与税がかからないと判断するものについて紹介します。
生活費や教育費
扶養義務者から生活費や教育費として支払われた費用については、贈与税はかかりません。生活費は、養育費、食費、医療費、日用品代などが含まれます。教育費には、教育上で必要と認められる学費、教材費、文具費、塾代、習い事代などが含まれます。
社会通念上必要な費用
結婚式の費用は通常数百万円かかります。しかし、結婚式の費用は社会通念上必要な費用として贈与税の対象にはなりません。また、海外留学でも数百万円かかることになりますが留学費用も社会通念上必要な経費と認められます。
暦年贈与とは?
ここでは、非課税で贈与ができる暦年贈与についてご説明します。
暦年贈与の仕組み
暦年贈与は、毎年1月1日〜12月31日の贈与で、受贈人1人当たり年間110万円の贈与まで贈与税がかからない制度です。例えば、両親から暦年贈与をしてもらう場合、2人合わせて110万円の範囲に収まらないと贈与税を支払う必要が出てきます。
暦年贈与は、長い時間をかけて財産を移すことに効果があります。例えば、5人の孫がいる場合、1人毎年100万円ずつ10年かけて贈与すれば相続財産を5,000万円減らすことができ、相続税の節税ができます。
暦年贈与する際の注意点
暦年贈与を毎年繰り返して行うと、最初から計画的に決まっている定期贈与として暦年贈与とみなされなくなる可能性があります。複数年にわたり贈与してもらう場合、贈与してもらう人に「贈与契約書」を毎回の贈与で作成してもらうようにしましょう。そして、毎年異なる金額・異なる時期に贈与してもらうと計画的な贈与と疑われなくなります。
さらに、暦年贈与の範囲での贈与も被相続人の死亡から3年間遡って相続税課税の対象になります。そのため、複数年にわたり暦年贈与をしたい場合、なるべく早くから取り組むべきと言えるでしょう。
また、暦年贈与は他の制度と併用できますが、相続時精算課税制度を利用すると暦年贈与は利用できなくなります。相続時精算課税制度を利用すると決めたら、後から暦年贈与に切り替えることはできなくなってしまいますので、どちらの制度を利用するかと利用するタイミングは慎重に考えるべきです。相続時精算課税制度については、次の章で詳しく説明します。
相続税対策に活用できる制度
ここでは、相続税対策に活用できる制度についてご紹介します。
相続時精算課税制度
相続税対策として、相続時精算課税制度を活用する方も多いです。相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子供か孫に贈与する際に利用できます。相続時精算課税制度を利用すると、2,500万円まで贈与しても贈与税がかかりません。ただし、相続発生時には相続税の計算に入れる必要があります。
相続時精算課税制度を利用するのに効果的なのは、将来値上がりしそうな価値がある財産を所有しているケースです。贈与時の価格で相続税を計算してくれるので、通常の相続よりも節税できる可能性があります。逆に贈与時よりも、相続時のほうが相続財産の価値が落ちていれば多めに相続税を支払うケースもあります。
相続時精算課税制度を利用すると、それ以降暦年贈与の非課税が活用できない点は注意しましょう。
贈与税の配偶者控除
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)は、婚姻期間20年以上の夫婦が居住用不動産または居住用不動産を購入する資金を贈与する際に2,000万円まで贈与税がかからない制度です。 贈与税の配偶者控除は基礎控除の110万円と併用できます。また、3年以内に配偶者の相続が発生したとしても遡って相続税の対象にはなりません。
住宅取得等資金贈与の特例
住宅取得等資金贈与の特例を利用すると、住宅取得のために贈与を受けた金額が最大1,000万円(令和4年1月1日~令和5年12月31日)まで非課税となります。父母、祖父母から資金提供を受けて住宅を新築・増改築した場合に適用されます。
教育資金贈与の特例
教育資金贈与の特例は、子供や孫の教育資金を一括で贈与する際に1,500万円までなら非課税になる制度です。1,500万円の非課税枠の範囲なら、数回に分けての贈与もできます。学校以外にも、スポーツや芸術の習い事にも使えますが上限は500万円です。
教育資金贈与の特例は、預金か信託で行う必要があります。信託商品を取り扱う金融機関で「教育資金非課税申告書」を税務署に申告することで利用可能です。受贈者は、教育資金として利用したレシートや領収書などを金融機関に提出することで、口座から払い出しが行える仕組みです。受贈者が30歳の時点で残高がある場合、その残高に対して贈与税がかかるので注意しましょう。
教育資金贈与の特例は令和3年3月31日までの予定でしたが、法改正が行われて令和5年3月31日まで延長されることになりました。贈与者が亡くなったら、その時点での残高に贈与税がかかるように変更になっています。
結婚・子育て資金贈与の特例
結婚・子育て資金贈与の特例は、直系尊属(親や祖父母など)から子や孫などに対して結婚や子育ての費用に充てるための資金の一括贈与を、最大1,000万円まで非課税で行える制度です。将来的に子供や孫に必要になる結婚・子育て費用を一括で贈与できるメリットがあります。
この特例は、銀行や証券会社と「結婚・子育て資金管理契約」を結ぶことにより利用できるようになります。贈与を受けられるのは、贈与者の子や孫など直系卑属で金融機関と結婚・子育て資金管理契約を締結する日において、20歳以上50歳未満の人(成人年齢引き下げ後は、18歳以上50歳未満)です。また、信託受益権や金銭等を取得した前年の合計所得金額が1,000万円以下という所得制限もあります。
令和3年3月31までの特例でしたが、令和5年3月31日まで延長されることになりました。
贈与税の申告に間違いがあった場合
贈与税を少なく申告してしまった場合、修正申告が必要です。過少申告加算税(最大15%)などのペナルティが課せられることもあるので、間違えて申請しないように注意しましょう。逆に多く申告した場合は、更正の申告をすることで払いすぎた分を取り戻すことができます。
まとめ
生前贈与をしてもらうと贈与税がかかりますが、非課税枠を利用できる制度もいくつかあります。相続発生後に相続税を減らすことはできないので、財産が多い場合などは生前に準備しておいたほうがいいでしょう。
暦年贈与は年間110万円までなら非課税で贈与できるので、早く始めれば相続財産を減らし相続税の節税ができます。ただし、相続時精算課税制度を利用すると暦年贈与は利用できなくなるので、どちらを利用したほうが得かを考えてから利用しましょう。
その他にも、贈与税の配偶者控除や住宅取得等資金贈与の特例などがあるので、ぜひ活用を検討してみてください。
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