相続税が非課税になるのは相続財産いくらまで?相続税を抑えるためにできることは?
2022.09.02 税金対策相続が発生すると「相続税」の納税が必要になることは知られていますが、相続税がどの程度かかるかまでは分からないという方が多いのではないでしょうか。
相続税は相続した財産に対して課税されますが、「基礎控除」や「非課税財産」などの税負担を軽減するための制度が設けられています。
本記事では、相続税の基礎控除をはじめ、非課税財産や相続税対策などを幅広く紹介します。相続税の納税についてお悩みの方は、参考にしてください。
目次
相続税とは?
相続税とは、「被相続人(亡くなった人)から相続や遺贈によって取得した財産の合計額が、基礎控除額を超えた場合に課税される税金」です。
基本的に被相続人の財産は配偶者や子に相続されるので、相続税は配偶者や子が支払うことになります。ただし、第三者に遺贈があり、その合計額が基礎控除額を超えた場合には、第三者にも相続税の納税義務が発生します。
相続税の基礎控除とは?
相続税の基礎控除は、被相続人の財産の内の一定の額までは相続税がかからない(控除される)制度です。
2014年12月31日以前の基礎控除額は、【5,000万円+(1,000万円×法定相続人数)】でした。
一方2015年1月1日の相続税法改正によって、基礎控除額は【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=相続税の基礎控除額】の計算式で求められるようになっています。計算式を見て分かるように、法定相続人の人数が多いほど基礎控除額が高くなり、相続税がかかりにくいです。
2015年に行われた相続税法改正によって相続税の課税対象範囲が広がり、相続税課税割合が改正前は4%程度だったのに対して改正後は8%以上という結果になっています。
具体的に数字を当てはめると、以下の計算式になります。
例)法定相続人が妻(配偶者)と子2人の場合
【3,000万円+(600万円×3)=4,800万円】
例の場合は基礎控除額が4,800万円なので、被相続人の財産の合計額が4,800万円を下回っていれば相続税の納税・申告は不要ですが、上回っている場合には「上回った分の金額」が課税対象となります。
仮に、被相続人の財産の合計額が6,000万円だった場合には、6,000万円から基礎控除4,800万円を差し引いた1,200万円の部分が課税対象となり、申告も必要です。
相続税がかからない非課税財産は?
相続税では、金銭的な価値がある財産はすべて課税対象となりますが、例外的に「相続税がかからない財産(非課税財産)」があります。
- 祭祀(さいし)財産(礼拝の対象となるもの)
- 寄付金
- 生命保険金(500万円×法定相続人の数まで)
- 死亡退職金(500万円×法定相続人の数まで)
などです。
非課税財産は相続財産からあらかじめ差し引けるので、課税対象財産を減らすことにつながります。
祭祀(さいし)財産(礼拝の対象となるもの)
「祭祀財産」は神や先祖をまつる財産を指し、具体的には以下のような財産が祭祀財産として扱われます。
- 墓地
- 墓石
- 仏壇
- 仏像
- 神棚
仏壇や仏像も対象ですが、「純金の仏像」のように不自然に高価なものや、「骨董品」などの商品として所有しているもの、また、相続が始まってから購入した場合は対象外です。
そのため、墓地や墓石、仏壇などを生前に購入しておくと節税対策としても有効です。その際、墓地や墓石などを購入するために借入をした場合、もし相続が始まった時点でその借入が残っていたとしても債務控除の対象になりません。
寄付金
相続人が相続によって得た財産を寄付した場合、寄付した財産は全額「非課税財産」になります。ただし、寄付先には条件があるので、寄付先と認められている団体・組織を見てみましょう。
- 国
- 地方公共団体
- 特定の公益を目的とする事業を行う法人など
「公益を目的とする事業を行う法人」は具体的には、ユニセフや日本赤十字、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンなどが該当します。
生命保険金
生命保険金は被保険者が死亡したときに、残された家族の生活を守るためのお金です。そのため、被相続人の死亡によって相続人が受け取った生命保険金には【500万円×法定相続人の数(相続放棄をした人も含む)】分の非課税枠が設けられています。
つまり、法定相続人が3人だった場合、500万円×3人=1,500万円が非課税枠になります。
ただし、生命保険金の非課税枠は「法定相続人のみ」が対象なので、保険金の受取人が相続人以外であった場合には非課税枠は適用されません。相続放棄人が受取人だった場合も同様です。
よくあるのは、保険金の受取人を「孫」にしているケースです。しかし、孫は法定相続人に含まれないので、非課税枠は適用されません。生命保険金の非課税枠を使うのであれば、保険金の受取人を必ず法定相続人にしておきましょう。
死亡退職金
被保険者の死亡後3年以内に支給額が確定した死亡退職金は、相続税の課税対象です。しかし、死亡退職金も生命保険金と同様に残された家族の生活を守るためのお金なので、非課税枠が設けられています。
非課税枠も【500万円×法定相続人の数(相続放棄をした人も含む)】と、生命保険金の非課税枠と同額です。
つまり、被保険者の死亡によって生命保険金と死亡退職金が支給された場合、法定相続人が3人ならば最大で3,000万円までが非課税になります。
相続税の各種控除や特例を紹介
相続税には基礎控除があることをお伝えしましたが、以下の4つにも税額控除の制度が設けられています。
- 配偶者の税額の軽減
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 小規模宅地等の特例
配偶者の税額の軽減
相続税での「配偶者の税額の軽減」は、配偶者のみに適用される基礎控除で「配偶者控除」と呼ばれることもあります。配偶者が被相続人から財産を相続する場合には、以下の金額のうち「大きい金額まで」が非課税になります。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分の相当額
配偶者控除を受けるための婚姻期間は問われませんが、戸籍上の配偶者であることが条件です。つまり、内縁の妻や夫は対象となりません。
未成年者控除
相続人が未成年である場合には、【10万円×未成年者が満18歳になるまでの年数(満18歳ー年齢)】の金額が控除されます。
未成年は成人になるまで生活費以外にも教育費などがかかることを考慮し、税金負担軽減のための控除が認められているのです。
例えば、相続発生時に相続人が15歳であれば【10万円×(満18年−15年)=30万円】が税額から控除されます。
注)2022年4月1日以前に発生した相続の場合は、【10万円×(満20歳−年齢)】の計算となります。
障害者控除
相続人が障害者である場合には【10万円または20万円×相続人が85歳になるまでの年数(85歳−年齢)】の金額が控除されます。
身体障害者手帳3級〜6級、または精神障害者保健福祉手帳2級・3級を持っている人の控除額は「一般障害者」として【10万円×相続人が85歳になるまでの年数(85歳−年齢)】です。
身体障害者手帳1級、2級、または精神障害者保健福祉手帳1級を持っている人は「特別障害者」として【20万円×相続人が85歳になるまでの年数(85歳−年齢)】が税額から控除されます。
例えば、一般障害者の方が40歳の時点で相続が発生すると【10万円×(85歳−40歳)=450万円】が税額から控除され、特別障害者の方の場合は倍額の900万円が控除されます。
小規模宅地等の特例
相続において、財産に土地が含まれていることは少なくありません。被相続人が所有していた土地の相続時に、税金負担を減らす目的で「小規模宅地等の特例」が設けられています。
この特例は、相続した宅地の相続税評価額を最大80%も節税できる制度です。
土地の相続税評価額が5,000万円だった場合には、特例を利用することで相続税評価額を1000万円にまで引き下げることができます。
ただし、この特例には次のような適用条件があります。
・被相続人が住んでいた土地であること
この制度を活用する前提として、被相続人が自宅として使っていた土地であることが挙げられます。そのため、別荘の土地や親族に無償で貸している土地などは対象外です。
・適用面積は土地の330m²以下
特例名にも入っているように「小規模」部分に使用できる特例なので、適用面積は330m²(100坪)までと定められています。なお、330m²を超える部分は通常の相続税評価額で計算されるので、330m²を超える土地も適用面積分は特例を受けることが可能です。
・配偶者、故人と同居していた親族、(いわゆる)家なき子のいずれかであること
この特例が使えるのは「配偶者」、「故人と同居していた親族」、「(いわゆる)家なき子」のいずれかです。配偶者が土地を相続する場合には、無条件でこの特例が適用されます。
相続発生時に故人と同居していた家族も、この特例の対象です。ただし、住民票のみ移動させていた場合は対象外となる点に注意しておきましょう。申告期限まで持ち続ける、住み続ける、という要件を満たすことも必要です。
そして、いわゆる家なき子、3年以上借家に住んでいる別居家族も特例の対象となります。ただし、別居家族が特例を受けるためには、被相続人に配偶者や同居家族がいないことが前提です。
相続税を抑えるためにできること
相続税は、合法的に節税する方法がいくつもあります。ここでは「贈与の非課税枠を利用する方法」と「現金を不動産に変えておく方法」の2つを説明します。
贈与の非課税枠を利用する
相続税の節税対策としてもっとも知られているのが、贈与の非課税枠を利用した生前贈与です。相続によって得た財産には相続税が発生しますが、生きているうちに贈与した財産には「贈与税」がかかります。
しかし、贈与額が「年間で110万円以下」であれば、贈与税はかかりません。これを利用して、生前から毎年贈与を続ける方法を「暦年贈与」と呼びます。
例えば、子2人に110万円を10年間にわたって贈与し続けたとすると【(110万円×2人)×10年=2,200万円】となり、税金をかけることなく2,200万円の財産を贈与することが可能です。
現金を不動産に変えておく
相続税の節税対策として、現金を不動産に変えておく方法があります。なぜなら不動産の相続税評価額は不動産の時価よりも低く評価され、その分相続税が少なく計算されるからです。
1億円の財産がある場合、現金で相続すると1億円がすべて課税対象になります。一方で時価1億円の不動産を所有している場合は、相続税評価額が6,000万円だと判断されれば、差額の4,000万円分の相続税を節税できることになります。
そして、購入した不動産を賃貸(収益)物件にしておけば賃貸部分を控除できるので、相続評価額を下げることができるでしょう。
このように、相続税の節税対策を行えば相続税の負担を大きく減らすことができます。
円満な相続にするためには節税ばかり考えてはいけない
相続税の節税対策はもちろん大切ですが、一番気にかけるべきことは「親族間でのトラブル」ではないでしょうか。ここでは、円満な相続をするために心掛けておきたい2つのポイントを説明します。
財産を不動産にすると相続しにくくなる
前項では、財産を不動産にしておくことが有効な節税対策であることを説明しました。しかし、財産を不動産にすると財産を1円単位で平等に分割することが困難であるため、法定相続人が複数人いる場合にトラブルになる可能性があります。
トラブルを避けるためにも、遺言によって分割方法や割合などを明確にしておきましょう。
生前贈与を平等にしないと相続人間で揉める原因になる
「長男には生前贈与をしたのに、長女にはしていなかった」など、生前贈与に不平等があると相続時にトラブルになりかねません。万が一、生前贈与によって兄弟間で不平等が生じた場合には「特別受益の持戻計算」によって、公平に遺産分割をできる制度もあります。生前贈与をするのであれば平等に行い、残された家族が揉めないように配慮しましょう。
まとめ
相続税の節税対策は生前から行えばメリットが大きいものも多くあるので、相続税の負担を少しでも減らすために生前から相続について家族で話し合っておきましょう。
しかし、節税ばかりに気を取られて家族仲に影響してしまうと、相続に関して別の問題が発生してしまうかもしれません。円滑な相続を実現するためにも、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談してみると良いでしょう。
関連記事
人気記事
新着記事