固定資産税はいくらかかる?一戸建てやマンション、土地の相続で注意すべき点とは?
2022.12.22 税金対策不動産に固定資産税がいくらかかるのかを確認せずに家や土地を相続すると、思っていた以上に税金が高くて困る場合があります。不動産を相続した後、売りたくても買い手が見つからず、固定資産税がかかり続ける負動産と化すケースもあるので注意が必要です。
この記事では、固定資産税の計算方法や不動産相続に伴う注意点、相続したくないときの対処法を紹介します。一戸建てやマンション、土地が遺産に含まれる方は、相続すると固定資産税がいくらかかるのか、相続後に問題なく払えるのか、実際に計算して確認してみましょう。
目次
固定資産税とは
固定資産税とは、文字通り固定資産にかかる税金です。相続財産の中で固定資産税がかかる固定資産とは何が該当するのか、誰が払うのかなどの、固定資産税に関する基本的な事項をご説明します。
土地や家屋には固定資産税がかかる
固定資産税がかかる固定資産は、土地・家屋・償却資産の3つです。固定資産税が課税されるものとしては、例えば以下のようなものが挙げられます。
土地 | 田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地(雑種地) |
家屋 | 住家、店舗、工場(発電所・変電所を含む)、倉庫その他の建物 |
償却資産 | 構築物、機械、器具、備品、船舶、航空機などの事業用資産 |
1月1日時点の所有者が払う
固定資産税の納税義務があるのは、課税対象の固定資産を1月1日時点で所有している人で、1月1日時点の所有者とは固定資産課税台帳に登録されている人です。
土地や家屋が未登記で登記簿に所有者として記載がなくても、自治体が調査して固定資産課税台帳に所有者が登録されていれば、その人が納税義務者として支払います。
固定資産税の納付書が届く時期は一般的に4月~6月頃で、年4回に分けて払います。自治体によっては、一括納付も可能です。固定資産税がいくらなのか、納付書に書かれた金額を確認した上で期限までに納付することになります。
相続財産の固定資産税は誰が払う?
固定資産税と相続との関係で注意が必要なのが「いつ時点の固定資産税を誰が払うのか」という点です。
例えば、被相続人(亡くなった人)の未納付分は納付が不要なのか、それとも相続人が払うのか、正しく理解していないと、相続人は自分がいくら税金を払うのか計算できません。勘違いをすると、納税を忘れて罰則を科される場合もあります。
以下では3つのケースについて紹介するので、それぞれのケースで誰が固定資産税を払うのか、確認しておきましょう。
➀亡くなった人の未納付分がある場合
1月1日時点で親が土地の所有者だったものの、納付書が届く前の3月に亡くなった場合、固定資産税はまだ払われていない状態です。
このとき「納税義務者が亡くなって払う人がいない以上、納税は不要になるのでは?」と思うかもしれませんが、被相続人の未納付分は相続人が払うことになります。納税が不要になるわけではありません。
実際の相続においては、1年分の固定資産税のうち一部だけが未納というケースもあるので、未納になっている分がいくらで納期はいつなのか、相続開始後に確認が必要になります。
固定資産税の納期は自治体によって異なりますが、仮に4回の納期が4月・7月・12月・2月だった場合、9月に亡くなったのであれば第3期と第4期の2回分が未納です。未納分は相続人が支払うことになり、相続税を計算する際に債務控除の対象となります。
②遺産分割協議中に1月1日を迎えた場合
遺言書がなく相続人が2人以上いる場合、遺産の分け方を相続人で話し合って決める遺産分割協議を行います。
不動産を誰が相続するのか、話し合っているときに1月1日を迎えた場合、1月1日時点の所有者が決まっていないため固定資産税がかからないかというと、そうではありません。
遺産分割がされていない家や土地は相続人全員の共有財産になるので、相続人全員に固定資産税の納税義務が生じます。
基本的には法定相続分に応じて各相続人が負担しますが、話し合って合意できる場合は負担割合を変えても問題ありません。誰か一人が立替えて、遺産分割協議終了後に新しい所有者が立替えた人に払う方法も考えられます。
この際、複数の相続人で負担する場合でも、各相続人が個別に納税手続きをすることはできません。自治体に相続人代表者指定届を出すと、代表者として指定した人に納付書が届くので、代表者が各相続人からお金を集めるなどして納付します。
➂誰が不動産を相続するか決まった場合
1月1日までに遺産分割協議が終了して誰が家や土地を相続するのか決まった場合は、新しい所有者となった人が固定資産税を支払います。
また1月1日時点で遺産分割協議が終わっていない場合は、各相続人に納税義務が生じますが、納付期限を迎える前に協議が終わって不動産を相続する人が決まった場合は、相続する人が固定資産税を払うことも考えられます。
1月1日時点で遺産分割協議が継続中の場合は、誰が不動産を相続するか決まる前と後、両方の固定資産税の取扱いについて遺産分割協議の中で決めておくほうが良いでしょう。
相続後に毎年払う固定資産税はいくら?税額の計算方法
家や土地を相続すると、固定資産税を毎年払うことになります。固定資産税の税額は、以下の式で計算した金額です。
- 固定資産税額 = 課税標準額 × 税率(一般的に1.4%)
固定資産税の税率は多くの自治体で1.4%ですが、自治体によっては1.5%など異なる場合があります。税率がいくらなのかは、自治体のサイトなどで確認するようにしてください。
課税標準額とは、自治体が管理する固定資産課税台帳に登録された固定資産税評価額をもとに決まる金額です。固定資産税評価額は3年ごとに改訂が行われ、直近では2021年度が評価替えの年でした。
家屋の場合は、基本的に固定資産課税台帳に登録された価格が課税標準額となり、土地の場合は、登録された価格に負担調整措置などを適用して課税標準額が決まります。
一戸建て
一戸建ての場合、新築住宅であれば一定の要件に該当すると固定資産税が3年間1/2に減額される特例があります。
ただし相続で実家の家を受け継ぐようなケースだと、新築後3年を経過していることが多く、特例によって減額できるケースは多くありません。一般的には減額の特例の適用はなく、課税標準額に税率をかけて税額を計算します。
仮に建物の課税標準額が600万円、税率が1.4%であれば、固定資産税は600万円×1.4%で8.4万円です。一戸建ての相続で家が建っている土地も相続する場合は、家と土地の両方に固定資産税がかかります。
土地
住宅用地では課税標準の特例措置が設けられており、固定資産税が以下の通り軽減されます。
| 特例の内容 |
小規模住宅用地 (住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分) | 課税標準額は土地の価格の1/6 |
一般住宅用地 (小規模住宅用地以外の住宅用地) | 課税標準額は土地の価格の1/3 |
200㎡までの部分は1/6に、200㎡を超える部分は1/3に、それぞれ固定資産税が減額されます。減額の対象となる土地は住宅用の土地なので、家が建っていない更地は対象になりません。店舗や事務所の建物などが建っている事業用の土地も対象外です。
マンション
マンションに住む権利である賃借権を相続する場合は、相続後に住んでも固定資産税はかかりませんが、マンション自体を相続して所有者になる場合は固定資産税がかかります。
マンションを相続すると建物だけでなく土地の所有者にもなるため、固定資産税の計算では建物・土地の両方が課税対象です。一般的には建物における専有面積の割合を計算した上で、マンションの土地も敷地全体に対して同じ割合で所有しているものとして考えます。
一戸建ての場合と同じく新築であれば固定資産税が1/2になり、減額期間はマンションでは新築後5年です。また住宅用のマンションでは、土地にかかる固定資産税を計算する際に先述の軽減措置を適用でき、課税標準額が1/6(200㎡超の部分は1/3)になります。
固定資産税の税額や固定資産税評価額の確認方法
固定資産税の税額や税額計算で使う固定資産税評価額がいくらなのか、確認したい場合に使う資料としては主に以下の3つが挙げられます。
1.固定資産課税台帳
固定資産課税台帳とは、固定資産の所有者の氏名や住所、固定資産税評価額、税相当額などが記載されている台帳です。自治体の窓口で申請し、固定資産の所有者や相続人であれば閲覧できます。
相続人が閲覧申請をする場合は、戸籍謄本など被相続人が亡くなったことが分かる書類や相続人の本人確認書類が必要になることが一般的です。手続き書類をあらかじめ自治体のサイトなどで確認してから、窓口に行くことをおすすめします。
2.固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは家や土地などの評価額を証明する書類で、固定資産税評価額や課税標準額などが記載されている書類です。記載されている課税標準額を使えば、固定資産税の金額を計算できます。
自治体の窓口や郵送で申請すれば取得でき、コンビニで取得できる場合もあるので、自治体のサイトなどで手続き方法を確認するようにしてください。相続人が申請する場合は、一般的に戸籍謄本など被相続人が亡くなったことが分かる書類が必要になります。
また、不動産の相続登記で提出する場合は最新年度の証明書が必要になるので、家や土地を相続して4月1日以降に相続登記をする方は、4月1日以降に取得するようにしましょう。
3.納税通知書・課税明細書
納税通知書や課税明細書は、固定資産の所有者に届く書類です。不動産を相続して所有者になれば自治体から納税通知書や課税明細書が届き、固定資産の評価額や固定資産税の税額を確認できます。
また、相続人代表者指定届を提出すれば代表者に納税通知書が届くので、記載された金額を見れば被相続人の未納付分の金額を確認することが可能です。
固定資産税に関する注意点
固定資産税がいくらかかるのか確認して、「この額なら払えるから問題ない」と思って家や土地を相続した場合でも、相続後の対応の仕方によっては税額が想定と変わるなどして負担が重くなる場合があります。固定資産税に関して注意すべき点は次の4つです。
1.納付期限を過ぎると延滞金がかかる
税金は期限までに払う必要があり、納付期限を過ぎると期限翌日から納付完了日までの日数に応じて延滞金がかかります。延滞金の割合は年によって異なりますが、令和4年度は期限の翌日から1ヵ月を過ぎる日までは年率2.4%、1ヵ月経過後は年率8.7%です。
仮に期限を過ぎた場合でも早く納めれば延滞金が少なく済むので、1日でも早く払うようにしましょう。固定資産税を延滞すると自治体から督促が行われ、財産の差し押さえが行われる場合もあるので注意が必要です。
不動産を相続したら毎年期限までに納付し、遺産に不動産が含まれる場合は、被相続人の未納付分の有無や納付期限がいつなのか必ず確認してください。
2.空き家のまま放置すると高くなる場合がある
実家の土地と家を相続するようなケースでは住宅用地に該当することが多く、土地の固定資産税を計算する際に課税標準額が1/6(200㎡超の部分は1/3)になります。
しかし空き家のまま放置して、特定空き家に指定されてしまうと軽減措置の適用は受けられません。特定空き家とは、放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある空き家や、著しく衛生上有害となる恐れのある空き家などです。
例えば、課税標準額が家600万円、土地2,400万円(敷地面積200㎡以下)の場合、軽減措置の適用有無で次のように税額が変わります。
<軽減措置が適用される場合>
- 固定資産税額=600万円×1.4%+2,400万円×1/6×1.4%=14万円
<軽減措置が適用されない場合>
- 固定資産税額=600万円×1.4%+2,400万円×1.4%=42万円
特定空き家の指定を受けると税負担が大きく増える場合があるので、適切に維持管理を行うなど、特定空き家の指定を受けないようにする必要があります。
3.空き家を解体して更地にすると高くなる場合がある
家と土地を相続する場合、相続後に家を解体して更地にすれば家の固定資産税がかからず負担が軽くなると考える人もいるかもしれません。しかし更地にすると、軽減措置の適用対象外になって土地の固定資産税が上がり、寧ろ負担が増える場合があります。
先程の例である家600万円、土地2,400万円のケースでは、軽減措置があれば家・土地あわせて税額は14万円ですが、土地だけの場合は2,400万円×1.4%で33.6万円です。空き家を解体すれば維持管理の手間は減りますが、解体費用がかかり固定資産税が高くなります。
相続後に費用負担がいくら生じるのか、不動産の活用の仕方によって大きく変わる場合があるので、あらかじめ概算額を計算して確認しておくことが大切です。
4.相続放棄をしても納税義務が生じる場合がある
相続放棄をすれば最初から相続人ではなかったことになり、家や土地などの不動産についても相続しないため固定資産税の支払義務は基本的に生じません。しかし、例外的に相続放棄をしても納税義務が生じる場合があります。
例えば、家や土地の所有者が亡くなった後、亡くなった人の相続人が新しい所有者であると自治体が推定して、固定資産課税台帳に所有者として登録されてしまったケースです。
法律上、固定資産課税台帳に登録された人が納税義務者になる台帳課税主義が取られているため、仮にその人が相続放棄をしても納税通知書が届き、納税義務を負う場合も考えられるでしょう。
税金の納税義務と相続放棄の関係では、専門的な知識が必要になる場合があります。相続放棄後に納税通知書が届いた場合は、取扱いについて税理士などに早めに相談しましょう。
固定資産税だけがかかる負動産になりそうな場合
「家や土地はとりあえず相続して、どうするかは相続後に考えよう」という人がいますが、不動産を相続すると後で困る場合があります。一旦相続してしまうと、手放したくても手放せなくなり、固定資産税などの維持費だけがかかる負動産になることがあるからです。
家族が亡くなって相続が起きると何かと忙しくなるため、じっくりと考える時間は取りにくいかもしれませんが、「不動産を相続して本当に問題ないか」「相続すると維持費はいくらかかるのか」、後で困らないようにしっかりと検討を行いましょう。
相続後に売りたくても買い手が見つからない場合がある
土地を相続したものの使いようがなくて売りたい場合、そもそも使い道がない土地であれば買ってくれる人がいない可能性があります。
不動産の立地条件にもよりますが、「不動産はとりあえず相続して後で売ればいい」と安易に考えず、そもそも売れずに困る可能性がないか、相続する前に確認や検討が必要です。
また相続して家や土地の所有者になった場合、「所有権を放棄して所有者でなくなる」といったことはできません。相続した後に不動産を手放せず困る可能性があるなら、相続せず最初から所有者にならない相続放棄を検討する必要があります。
相続放棄ができるのは3ヵ月以内
相続放棄ができるのは、相続の開始を知ってから3ヵ月以内です。3ヵ月を過ぎると原則として相続放棄はできないので、相続放棄をするかどうかは3ヵ月の期限までに決めなければいけません。
相続放棄をすると初めから相続人ではなかったことになり、遺産を一切相続しないことになります。借金や負動産を相続せずに済むものの、現金や預金なども相続できなくなる点に注意が必要です。
また、相続人全員が相続放棄をした場合には相続財産管理人の選任が必要になり、裁判所に納める予納金として100万円ほどの費用がかかる場合があります。しかし、相続放棄をしたとしても、遺産相続に関わらず、費用面・手続き面ともに負担がなくなるとは限りません。
不動産を相続するか相続放棄をするか判断に迷った場合は、司法書士への相談・依頼も検討してみてください。相続する場合には相続登記の手続きを任せることができ、相続放棄をする場合には裁判所に提出する相続放棄申述書の作成までも任せることが可能です。
相続土地国庫帰属制度を使って手放せる土地には条件がある
2023年4月開始予定の相続土地国庫帰属制度は、相続によって取得した不要な土地を国に引き取ってもらえる制度です。一定の条件を満たすと土地を国に渡すことができ、所有権を手放すことができます。
ただし、建物が建っている土地や担保権が設定されている土地などは制度の対象外です。土地の上に建物がある場合は解体して更地にするなど、制度の要件を満たすように対応が必要になる場合があります。
また審査を通って土地を国に渡せる場合には、10年分の管理費用相当額を払わなければいけません。手放すことができれば固定資産税など維持費がかからずに済みますが、相続土地国庫帰属制度を使うことによる費用負担は生じてしまいます。
まとめ
家や土地などの固定資産を相続すると、固定資産税が毎年かかります。「税金がこれほど高くて負担になるとは思っていなかった…」と相続後に困ることがないように、固定資産税がいくらくらいかかるのか、あらかじめ概算額を計算して確認しておきましょう。
特定空き家に指定された場合や家を解体して更地にした場合など、相続した後に固定資産税が高くなる場合があるので注意が必要です。相続後に家や土地をどのように活用するのか、活用できそうになければ相続放棄をしたほうが良いのかを検討しましょう。
不動産の相続では専門的な知識が必要になりますので、家や土地の相続でお困りの方は司法書士法人みどり法務事務所にご相談ください。当事務所では、相続登記の代行など不動産を相続する方のための各種サポートを行っています。
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