不動産にかかる相続税の計算方法を解説!相続税額を下げる具体的な方法は?
2023.01.12 税金対策「不動産の相続が多くて相続税が不安」「現金が足りなくて自己資金からの支払いになったらどうしよう?」相続が発生時に、不動産にかかる相続税がどれくらいかかるか不安な方もいらっしゃるでしょう。もし、不動産だけしか相続しないのに相続税が発生することになれば、自己資金から納税資金を捻出しなければいけません。相続税がいくらくらいになるかは事前に把握しておいた方が安心といえます。
この記事では、不動産の相続で相続税が発生する場合の計算方法、相続税額を下げる方法についてご説明します。
目次
不動産の相続は相続税の対象になる
相続全体が基礎控除額を上回る場合、不動産も相続税の対象になります。
例えば、相続する財産が不動産ばかりで現金の相続が少ない場合にも、相続税の対象となれば相続税の支払いが必要です。場合によっては、相続人の自己資金から相続税を支払ったり、相続する不動産を売却したりして納税する可能性もあるでしょう。
不動産の相続税評価額を計算する方法
不動産にかかる相続税を計算するためには、まず相続における不動産評価額の計算が必要です。不動産の評価額を算出するためには、土地と建物に分けて計算します。そして、不動産評価額が計算できたら、他の相続財産と合わせて相続税全体を計算します。
相続税の計算方法については関連記事【相続税】をご参照ください。
土地の相続税評価額計算方法
土地の相続税評価額を計算する際には、まず路線価を調べるために国税局のホームページで確認します。路線価とは、路線に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額のことです。路線価は、毎年7月1日に国税局や各地税務署で発表されます。土地の相続税評価額を求める計算式は下記の通りです。
【土地の相続税評価額=路線価(/㎡)×土地の面積(㎡)】
利用しにくい土地や、土地の間口の大きさなどにより補正される場合もあります。
また、田んぼや農村など路線価がない場合、倍率方式で求めます。倍率方式では固定資産税評価額を利用します。固定資産税評価額とは、市区町村が調査して固定資産税台帳に登録する土地の評価額のことです。倍率方式で相続税評価額を求める際の計算式は、下記の通りです。
【土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率】
また、人に土地を貸している場合など通常より土地の評価が下がります。
借地権の計算式
【土地の相続評価額×借地権割合】
貸宅地の計算式
【土地の相続評価額×(1−借地権割合)】
貸家建付地の計算式
【土地の相続評価額×(1−借地権割合×30%×賃貸割合)】
建物の相続税評価額計算方法ル
建物の相続税評価額は、基本的には固定資産税評価額と同じです。不動産は、現金に比べると流動性が低く換金しにくいので、納税者の負担を考慮されているのです。万が一、時価で評価すると相続税を支払いすぎることになるので注意しましょう。なお、固定資産税評価額は市町村から毎年送られてくる「固定資産税課税明細書」に記載されています。
相続税の基礎控除額に収まれば納税の必要なし
相続財産が基礎控除額の範囲に収まれば相続税の対象にはなりませんが、基礎控除に収まらなければ相続税の対象です。
基礎控除の計算方法は下記の通りです。
【3,000万円×(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額】
例えば、妻と子供2人が法定相続人の場合、4,800万円が基礎控除額となるので、相続財産が4,800万円以下なら相続税はかかりません。しかし、被相続人が所有していたマンションが5,000万円なら相続税がかかってしまいます。
不動産の相続税額を下げる方法
不動産の相続税額を下げる方法を紹介します。
小規模住宅地等の特例を活用
小規模住宅宅地等の特例を活用できると、不動産にかかる相続税を最大80%下げることが可能です。
例えば、被相続人等の居住の用に供されていた宅地の場合、面積が330平方メートル以内であれば80%減額されます。特定事業用宅地や貸付事業用宅地等でも条件に当てはまれば利用可能です。細かいルールについては、国税庁のホームページをご確認ください。
配偶者の税額の軽減
配偶者に相続する場合、1億6千万円まで、または配偶者の法定相続分相当額のどちらかの大きい額までは相続税がかかりません。ほとんどの不動産は1億6千万円以内に収まるはずなので、配偶者へ不動産を相続する場合には、相続税はかからないと言っていいでしょう。
ただし、相続は2次相続まで考えて行うべきです。2次相続では、相続人の数が減るので基礎控除額も減り、相続税負担が大きくなってしまう可能性があります。不動産を配偶者へ相続する場合は、2次相続も含めた相続全体を考えて、配偶者の税額の軽減を利用するかを決めましょう。
相続時精算課税制度の活用
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子や孫に対し、財産を贈与する場合、2,500万円までなら贈与税がかからずに贈与ができる制度です。贈与税はかかりませんが、相続発生時には相続税が課税されます。
この相続税は、相続時精算課税制度を利用した時の財産評価額で計算されるのがポイントです。そのため、開発中の都市にある不動産で将来的に値上がりが予想される物件などを相続する際には、相続発生時の相続税を適用するより負担が少ない可能性があります。
ただし、相続時精算課税制度を利用した後は年間110万円までの贈与が非課税になる暦年贈与を利用できなくなります。利用時のタイミングは慎重に検討しましょう。
不動産を相続する際の注意点
ここでは、不動産を相続する際の注意点についてご説明します。
相続税の他に登録免許税などもかかる
不動産を相続する場合、相続登記をします。不動産の名義変更に当たり、登録免許税や謄本などの書類取得費、司法書士への報酬などが必要です。相続税の支払いだけではなく、これらの負担があることについても理解しておきましょう。
納税資金を用意できない場合は売却を検討
不動産の相続が多く現金の相続が少ない場合にも基礎控除額を超えると相続税の支払いが必要です。納税資金を手持ちの資金から用意できない場合には、不動産の売却も検討する必要があります。
相続税納付の期限に間に合うように手続きが必要
相続税の申請・納付は、被相続人が亡くなったと知った日の翌日から10カ月以内です。そのため、遺産分割協議が必要な場合はなるべく早めに行い、誰がどの財産を引き継ぐかを決める必要があります。もし、不動産を相続することになり、相続税の支払いをできないのであれば不動産を売却して納税資金を用意する必要も出てきます。納付期限を過ぎると延滞税がかかりますので、期限内に間に合うように手続きを行いましょう。
税金がかかるので放置は禁物
思い出が残った実家を、しばらく空き家で残しておこうと思われることもあるでしょう。しかし、空き家で残しておく場合も固定資産税がかかることを忘れてはいけません。また、住んでいなくても、修繕費などのメンテナンスにお金がかかります。もし相続人が亡くなったら、その不動産を相続する子供や孫の負担になる可能性があるので、自分が住まない不動産を引き継ぐ場合はいつまで残しておくかなど決めておくべきといえます。
相続登記を忘れない
不動産を相続したら相続登記を行います。相続登記をすることで、所有権を主張することができたり、融資を受ける際の担保にすることが可能です。一方で不動産登記を行わないと、次の相続が起こった際に相続人が増えて、権利関係が複雑になります。
現段階では相続登記は義務ではありませんが、2024年から義務化する方針になりました。法改正前の相続も対象になり、相続登記を行わないと罰金も発生しますので早めに対応しましょう。
相続人の1人が不動産を相続する場合には代償が必要
相続人の1人が不動産を相続する場合には、遺産分割協議の状況次第では他の相続人に対して法定相続分または遺産分割協議で決めた割合の金銭を支払う必要があります。
例えば、2人の兄弟が相続人で、4000万円の不動産だけが相続財産として残されたと仮定しましょう。法定相続割合で相続するという場合には、兄が不動産を相続すると2000万円を現金で弟に渡すという形になります。
遺言が存在し、兄が「両親の介護をしたので不動産は自分が引き継ぐ。弟には遺産を引き継ぐ必要はない。」と主張しても、弟には遺留分(法律で守られた最低限の遺産取得分)を請求する権利があることを忘れてはいけません。
相続税の納付について
最後に、相続税の納付方法についてご説明します。
相続税の納付方法・納付期日
相続税の納付期限は、被相続人が亡くなったと知った日の翌日から10カ月以内です。相続税の申告書を作成して税務署へ提出したのちに、金融機関などで現金一括納付します。
金融機関で支払う以外には、クレジットカード決済、コンビニ支払い(30万円まで)、税務署の窓口で支払いも可能です。
相続税の支払いに遅れた場合
相続税の支払いに遅れた場合、延滞税を支払わなければいけません。延滞税の支払いは2段階で利率が上がります。
令和3年1月1日~令和3年12月31日の延滞税の利率は下記の通りです。
第1段階(納期限から2ヶ月以内) 2.5%
第2段階(納期限から2ヶ月以上) 8.8%
延滞税は毎年変わるので、必ず最新の情報を国税庁のホームページで確認するようにしてください。
参考:国税庁 延滞税について
まとめ
相続財産の額が基礎控除額を上回る場合、相続税を支払う必要があります。不動産しか相続しない場合は、自己資金から相続税を用意したり、不動産を売却して相続税を支払ったりしなくてはいけません。相続税の納付は、被相続人が亡くなったのを知った日の翌日から10ヶ月以内なので、急いで準備が必要です。
不動産にかかる相続税額は、土地と建物に分けてそれぞれ計算します。現金で相続するよりも、不動産で相続する方が評価は低くなるようになっており、小規模住宅宅地等の特例などをうまく利用すると節税効果も得られます。相続財産が多く、少しでも評価を低くしたい場合には財産を残す人が存命の内に利用を検討するといいでしょう。
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