不動産登記とは?自分でできる? 手続きの流れや費用を紹介
2024.02.29 不動産登記購入や相続、贈与などで不動産を取得すると、名義を変更する登記の手続きを行う必要があります。不動産登記は、取得した土地や家を自分の名義に変更して、自分が権利者であることを登記簿に登録する大切な手続きです。
この記事では、不動産登記の手続きの流れやかかる費用、期限について紹介します。どのような手続きが必要になるのか確認した上で、自分ではできそうになければ司法書士に早めに相談するようにしてください。
目次
不動産登記とは?
そもそも登記とは、権利関係を社会に公示する制度です。権利関係を登記簿に記載して一般公開することで、権利関係の状況が誰にでも分かるようになり、取引の安全を図る役割を果たしています。
登記には商業登記や船舶登記などさまざまな種類があり、土地や建物に関する「不動産登記」もそのひとつです。所有者の氏名・住所や抵当権の設定状況など、不動産に関する権利関係を登記すれば誰でも確認できる状態になり「誰が所有している不動産なのか」や「その不動産に抵当権などの担保権が付いているか」など、権利関係が明確になります。
逆に、不動産に関する権利があるにも関わらず登記をしていないと、他の人に権利を侵害されても対抗できず、不利益を被る場合があるので注意が必要です。
不動産登記が必要になるケース
不動産に関する権利関係に変更が生じた場合や所有者の住所など、登記内容に変更が生じた場合は登記が必要になります。以下では、不動産登記が必要になる主なケースを紹介します。
購入や相続などで不動産を取得したとき
不動産を購入した場合は所有者が売主から買主に変わり、相続で取得した場合は所有者が被相続人から相続人に変わるので、所有権移転登記を行って不動産の名義を新たな所有者に変更します。
また家を新築した場合は、その建物に関する情報が登記簿にそもそも登録されていません。そのため、まずは表題登記を行ってから所在地や面積など建物の情報を登録し、所有権保存登記を行って所有者など権利関係を登録します。
相続時の不動産の名義変更について詳しく知りたい方は、【相続時の[家・土地・マンションの名義変更]をかんたん解説!】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらもぜひご参照下さい。
住所変更や氏名変更があったとき
不動産の所有者が引っ越して住所が変わった場合は住所変更登記、結婚等で氏名が変わった場合は氏名変更登記を行います。
住所や氏名が変わったのに変更登記をしないと、登記簿上の住所や氏名が住民票記載の内容と違ってしまい、本当にその不動産の所有者なのか確認ができません。売買や抵当権の設定に不動産会社や金融機関が応じてくれないなど困る場合があります。
住宅ローンを組むときや完済したとき
住宅ローンを組んで金融機関から借入れをする際、担保にする不動産に抵当権を設定する登記を行い、返済が終わったら抵当権の抹消登記を行います。
一般的に抵当権の設定登記は金融機関が主導して行うので自分で対応する必要はありませんが、抹消登記は自分でやらなければいけません。ローンを完済しても登記簿から抵当権の記載が自動的に消えるわけではないので、金融機関から届く完済を証明する書類を使って抵当権抹消登記を行う必要があります。
建物を取り壊したとき
解体や災害などで建物がなくなった場合には滅失登記を行います。滅失登記をしないと登記簿上は建物が引き続きあることになり、更地を売却したくても買主が応じてくれない場合や固定資産税がかかってしまう場合があるので注意が必要です。
登記をするとどんな情報が登録される?登記簿謄本の見方
不動産登記をすると登記簿に情報が登録されます。謄本とは原本の写しで、法務局で管理されている登記簿の写しが「登記簿謄本」、データで管理されているものが「登記事項証明書」です。
登記簿謄本と登記事項証明書は紙かデータかという違いはありますが、証明内容は基本的に同じで表題部と権利部(甲区・乙区)に分かれています。
出展:法務省「不動産登記のABC」
表題部
表題部には、不動産の所在地など物理的状況に関する事項が記載されています。主な事項を挙げると以下のとおりです。
[土地]
所在、地番、地目(土地の現況)、地積(土地の面積)など
[建物]
所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積など
権利部(甲区)
権利部(甲区)には、所有者に関する事項が記載されています。土地や建物の所有者は誰なのかが分かり、所有権移転登記や所有権に関する仮登記、差し押さえ、仮処分などが記載されているので、いつ・どんな原因(売買や相続など)で所有権を取得したのか分かります。
権利部(乙区)
権利部(乙区)には所有権以外の権利に関する事項が記載されています。権利部(乙区)を見れば抵当権や地上権、地役権などの設定状況が分かるので、その不動産に誰がどのような権利を持っているのか確認できます。
登記簿謄本の記載内容を確認する方法
不動産の所有者は誰なのか、抵当権は設定されているのか、権利関係を知りたい場合には登記簿謄本を取得すれば確認できます。登記簿謄本を取得できる人の範囲に制限はなく、申請すれば誰でも確認が可能です。以下では、主な確認方法を紹介します。
法務局の窓口や郵送で申請する
法務局の窓口で手続きをする場合、不動産登記は対象不動産がある地域の法務局でなければ手続きができませんが、登記簿謄本の取得に関しては、基本的に全国どこの法務局でも手続きができます。
窓口に行く場合、法務局が開いているのは平日8:30から17:15までです。窓口備え付けの交付申請書に記入して、発行手数料600円分の収入印紙を購入・貼付して提出します。最寄りの法務局の場所が分からない方は、以下のサイトで調べるようにしてください。
法務局:管轄のご案内
郵送で申請する場合は、交付申請書の他に切手を貼った返信用封筒も同封して郵送します。
登記・供託オンライン申請システムを使って申請する
登記・供託オンライン申請システムとは、登記等の申請や請求の手続きがネット経由でできるシステムです。初めて利用する場合は最初に会員登録を行い、続いて請求書の作成・送信や手数料の納付を行えば登記簿謄本を受け取れます。
登記簿謄本の受取方法には、自宅等に郵送してもらう方法と指定した法務局の窓口で受け取る方法があります。自宅に郵送してもらえば申請から受け取りまで一連の手続きを自宅で完結できるので、法務局に行く手間はかかりません。
また、窓口で請求する場合に比べて手数料が安く、郵送で受け取る場合の手数料は500円、最寄りの法務局で受け取る場合の手数料は480円です。
登記情報提供サービスを使って閲覧する
登記情報提供サービスとは、登記情報をネットで確認できる有料サービスです。あくまで登記情報を確認するだけで登記簿謄本は発行されませんが、情報を確認するだけであれば、登記簿謄本の発行申請は行わず登記情報提供サービスを使って確認する形でも構いません。
利用方法には2つあり、個人としてあらかじめ利用者登録をしてID・パスワードを取得して利用する方法と、利用者登録はせず一時利用で申請してクレジットカードで決済する方法があります。
不動産登記を自分でやるときの手続きの流れ
購入や相続、贈与など、不動産登記をする理由が何かによって必要書類が変わりますが、いずれのケースでも、登記手続きの全体的な流れはおよそ同じです。以下では不動産登記を自分でやる方法について、手続きの流れに沿って紹介していきます。
1.必要書類を揃える
不動産を購入して所有権移転登記を行うケースであれば、登記済権利証(又は登記識別情報通知)や売主の印鑑証明書、買主の住民票、固定資産評価証明書、売買契約書などが必要になります。印鑑証明書は3ヵ月以内に発行したものに限りますが、住民票には期間の制限はありません。
相続登記では被相続人の戸籍謄本も必要になり、遺産分割協議をした場合は遺産分割協議書も、遺言に基づいて相続登記をする場合は遺言書も、それぞれ手続きで必要になります。
2.登録免許税を計算する
登記をする際、登録免許税を納付する必要があります。
・登録免許税の税額=不動産の課税標準額×税率
課税標準額は、固定資産評価証明書に記載されている固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てた金額です。売買や贈与であれば税率2.0%、相続であれば税率0.4%で計算し、税率をかけて求めた額に100円未満の端数があれば切り捨てます。(ただし、軽減税率が適用されるなど税率が異なる場合があります)
登録免許税の納付方法は原則として現金納付です。銀行等に備え付けられた納付書を使って納付し、領収書を登記申請書に貼付して提出します。
3.登記申請書を作成する
登記申請書の用紙は、以下のサイトからダウンロードできます。売買や贈与、相続など、登記をする理由ごとに用紙が掲載されているので、ご自分のケースに該当する用紙をダウンロードしてください。記入例も掲載されています。
法務局:不動産登記の申請書様式について
課税価格の欄には、課税標準となる不動産の価額を記載します。前述したとおり、課税標準額は固定資産評価証明書に記載された固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てた金額です。不動産番号や所在地など、不動産の表示の欄には登記簿謄本記載の内容を転記します。
4.登記申請書と必要書類を法務局に提出する
登記の申請方法には窓口申請・郵送申請・オンライン申請の3つの方法がありますが、このうちオンライン申請は主に専門家が使う方法です。一般の方が自分で登記をする場合は窓口または郵送で手続きをします。
不動産登記は全国どこの法務局でも申請できるわけではなく、手続きができるのは登記対象の不動産がある地域の法務局です。管轄の法務局に登記申請書と必要書類を提出します。
5.登記完了後に登記識別情報通知を受け取る
登記は申請書を提出してすぐに完了するわけではなく、一般的に申請後1週間から10日ほどで完了します。登記が完了すると登記識別情報通知と登記完了証が発行されるので、窓口で受け取る場合には登記完了予定日以降に法務局に行って受け取るようにしてください。事前に申請しておけば、これらの書類を自宅等に郵送してもらうことも可能です。
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不動産登記でかかる主な費用
不動産登記では費用がかかるので、どれくらい費用がかかるのか事前に確認して、費用の支払いに充てる資金を準備しておく必要があります。以下では、不動産登記でかかる主な費用の種類や金額の目安を紹介します。
登録免許税
前述のとおり、登録免許税は不動産の課税標準額に税率をかけて計算します。
例えば、購入する建物の課税標準額が1,000万円、税率が2.0%であれば税額は20万円、購入する土地の課税標準額が2,000万円、軽減税率が適用されて税率1.5%であれば税額は30万円です。
必要書類の取得費用
不動産登記で必要になる主な書類の取得費用は、以下のとおりです。
- 戸籍謄本:1通450円
- 除籍謄本:1通750円
- 改製原戸籍:1通750円
- 住民票:1通300~400円程度(自治体による)
- 住民票除票:1通300~400円程度(自治体による)
- 印鑑証明書:1通200~400円程度(自治体による)
- 固定資産評価証明書:1通200~400円程度(自治体による)
- 登記簿謄本:1通600円(申請方法による)
必要書類の種類はケースによって変わるので一概にいくらかかるとは言えませんが、一般的には取得費用として数千円ほどかかります。また、相続登記では亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本が必要になり、取得費用がかさむ場合があります。
相続登記の必要書類についてさらに詳しく知りたい方は、【法務局の[相続登記の必要書類一覧]をかんたん解説!】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらもぜひご参照下さい。
司法書士や土地家屋調査士への支払報酬(専門家に依頼する場合)
不動産登記の手続きを専門家に代行してもらう場合、報酬額は物件数や案件の複雑さなどで変わります。一般的には7万円~15万円ほどかかるケースが多いようですが、報酬額は依頼先によって異なるので、金額を事前によく確認するようにしてください。
また、土地家屋調査士に不動産の測量や法務局への申請などを依頼する場合の報酬額も依頼内容によって変わります。日本土地家屋調査士会連合会の調査結果によると、木造2階建ての居宅(1階89.21㎡・2階46.18㎡)の表題登記なら平均報酬額は81,676円です。面積が広いなど案件の内容によっては20万円以上かかる場合もあります。
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不動産登記に期限はある?
不動産登記には、期限があるものとないものがあります。期限を過ぎると罰則の対象になり、期限がない場合でも未登記のままにすると問題が起きることがあるので注意が必要です。
建物の表題登記や滅失登記は1ヵ月以内に申請する必要がある
表題登記は不動産の所有権を取得した日から1ヵ月以内に、滅失登記は不動産が滅失した日から1ヵ月以内に申請しなければいけません。期限を過ぎると10万円以下の過料が課せられるので、家を新築した場合や取り壊した場合は速やかに登記を行いましょう。
相続登記は原則3年以内に申請する必要がある
相続登記については2024年4月1日以降義務化となりました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があります。正当な理由なく相続登記をせずに放置していると、最大10万円の過料の対象になります。また、この義務は2024年4月1日以前に開始した相続にも適用されますので注意が必要です。
また、相続が起きると相続対象の不動産は相続人の共有状態になるので、仮に遺産分割協議を経て自分が不動産を相続することになっても、登記をせず所有者として登録していないと、他の相続人にお金を貸している債権者がその不動産を差し押さえる可能性があります。
不動産を相続した場合には速やかに登記の準備を進めてきましょう。
相続登記の義務化についてさらに詳しく知りたい方は、【法務局の【相続登記の義務化】が分かる! 2024年4月以降の罰則や対策をかんたん解説!】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらもぜひご参照下さい。
表題登記・滅失登記・相続登記以外の登記には期限はなく、仮に手続きをしなくても罰則を科されることはありません。しかし未登記のままにすると問題が起きる場合があります。
例えば、土地を購入したのに所有権移転登記をしていないと、万が一売主が他の人に土地を売って別の人が所有権移転登記をした場合、自分は土地の所有者として登記簿に登録されていないので所有権を主張できません。民法上は不動産の二重譲渡がされた場合に、原則として先に登記申請をした方が保護されることになっています。
未登記のままにしても良いことはないので、登記が必要な場合にはすぐに手続きを行うことが大切です。手続き方法がよく分からない場合は専門家に早めに相談するようにしてください。
不動産登記は自分でやる?司法書士に依頼する?
不動産登記は一般の方が自分でやることもできますし、登記の専門家である司法書士に依頼することもできます。
自分でやる場合は司法書士報酬がかからず費用を抑えられる点がメリットですが、自分で書類を揃えたり登記申請書を作成したりする必要があり、手間がかかる点がデメリットです。必要書類を役所に取りに行く場合や申請手続きで法務局に行く場合、平日しか開いていないので、人によっては平日に仕事を休まなければいけません。
一方で司法書士に依頼する場合は、書類の取得から申請まですべて任せられるので手間がかからずに済み、専門家に任せることでミスなくスムーズに登記を終えられます。不動産登記の難易度はケースによって異なりますが、専門家でないと対応が難しい場合もあるので、最初から司法書士に依頼するほうが良いでしょう。
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まとめ
土地や家を購入した場合や相続で取得した場合、所有権移転登記を行って名義を自分に変更する必要があり、不動産所有者の住所や氏名が変わった場合にも登記が必要になります。
多くの不動産登記では期限はありませんが、登記をせず登記簿の記載が間違った状態のままだと不利益を被るリスクがあるので、登記が必要な場合にはすぐに手続きをすることが大切です。
登記のやり方が分からないなど、不動産登記のことでお困りの方は、司法書士法人みどり法務事務所にご相談ください。司法書士法人みどり法務事務所では相続でお悩みの皆様に、安心でリーズナブルな相続を済ませて頂くために、定額の不動産の名義変更サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする遺産相続に関する各種サービス(ゆうちょ・みずほ・三井住友・三菱UFJ、りそななどの各金融機関の相続にともなう預貯金の解約払戻し、その他相続に関する裁判所提出書類作成サポートなど)をおこなっています。また、電話や来所での相続相談は無料で承っております。相続に関してお悩みの方はまずはお気軽にお電話ください。
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