土地の相続税評価額の計算方法や固定資産税評価額の調べ方を解説
2023.10.17 税金対策土地にかかる相続税を計算するためには、土地の相続税評価額を計算する必要があります。相続税評価額は実勢価格(時価)とは異なる価格です。
土地の評価額の計算を間違えて修正申告が必要になると余計な手間や時間がかかるので、相続税評価額は法定の計算方法に則って正しく計算することが大切です。
この記事では、2種類ある土地の相続税評価額の計算方法(路線価方式・倍率方式)の違いや計算で使う路線価・倍率・固定資産税評価額・土地面積の調べ方を紹介するので、土地を相続するときの参考にしてください。
目次
相続税の計算で使う「相続税評価額」とは?
相続税を計算するときには遺産の総額を計算する必要があり、個々の遺産の金額を計算して足し合わせる必要があります。相続税の計算で使う、個々の遺産の金額・評価額が「相続税評価額」です。
相続税評価額は、財産の性質等を考慮して財産の種類ごとに計算方法が決まっています。
財産の種類によっては、相続税評価額が実勢価格(時価)と同じになる場合もありますが、土地については、相続税評価額は実勢価格(時価)とは異なる金額です。土地の相続税を計算するためには、相続税評価額の計算方法を理解しておく必要があります。
土地の相続税評価額を計算する方法は2種類
土地の相続税評価額の計算方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2種類です。「路線価方式が適用される土地」と「倍率方式が適用される土地」では相続税評価額の計算方法が異なります。
路線価方式・倍率方式のどちらが適用されるのかは、以下の国税庁サイトで確認が可能です。調べたい地域の図を開くと、路線価方式の土地では路線価の記載があり、倍率方式の土地では倍率地域と記載されています。
国税庁:路線価図・評価倍率表
以下では、路線価方式・倍率方式それぞれの概要を解説します。
路線価方式
路線価方式とは、路線価が定められている土地で適用される計算方式です。路線価とは路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額のことで、国税庁サイトにて確認できます。路線価地域の土地では以下の式で相続税評価額を計算します。
- 路線価地域の土地の相続税評価額 = 路線価×面積×補正率
補正率とは、土地の形状に応じて補正が必要な場合に適用される、かけ合わせる割合のことで、奥行きのある土地や形が歪な土地などでは補正率が適用される場合があります。
倍率方式
倍率方式とは、路線価が定められていない土地で適用される計算方式です。倍率方式の土地では、以下の式で相続税評価額を計算します。
- 倍率方式の土地の相続税評価額 = 固定資産税評価額×倍率
路線価・倍率の調べ方
土地の相続税評価額を計算する場合、路線価地域では路線価を、倍率地域では倍率をそれぞれ調べる必要があります。
以下では路線価・倍率の調べ方を紹介するので、ご自身が相続する土地の路線価・倍率がいくらなのか、実際に調べて確認してみましょう。
路線価・倍率は国税庁サイトで検索できる
土地の相続税評価額を計算するときに使う路線価・倍率は、国税庁サイトで確認できます。以下のサイトの地図上で検索したい土地がある都道府県をクリックして、路線価図または評価倍率表を選択して該当する市区町村を選択すれば確認できます。
国税庁:路線価図・評価倍率表
路線価は千円単位で表示され、「240C」と書かれていれば路線価は1㎡(1坪ではありません)あたり24万円です。路線価の数字の右横に記載されたA~Eの記号は借地権割合を表し、土地を貸している場合や借りている場合には借地権割合を考慮して相続税を計算します。
路線価は毎年7月に公表される
路線価をもとに相続税評価額を計算する場合、その年に公表された路線価を使って計算します。路線価が公表されるのは毎年7月です。
7月よりも前、1月~6月に相続が起きた場合は、その時点では路線価が公表されていないので相続税評価額を計算することができません。
前年の路線価をもとに概算額を計算することはできますが、相続税評価額を正確に計算するためには、その年の7月に路線価が公表されるのを待つ必要があります。
固定資産税評価額の調べ方
倍率地域の土地では、相続税評価額を計算するときに固定資産税評価額を調べる必要があります。以下では固定資産税評価額の調べ方を紹介するので、ご自身が相続する土地の固定資産税評価額がいくらか、実際に調べてみましょう。
固定資産税評価額は固定資産評価証明書で確認できる
固定資産税評価額は固定資産評価証明書で確認でき、固定資産評価証明書は土地がある自治体の窓口で申請すれば取得できます。
固定資産評価証明書を取得できる人は、土地の所有者など一定の範囲内の人に限られますが、土地の相続人であれば固定資産評価証明書の取得が可能です。
取得の手続きでは本人確認書類等が必要になるので、手続き時の必要書類を自治体サイトなどで事前に確認してから窓口に行くと手続きをスムーズに進められます。
また、固定資産税評価額は不動産がある地域の役所に行って固定資産課税台帳を確認する方法でも確認でき、固定資産税の納税通知書・課税明細書でも確認できます。
固定資産税評価額は3年に1度見直しが行われる
固定資産税評価額は3年に1度見直しが行われ、見直しが行われる年の4月に公表されます。倍率地域にある土地の相続税評価額を計算する場合、計算で使う固定資産税評価額は相続が起きた日が属する年度の評価額です。
直近に見直しが行われたのは2021年であり、2021年~2023年の相続では基本的に同じ評価額が適用されます。
なお、土地の相続に伴って登記を行って登録免許税を計算・納付する場合は、登記をする年度の固定資産税評価額を使って税額を計算します。2023年7月に相続が起きて2024年3月に相続登記をするケースであれば、年は2023年と2024年で異なりますが、土地の相続税評価額の計算と登録免許税の計算で使う固定資産税評価額の年度は2023年度で一致します。
土地の面積の調べ方
測量図や固定資産評価証明書、登記簿に記載されている土地面積が異なる場合がありますが、相続税の計算では、測量図記載の面積を優先し、次いで固定資産評価証明書に記載された面積、登記簿に記載された面積を採用することが一般的です。
測量図とは、実際に土地を計測した結果が記載された図面で、面積や形状、境界などが記載されています。法務局に備え付けられている地積測量図は全国どこの法務局でも取得でき、法務局の窓口に直接行って取得する方法のほか、郵送やインターネットで取得することも可能です。
ただし測量図の中には作成された時代が古く、測量の精度があまり良くない場合があるので、相続税評価額等の計算において測量図記載の土地面積を用いることが適当ではないと考えられる場合は、固定資産評価証明書や登記簿に記載された面積を使う場合があります。
土地の相続において、いずれの土地面積を採用するかはケースによって異なり、どの面積を使うか判断するためには専門的な知識が必要です。
相続に慣れていない一般の方がご自身で判断するのは難しい場合が多いので、土地の相続のことは司法書士や税理士など専門家への相談をご検討ください。
【具体例】土地にかかる相続税額シミュレーション
相続税は、次の流れで計算します。
- 個々の遺産の金額を合計して遺産の総額を計算する
- 遺産の総額から基礎控除額を引いて課税遺産総額を計算する
- 課税遺産総額を各相続人が法定相続分に応じて相続したものと仮定して相続税の総額を求める
- 相続税の総額を各相続人の実際の遺産取得割合に応じて配分する
以下では、遺産に土地4,000万円と現預金2,000万円が含まれるケースについて、法定相続人である子ども2人(長男・長女)が相続すると相続税が一体いくらかかるのか、相続税額のシミュレーションを行います。
1.遺産の総額を計算する
ご家族が亡くなって相続が起きた場合、まずは相続財産調査を行って遺産にどのような財産が含まれるのかを確認して、個々の遺産の金額を合計して相続税の計算で使う遺産総額を求める必要があります。
この事例では、土地4,000万円と現預金2,000万円が遺産に含まれるので遺産の総額は以下のとおりです。
- 遺産の総額 =土地4,000万円 +現預金2,000万円 = 6,000万円
2.基礎控除額を引いて課税遺産総額を計算する
相続税の基礎控除額とは、遺産の総額がこの金額までであれば相続税がかからずに済む金額です。
基礎控除額は以下の式で計算することができ、法定相続人が多いほど基礎控除額は大きくなります。遺産の総額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。
- 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
この事例では、法定相続人は長男・長女の2人です。そのため相続税の基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2)と計算でき、遺産総額から基礎控除額を引くと課税遺産総額は以下のように計算できます。
- 課税遺産総額 = 遺産総額6,000万円 – 基礎控除額4,200万円 = 1,800万円
3.相続税の総額を計算する
相続税の計算では、課税遺産総額を法定相続分に従って各相続人が相続したものと仮定して相続税の総額を計算します。
法定相続分とは、各相続人がどれだけの割合の遺産を相続できるのか目安となる割合のことです。この事例のように、子ども2人が相続人のケースであれば法定相続分は子1人当たり2分の1で、以下のように計算できます。
- 長男の法定相続分 = 1,800万円 × 1/2 = 900万円
- 長女の法定相続分 = 1,800万円 × 1/2 = 900万円
続いて、法定相続分に税率をかけ合わせて相続税の総額を計算します。相続税の税率は法定相続分に応ずる取得金額によって変わり、この事例では10%です。
- 相続税の総額 = 900万円 × 10% + 900万円 × 10% =180万円
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
4.各相続人の相続税額を計算する
相続税の総額を計算したら、実際の遺産取得割合に応じて配分します。
仮にこの事例において長男が土地4,000万円を、長女が現預金2,000万円を相続したとすると、遺産の相続割合は長男:長女=2:1です。相続税の総額180万円を配分すると、長男・長女それぞれの相続税額は以下のように計算できます。
- 長男の相続税額 = 180万円 × 2/3 =120万円
- 長女の相続税額 = 180万円 × 1/3 =60万円
この場合、長女は現預金2,000万円を相続するので相続税の納税資金として使えますが、長男は土地を相続するのみで現預金を相続していないので、相続税の納税資金120万円は自分で用意する必要があります。
長男に預貯金があって納税資金を準備できる場合は問題ありませんが、逆に納税資金を準備できず困る可能性がある場合には、長男もある程度の現預金を相続して納税資金に充てられるようにするなど、何らかの対策の検討が必要です。
土地にかかる相続税を計算するときの注意点
土地にかかる相続税を計算するときには、注意すべき点がいくつかあります。以下では、主な注意点を紹介します。
相続税評価額は遺産分割協議で使う実勢価格(時価)とは異なる
土地の価格にはいくつかの種類があり、どの価格を使うかによって土地の評価額が変わります。
実勢価格(時価) | 市場で売買・取引されるときの価格 |
公示価格 | 国が調査して3月に公表する土地取引等の目安になる価格 |
路線価 | 国税庁が調査して7月に公表する相続税・贈与税の算定基準となる価格 |
固定資産税評価額 | 自治体が固定資産税の課税等のために調査・公表する価格 |
このうち遺産分割協議で使う土地の価格は、一般的に実勢価格(時価)です。
一方で、相続税の計算で土地の相続税評価額を求めるときには、路線価地域の土地であれば路線価を、倍率地域の土地であれば固定資産税評価額を使います。別の土地価格を使ってしまうと計算結果が変わってしまうので、それぞれの価格を混同しないように注意が必要です。
特例の適用を忘れると相続税が高くなる場合がある
土地の相続税の計算では、土地の形状・立地等に応じて相続税を減額できるさまざまな特例が用意されています。
たとえば居住用や事業用の土地を相続するとき、一定の要件を満たして小規模宅地等の特例を適用できると、相続税の計算において土地の価格を最大8割減額することが可能です。
また、周辺の土地に比べて著しく高低差がある土地や震動の甚だしい土地、騒音・日照阻害・臭気等の影響を受ける土地では、相続税を計算する際に土地の価格を10%減額できる場合があります。
相続税計算における特例適用の可否の判断をはじめとして、土地の相続では専門的な知識が必要になるので、専門家への相談を検討してみてください。
まとめ
土地にかかる相続税を計算するときには、相続税評価額を使って計算します。
土地の価格には実勢価格(時価)や公示価格などさまざまな種類があり、違う土地価格を使って計算すると結果が変わってしまうので、適切な価格を使って相続税評価額を計算するようにしてください。
土地の相続税評価額の計算方法には2種類あり、路線価が定められている地域の土地に適用されるのが路線価方式、路線価の定めがない地域の土地に適用されるのが倍率方式です。路線価や倍率は国税庁サイトで確認でき、固定資産税評価額は固定資産評価証明書等で確認できます。
路線価は相続が起きた年の路線価を使う必要があり、公表される時期は毎年7月です。倍率地域の土地で相続税評価額を計算するときには、相続が起きた年度の固定資産税評価額を使って計算します。
相続税の計算や相続登記など、土地の相続では専門的な知識が必要になります。将来の相続に備えた対策を検討する場合や相続が起きて手続きを行う場合は、専門家への相談を推奨します。
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