相続登記の期限はいつまで? 「3ヶ月以内」というのは間違い?
2024.02.20 相続登記(名義変更)不動産を相続する場合、名義を変更するためには相続登記をすることになります。そして、2024年4月1以降は法改正により相続登記が義務化され、期限までに登記をしないと罰則が科されるので注意が必要です。また、当事務所で相続登記についてご質問いただく際には、この期限について「3ヶ月以内」と誤解されている方もいらっしゃいます。
この記事では、相続登記の概要や相続登記の期限について正しく法改正の内容を理解できるように分かりやすく解説しております。税金や司法書士に払う報酬など費用も解説するので、相続登記が必要な方は参考にしてください。
目次
相続登記とは?
まず、相続登記の概要や法改正によって義務化された背景について説明します。
相続登記の概要
相続登記とは、ある人が亡くなった時点で所有していた不動産(土地・家・マンションなど)の名義をその相続人に変更する手続きのことです。必要書類を法務局に提出し、登録免許税という税金を支払うと登記できます。相続登記は、2024年3月末までの法律では義務ではないため、行わなかったことによるペナルティもありません。相続人が必要だと思ったタイミングで登記をすることになっていました。
しかし、相続登記をしないとその不動産は売却できません。例えば、相続財産の多くを不動産が占めており、相続税の支払いに充てられる現預金が少ない場合、不動産を売却しなくては税金の支払いに困るケースもあるでしょう。また、相続財産として一つの不動産しか残されていない場合、不動産を売却したお金を相続人で分配することもあります。このようなケースでは、相続人が相続登記をしてから第三者に売却する流れになるのです。このように必要に迫られたシチュエーションで、相続登記をする人が多いようです。
誰が相続登記をするか
相続登記をするのは、原則は不動産を相続する人です。
例えば、遺言書で不動産を相続する人が決まっている場合には、その相続人が登記をすることができます。遺言書が残されていない場合、遺産分割協議を行い、不動産を相続する人を決めてその人が相続登記を行うこともできますし、遺産分割協議をせずに法定相続分で共有という形での登記も可能です。
例えば、亡くなった人の配偶者と子供2人が法定相続人の場合、不動産の共有持分は配偶者が2分の1、子供達がそれぞれ4分の1ずつとなります。
2024年以降は相続登記が義務化
2024年3月末日までの法律では相続登記に期限はなく、手続きをするかしないかは相続人にゆだねられていました。しかし、法律が改正されて2024年4月1日から相続登記は義務化となりました。
義務化となった背景としては、今まで相続登記がされないケースが多く、日本中で所有者不明の不動産が増えてしまったことがあります。平成28年度の国土交通省の調査によると、全国で所有者が不明の土地は20%程度と推定されています。国としては、所有者不明の土地を有効活用したいという思いと、固定資産税をはじめとした税金の徴収を確実に行いたいという思いから、相続登記を義務化する流れになったのです。
参考:国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」
相続登記の期限はいつまで?
2024年4月1日に改正法が施行され、相続により不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記が必要になります。さらに、正当な理由なく期限に遅れるとペナルティの対象になり、最大10万円以下の過料が科されます。
ペナルティの対象にならずに済む「正当な理由」とは、「遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース」や「申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース」などが該当しますが、これらのケースは多いわけではありません。そのため、基本的には3年以内の相続登記が必須になると考えて良いでしょう。法改正前に相続した不動産も、未登記のままだとペナルティの対象になる点に注意してください。
今回の法改正では、「相続人申告登記」という制度も新設されます。
例えば、遺産分割協議が相続登記の期限である3年間で決着がつかない場合、相続人申告登記を行うことで相続登記までの猶予ができます。相続人申告登記をしておけば、遺産分割協議の決着がついてから3年以内に相続登記を行えば問題ありません。相続人申告登記は、相続人が他の相続人を代理して相続人一人で申請できます。
なお、改正法施行後の相続登記の期限について「相続開始後3ヶ月以内」と誤解されている方もいらっしゃいます。このような誤解が生じる理由としては、被相続人に借金が多かった場合などに利用される相続放棄の申述の期限が、通常は相続開始後3ヶ月以内(民法915条)であることと混同されやすいことによると思われます。前述の通り、相続登記の期限は「相続により不動産の取得を知った日から3年以内」というのが正解ですので勘違いしないよう注意が必要です。
なお、住所・氏名変更登記についても2026年4月末までに改正法が施行予定ですが、施行後は相続した人の住所や氏名に変更があった場合にも変更登記が必要となり、変更した日から2年以内に登記をしなくてはいけなくなります。正当な理由なく変更登記の申請を怠った場合、5万円以下の過料が科されることになります。
相続登記や住所・氏名変更登記の義務化についてさらに詳しく知りたい方は、【法務局の[相続登記の義務化]が分かる!2024年4月以降の罰則や対策をかんたん解説!】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参照下さい。
相続登記の流れ
相続登記は、戸籍謄本や住民票など必要書類を揃えた上で法務局に申請します。法務局への申請方法は、窓口申請・郵便申請・オンライン申請の3種類です。
法務局の窓口で申請
窓口で申請するメリットは、法務局の職員に相談しながら申請書などを作成できるので確実に手続きを進められる点です。しかし、法務局は平日しか営業していないので、働いている人は休みを取った上での手続きが必要になるでしょう。また、不足する書類があると何度も出直さなくてはいけないのもデメリットといえるでしょう。
郵送で申請
郵送で申請するメリットは、平日忙しい人も手軽に手続きができることです。しかし、申請書類などに誤りがあった場合、その場で手続きができないので手続きが完了するまでに時間がかかってしまうケースもあるでしょう。
オンラインで申請
オンラインで申請するメリットは、時間や場所に左右されずいつでも好きなときに申請できることです。しかし、オンライン申請も簡単ではありませんので、パソコンの操作が不慣れな場合、時間がかかりすぎてしまう可能性もあるでしょう。
オンライン申請について知りたい方は「相続登記はオンライン申請がおすすめ!手順・メリット・注意点を徹底解説!」で詳しくご説明していますのでご確認ください。
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相続登記で必要になる書類
相続登記で必要になる書類は、法定相続分によるのか、遺産分割協議によるのか、遺言書によるのかにより異なります。ご自身のケースでどのような書類が必要になるのか、揃える書類に期限はあるのか、確認して手続きをスムーズに進められるようにしておきましょう。
遺言に基づく相続登記の場合
被相続人が生前に遺言書を作っていて、不動産を相続する人が遺言で指定されている場合は、相続登記をするときに主に以下の書類が必要になります。
- 登記申請書
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の死亡時の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 不動産を相続する人の戸籍謄本
- 不動産を相続する人の住民票
- 遺言書
登記申請書の用紙は、法務局のサイトからダウンロードできます。
遺産分割協議に基づく相続登記の場合
遺産分割協議を行って誰が不動産を相続するか決めた場合は、相続登記をするときに主に以下の書類が必要になります。
- 登記申請書
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
- 不動産を相続する相続人の住民票
- 遺産分割協議書
遺産分割協議に基づく相続登記では、遺産分割協議書に押された実印が正しいものなのかどうかを証明するため印鑑証明書が必要になります。印鑑証明書は各相続人の現住所がある市区町村役場で取得可能です。実印の登録がない場合には実印登録が必要となります。
また、売買や贈与に伴う所有権移転登記では3ヵ月以内の印鑑証明書を用意する必要がありますが、相続登記では「取得後〇ヵ月以内」といった期限は特にありません。
法定相続分に基づく相続登記の場合
相続人がそれぞれの法定相続分に基づいて不動産を相続する場合は、相続登記をするときに主に以下の書類が必要になります。
- 登記申請書
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本、住民票
相続登記の必要書類についてさらに詳しく知りたい方は、【法務局の[相続登記の必要書類一覧]をかんたん】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参照下さい。
相続登記で必要になる費用
相続登記では、登録免許税・謄本取得など費用の実費がかかります。
登録免許税は、不動産の評価により価格が異なります。計算式は下記の通りです。
【固定資産税評価額×0.4%=登録免許税】
※固定資産評価額は1,000円未満切り捨て、登録免許税は100円未満切り捨て
税金では一般的に納付の期限が法律で定められていますが、登録免許税に関しては特に法定の期限はありません。しかし、相続登記をする際に納付しなければ、法務局に登記申請を却下されてしまいますので、相続登記をする際に納付することになります。
謄本取得などの費用は、相続人が多い場合や相続不動産が多い場合には、取り寄せる書類が多くなるので金額も増えます。
相続登記は自分で行うこともできますが、手続き内容が複雑なので司法書士などの専門家に任せる方も多いです。専門家に任せる場合は報酬も必要になります。しかし、費用がかかっても、スピーディーかつ正確な手続きを期待できるのは大きなメリットといえるでしょう。
多くの司法書士事務所では、相続登記を行う物件の数、相続人の数、戸籍謄本等の必要書類の収集や遺産分割協議書の作成業務によって報酬額が変わりますが、相続登記1件あたり7~15万円ほどが目安となります。
相続登記の費用についてさらに詳しく知りたい方は、【(相続登記の費用)自分でやると?司法書士に頼むと?費用を抑える方法は?現役司法書士がズバリ解説!】の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも是非ご参照下さい。
相続登記をしない場合のデメリット
2024年4月1日の相続登記義務化までは現在の法律が適用され、相続登記に期限がなく、手続きをせずに放置することも可能ですが、2024年4月1日以降は同日以前に発生した相続も含めて相続登記が義務化されます。当然ながら2024年4月1日の義務化直後は、法務局も司法書士事務所も混雑することが予想されます。その面でも、今のうちに相続登記を済ませておくのが得策といえます。
また、その他にも相続登記をしないとさまざまなデメリットが生じる可能性があります。
売却ができない
相続登記がされておらず、登記簿上の不動産の所有者が被相続人のままになっていると、その不動産が本当に相続人のものなのかどうか買い手には分かりません。
買い手としては、他の人のものかもしれない不動産を買うわけにはいかず、一般的に売買契約に応じてくれないので、相続した不動産を売却する場合は事前に相続登記を済ませておく必要があります。
抵当権の設定ができず担保にできない
金融機関からお金を借りる際、相続した不動産を担保にして抵当権を設定する場合、担保にする不動産が本当にその人の所有物なのか、登記簿上の所有者情報を金融機関が確認することになります。
相続登記がされておらず所有者が相続人になっていないと、金融機関はその不動産が本当にその人のものなのか確認できないので、抵当権の設定や融資には応じてくれません。そのため、金融機関からお金を借りる場合には、事前に相続登記を済ませておく必要があります。
権利関係が複雑になって相続手続きに時間がかかる
相続登記をしないまま次の相続が起きると、関係者の数が増えて権利関係が複雑になり、相続手続きに時間がかかったり手続きをすること自体が難しくなったりする場合があります。また、相続登記を放置している間に、相続人のうちの1人が認知症などになってしまうと、遺産分割協議ができなくなり相続が進まなくなる場合もあります。関係者の数が増えると遺産分割協議で合意を得ることが難しくなり、全員の戸籍謄本や住民票、印鑑証明書を揃えるだけで時間や費用がかかってしまいます。
当事務所にて相続登記のご依頼いただいた方の中でも、
「祖父名義の土地について、相続人が多すぎて把握できていない・・・」
「母親が認知症になってしまって、遺産分割協議ができない・・・」
などのご事情により相続登記が困難となってしまったり、相続登記をするのに膨大な費用がかかってしまったりというケースもありました
そのため、私ども司法書士の立場からすると、ありきたりな言葉かもしれませんが「相続登記は早めが吉」という大原則はどなたにでも当てはまると思います。いまだに相続した家・土地・マンションについて名義変更がお済でない方は、ぜひ司法書士の無料相談を利用されることをおすすめします。
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まとめ
相続登記は、2024年4月1日改正法の施行により義務化されました。相続登記をしないと、最大10万円以下の過料が課せられる可能性がありますので、注意が必要です。また、法改正前の相続についても相続登記が必要になります。相続登記をしていない不動産を保有している場合、早めに対応したほうが良いといえるでしょう。
戸籍謄本や住民票をはじめとした必要書類を役所に取りに行く時間がない方や、登記申請書の書き方や税金の計算方法が分からない方は、相続登記を司法書士に依頼することを検討してみてください。
司法書士法人みどり法務事務所では相続でお悩みの皆様に、安心でリーズナブルな相続を済ませて頂くために、定額の不動産の名義変更サービス「スマそう-相続登記-」をはじめとする遺産相続に関する各種サービス(ゆうちょ・みずほ・三井住友・三菱UFJ、りそななどの各金融機関の相続に伴う預貯金の解約払戻し、その他相続に関する裁判所提出書類作成サポートなど)を行っています。また、電話や来所での相続相談は無料で承っております。相続に関してお悩みの方はまずはお気軽にお電話ください。
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