土地活用をすれば相続で節税できるって本当?具体的な方法や注意点を紹介!
2022.01.20 税金対策目次
相続税はどうやって決まる?
初めに、相続税がどのように決まるかを説明します。
相続税のしくみ
相続税は、課税対象の相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合に発生する税金です。
基礎控除額は以下の式で求められます。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例として、相続人が配偶者と子供二人の場合は「3,000万円+(600万円×3)」となるので、基礎控除額は4,800万円となり、課税対象の相続財産がこの金額を超える場合に相続税が発生するということです。
相続税の計算方法
先ほどの例で、相続財産の価格が1億円で、配偶者が1/2、子供が1/4ずつ財産を相続したと仮定して相続税を計算してみましょう。
基礎控除額が4,800万円なので、
①課税価格を求める
1億円-4,800万円=5200万円(課税価格)
②課税価格を法定相続分で分ける
配偶者 1/2で2、600万円、子① 1/4で1,300万円、子②1/4で1,300万円
③相続税の税率を②の金額にかけてそれぞれの相続税を求める
課税価格が1000万円以上3000万円以下の場合の税率は15%で、控除額は50万なので
配偶者 340万円、子① 145万円、子②145万円
この下線の金額が最終的な相続税になります。
ただし、実際は「配偶者の税額軽減」や「小規模住宅の特例」などの軽減措置によって計算結果が変わってくる点には注意してください。
土地活用で相続税を節税できる理由
上記の通り、相続税が発生する場合は安くない金額が課税されますが、財産により土地を活用すれば相続税を節税できることがあります。
相続税の評価が低くなることが多いから
相続財産が不動産の場合、相続税の課税対象としての額は、実際の取引の価格である時価ではなく「評価額」で計算されます。
評価額は時価より低くなる傾向にあるため、5,000万円の現金と5,000万円の価値がある不動産では、後者の方が相続財産の額としては低くなり、相続税の計算の場面で有利になります。
そのため、多額の現金をそのまま残すよりかは、土地に建物を建てるなどして土地を活用した方が、相続税を下げられる可能性があります。
特例が適用されるから
宅地の評価額については「小規模住宅等の特例」という制度があり、これが適用されると土地の評価額が50%~80%減額されます。
小規模住宅等の特例が適用されるにはいくつかの条件がありますが、生前に、これに当てはまるように建物を建てておけば、相続税を大幅に抑えることが可能です。
相続税対策に向いている土地活用方法
相続税対策に向いている具体的な土地活用方法をご紹介します。
賃貸併用住宅
賃貸併用住宅は、同じ建物内に自宅部分と賃貸として他人に貸している部分が存在する建物です。賃貸併用住宅は条件を満たせば小規模住宅等の特例が適用され、また、賃貸として利用するため家賃収入が得られるのもメリットです。
土地を貸す
土地を他人に貸すことによりその土地の評価額を下げることが可能です。
貸した土地では、借地権割合の価格を控除した額が評価額になります。具体的には、5,000万円の土地で、貸地権割合が70%であれば3,500万円を控除した1,500万円が土地の評価額となります。
また、土地を貸すことで地代を得られ、土地上に建物があれば固定資産税が減額される点もメリットです。
アパート・マンション経営
土地にアパート・マンションを建てて経営すれば土地の評価額を下げられます。
不動産は時価ではなく評価額で相続税を計算するため、現金のままより相続税を抑えられ、アパート等を立てて他人に貸し出せば、前述の借地割合の適用により土地の評価額も下げることができます。
また、土地の相続人が相続税の申告期限までにアパート経営事業を受け継いでいれば、小規模住宅等の特例の適用を受けることもできます。
土地活用による相続税の節税効果はどのくらい?
前述の土地活用でどのような節税効果が出すか見ていきましょう。
賃貸併用住宅した場合
建物を貸し出せば、評価額から借地権割合の分が減額されます。
最終的な評価額は次の式で求められます。
建物の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
※建物の借家権割合は全国一律で30%
例として、時価5,000万円で評価額3,000万円の建物の7割部分を賃貸部分とした場合、
3000万×(1-0.3×0.7)=2,370万円 この金額が相続時の評価額となります。
土地を貸した場合
土地の場合も前述と同様な式で求められますが、土地の借地権割合は地域によって異なります。
例として、時価1億万円で評価額6,000万円の土地、借地権割合が60%とした場合、
6000万×(1-0.6)=2,400万円 この金額が相続時の評価額となります。
アパート・マンション経営した場合
前記の例の土地にアパートを建てた場合、賃貸割合を100%として計算すると
6000万×(1-0.3×0.6×100%)=4,920万円 この金額が相続時の評価額となります。
相続税対策に土地活用をおすすめしたい理由
相続税対策として土地活用が有効な理由を改めてご説明します。
建物評価額は現金より低く評価されるから
これまで解説してきた通り、相続時には、現金より不動産で保有しておいた方が評価額を落とすことができます。
相続税の建物の計算は固定資産税評価額で計算しますが、固定資産税評価額は材質や経過年数によっては購入金額の半分以下になることもあります。結果、財産を残す人が亡くなる前に現金から建物にしておいた方が、相続税の節税となります。
賃貸住宅であれば土地評価額も『貸家建付地』として安くなるから
アパートやマンションなどの賃貸住宅の場合、借家権割合の30%分、相続税評価額を減額できます。賃貸住宅とは、建物と土地が被相続人の所有で賃貸人が第三者の状態です。貸家建付地の評価方法は下記の通りです。
【自用地評価×{1-(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)}】
なお、賃貸割合は、実際に賃貸物件が埋まっている割合で、計算は貸している部屋数ではなく床面積で行います。
『小規模宅地等の特例』により土地評価額が減額されるから
不動産であれば小規模宅地等の特例も相続税対策として有効です。小規模宅地等の特例を利用すると、50%~最大で80%不動産評価を下げることができます。
現金の一部だけでも特例に当てはまるような建物に変えておけば、相続発生時に相続税の減額を期待できるでしょう。
借入金があると相続財産額を減らせるから
相続税計算では、債務がある場合は差し引かれます。そのため、土地活用をするために銀行などから融資を受ける場合、相続財産額から負債分を減らすことが可能です。
例えば、現金を2,000万円保有している人が相続税評価額5,000万円の物件を8,000万円借りて建てるとします。
何もしなければプラス2,000万円だった課税対象額が、2,000万円+5,000万円-8,000万円=-1,000万円の課税対象額となるので、2,000万円-(-1,000万円)=3,000万円分の相続税対策効果が得られます。
相続税対策で土地活用をするときの注意点
土地活用は相続税対策として有効ですが、注意点について説明します。
相続人間で土地活用についてしっかりと話し合いをしておく
生前に、相続人とのなる人との間で土地活用をすることにについて話し合いましょう。
不動産は相続税対策に有効ですが可分性に乏しいため、相続財産が不動産のみで相続人が多いと遺産分割時に揉めてしまう恐れがあります。
そのため、相続税を減らす以外にも、相続人にどのように財産を残すかも重要となります。
節税だけではなく納税資金の確保も考える
相続税対策により相続人の負担を減らすことは重要ですが、その前提としてちゃんと納税ができるかが重要です。
資産全てを相続税対策に活用するのではなく、相続税の納税のための現金資産などは確保しておきましょう。
二次相続も考えておく
親の一方が亡くなる一次相続では、配偶者控除などの軽減措置があるため、配偶者が遺産の多くを相続することが多く、遺産分割で揉めることは少ないです。
しかし、兄弟間だけで相続する二次相続では、一次相続と異なり特例がありません。また、各兄弟の親族からの口出しにより遺産分割協議時に揉めることもあります。
そのため、相続税の対策は二次相続を見越しておきましょう。
節税対策には定期的な見直しが必要
アパート経営などにより相続税対策は有効ですが、時間がたつと建物の価値が下がり、賃料収入により資産が増えるため、時間がたつと節税効果は薄れていきます。 数年に一度は対策の見直しが必要となります。
収益が必ずシミュレーション通りになるわけではない
土地活用のためにマンションを建てると、数億円の出費となります。
事前の計画では十分なプラスでも、空室ができて埋まらなければ利益がマイナスになってしまうこともあります。
収益計画は必ずシミュレーション通りになるわけではないことを、あらかじめ理解しておく必要があります。
相続税対策の土地活用でトラブルにならないためにできること
最後に、相続税対策のための土地活用でトラブルにならないための注意点を説明します。
円満相続に重点を置く
相続税対策により相続人の負担を減らすのは重要ですが、一番は相続財産を残す人が亡くなった後も家族が円満でいることです。相続税の節税にばかり目がいき、相続人に負担となる相続財産の残し方は良くありません。
管理が必要な不動産の相続は、相続人にとって負担になります。また、価値が高い不動産を特定の相続人に相続すれば、ほかの相続人に不平等感が生まれます。
相続人にとって負担・不平等にならないように考えて相続財産を残しましょう。
現金財産も残してもらう
相続税は、不動産しか相続財産がなくても基礎控除額を超えれば発生します。
そのため、相続財産が不動産だけだと、相続人は自己資金から相続税を捻出しなくてはいけません。結果、相続財産を相続したのにも関わらず、資金繰り苦しくなってしまうことがあります。
相続人に負担を課さないよう、相続財産を残す人は、不動産だけではなく納税資金も相続できるように準備しておくと親切です。
遺言書を残してもらう
土地活用をする場合、誰にその不動産を託すかなど、相続をする人が決めておいたほうが遺産分割時の親族間の争いを防ぐことができるでしょう。遺言書が残されている場合には、遺言書の内容に沿って相続方法が決まるため、生前に相続人になる人と話し合い、遺言書にその旨を残しておくとトラブルを避けられるでしょう。
遺言書が残されていないと、相続人同士で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するか決めます。管理が手間な不動産は、誰も引き継ぎたくないとなるケースもあるでしょう。さらに、土地活用する場合は相続後も誰かが経営することになりますので、生前の話し合いと遺言書は必須です。
なお、遺言書は民法で定められた形式を守らないと無効になってしまいます。作成に不安があるのであれば、司法書士や弁護士などの専門家に確認してもらうと良いでしょう。
まとめ
以上、相続税対策としての土地活用についてです。
土地活用は相続税の対策としては有効ですが、必ずしも計画通りにいくとは限りません。相続税の節約ばかりを重視して資産の多くを不動産にしてしまうと、逆に相続人へ負担を与えてしまうことになりかねません。
相続税の対策は、相続人と相談の上、財産を円満に相続できることを前提として可能な範囲で行いましょう。
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